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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ブラック・スネーク・モーン」

2007-12-15 06:57:29 | 映画の感想(は行)

 (原題:Black Snake Moan)扇情的なポスターから受ける“イヤラシ系の映画ではないか”という先入観は裏切られる。これは大きな心の傷を負ったどうしようもない連中の再生ドラマだ。

 舞台はアメリカの南部のどこか。カミさんに逃げられて世捨て人みたいな生活を送っている初老の黒人ブルースマンが、ある日道端に血だらけで倒れていた下着姿の若い女を拾う。彼女は幼い頃に受けた性的虐待がもとで、見境なく男を誘う“セックス中毒”に陥っている。敬虔なキリスト教徒でもある主人公は、彼女を鎖に繋いで“更生”させようという暴挙に出る。

 普通に考えれば、このオヤジは変態そのものだ。無理矢理“更生”させられる女も変態だし、さらには主人公の狙い通りに彼らを“更生”に持って行ってしまうストーリーそのものが変態だ。しかし、本作はその変態ぶりを突き詰めて感慨深い作品に仕上げているところが凄い。監督と脚本をつとめるクレイグ・ブリュワーは、この“信じれば救われる”という一種の狂信からまったくブレていない。そして主演のサミュエル・L・ジャクソンの、筋金入りのキ○ガイ演技。まさに観客の戸惑いをねじ伏せる馬鹿力を発揮している。“更生”とは名ばかりの、エクソシストを気取った悪魔祓いみたいな無茶苦茶ぶりは天晴れだ。

 しかし、紙一重のところでドラマがトンデモ路線に落ち込んでいかないのは、全編に流れるブルースのおかげである。冒頭とラストに伝説のブルース・マンの含蓄深いコメントがドキュメント・フィルムで挿入されるが、作者はキリスト教による救済と同じ程度に、音楽(ブルース)の力を信じ切っている。

 宗教臭い展開は苦手な受け手もこれなら納得で、L・ジャクソンも歌声を披露すると共に、ステージでの演奏シーンは素晴らしく盛り上がる。女を演じるクリスティーナ・リッチも圧倒的で、ほとんど裸同然の熱演ながら妙にカワイイところが実にソソる(ちゃんと歌うシーンもあるし ^^;)。女を置いて出征するボーイフレンドに扮するのがジャスティン・ティンバーレイクなのだが、彼はまったく歌わないのが笑ってしまった。

 予想通りの前向きなラストは爽やかな感動さえ味わえる。ミュージックが満載の“ちょっといい話”を観たい向きには絶好のシャシンだ。
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