夕焼け空

今日はひさしぶりのいいお天気で、
帰りの電車の窓からは
半熟卵の黄身みたいな夕日が見えた。


夕焼け空を見ると、いつも。
ひどくこころが頼りなく、せつなく、なってしまう。


そして、その夕焼け空との距離に、
ただただ、驚く。


幼い頃、夕焼け空は、
お弁当の中の玉子焼くらい
「ありふれた」ものだったのに。

いま見る夕焼けは、
どこかよそよそしい。


小学生の頃、
わたしの家では夕方の５時までに家に帰る、
という決まり事があった。

だから、わたしは、
５時のチャイムが鳴る中を
いつもいつも全力疾走していた気がする。

そこかしこから、
お夕飯を準備する台所の音やあたたかい香りがしていて、
犬の散歩をしている人がいたり、
退屈そうに店番をしている時計屋さんがあったりして。

そんな、
やわらかく注ぐ今日最後のひかりのなかを、
わたしはいつも走っていた。

そして、
ドアを開けて、ただいま、というわたしの背中には、
いつもいつも、夕焼け空があった。


いまのわたしにとって、
夕焼け空の存在は、その頃に比べて絶対的に遠く感じる。


電車の中から見るか、
会社の窓から見るか。
いつもいつも、
夕焼け空はガラス越し。


わたしが、もっともっと年をとったら。
また、夕焼け空はわたしのそばに
そっと寄り添ってくれるのかも知れない。


梅雨が明けたら、
きっときれいな夕焼け空を電車から眺める
せつない毎日が続くんだろうな。



もうすぐ、夏です。