デッドエンドの思い出

『デッドエンドの思い出』（よしもとばなな著）を読みました。
切ない５つの短編集。


秋フェチなわたしとしては、
表紙だけですでにこころは鷲掴み、です。
なんだか、胸がきゅんとします。





あとがきに、

読んでくださった皆様も
「なんでこんなつらいものを金を出してまで読んでいるのだ！」
と思ったかもしれないけれど、
この切なさは、きっとなにか必要なものなのだと、
私はなんとなく思っていますので、許してください。

と、よしもとさん自身が書いていらっしゃるように、
わたしもあまりの切なさに
電車の中から窓の外を眺めながらしばらくぼーっとしてしまいました。


わたしも、
この切なさは必要なものだとこころからそう思うな。


世の中の理不尽さや不条理さを感じながら、
それでも自分のなかで辻褄をあわせて
ひとは何とか生きていくんじゃないかしら。

でも、その中にもとってもしあわせな瞬間は必ずあって
その瞬間をたいせつにこころにしまって
辛いときはそっとその瞬間をとりだしてみては、
もうちょっと前に進んでみよう、がんばってみよう、
なんて思うでしょう？？？


わたしはいっぱいいっぱいいる「ひと」の中の一人だけど、
それでも一応毎日わたしなりに精一杯生きていて、
端から見たらほんとうにくだらないことで
一喜一憂したりしていて。
それは、きっと、みんな同じ。
これほど、愛しく切ないことがあるかしら？



よしもとさんは
「デッドエンドの思い出」がいちばん好きだそうだけど、
わたしは
「幽霊の家」が好きです。


岩倉くんとせっちゃんの関係がとてもいい。
できればわたしも、
あんなふうに、あんなひとと出会って、
あんなふうに想いあって、一緒にいたいと思う。

お互いの毎日に没頭しながらも、
夜にはえんえんとくだらないことを語り合って
歳をとっていきたいと思う。


せっちゃんが
「彼は私でつまらなくないんだろうか」と思って
岩倉くんにそう聞くと、
岩倉くんは
「全然退屈しない、ほっとするし、
　ますます好きな顔と体になってるし」と答えるの。

“一見単純な人生だけど、
　実は７つの海を冒険するのに匹敵する
　巨大な流れに属する何か”

同じことを繰り返しているだけの毎日に思えても、
それは必然的な運命に満ちた「巨大な流れ」なのでしょう。


穏やかに、あたたかく、
単調で、でも、しあわせな。
そんな毎日って、いいなぁ、と思います。