気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2012-02-27 20:10:36 | 朝日歌壇
一斉のメールにて知る春人事その瞬間に動く影あり
(町田市 冨山俊朗)

一人食う昼のおかずの鯖缶を猫と分かてば春はそこまで
(岡山市 佐藤茂広)

サイフォンの湯気の向こうのマスターのそのまた向こうのジェームス・ディーン
(大和郡山市 四方護)

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一首目。春の人事異動。わたしは大きな会社に勤めた経験がないが、人事異動で昇進したりしなかったり、心の中が波立つ様子は想像できる。動く影は、嫉妬心であったり、プライドであったり、失望だったりするのだろう。一斉にメール送信されるというのが現代的だ。
二首目。昼食にひとりで鯖缶というのはわびしいが、猫に分けてやっているうちに、「春はそこまで」(来ている)という結句が楽しい。いや、気の合わない人と仕方なく食事するよりは、猫と食べる方が気楽かもしれないな。
三首目。ジェームス・ディーンの固有名詞が効いている。視点が近くから奥に行くにつれて、時間もむかしへ戻っていくような感覚があり、懐かしさを呼ぶ。マスターは無口なのだろう、珈琲の味は絶品なのだろうと、想像してしまう。

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