気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2011-03-08 00:47:15 | 朝日歌壇
下腹部に宇宙を宿した十カ月今も不思議で時に手をやる
(神戸市 小島梢)

バンコクは33℃去りてなおたしかめて見る冷えた朝刊
(瀬戸市 花室美妃)

二つ折り携帯のごと一歳の子どもはしなやか前屈をする
(ひたちなか市 沢口なぎさ)

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一首目。赤ちゃんを宿していた時が過ぎ、産んでからの身体を思う歌は珍しいと思った。子供が生まれると、母も生まれる。どちらも慣れないので大変だ。産むこと、生きることの不思議を感じる。身体感覚を大事にして、親子とも健やかにすごされるよう祈る気持ちにさせられる。
二首目。バンコクに旅行されたのか、暮らしておられたのか、気温の高いところを去って、日本に帰ってきて、冷え冷えした季節で戸惑っておられるのだろう。一首目と似た喪失感や、すこし前に暮らしを懐かしむ感覚が表現されている。
三首目。幼いこどもの身体はやわらかく携帯電話を折るように腰で二つ折りになるのだ。しかし、大人になってからもやわらかい身体になることはできる。「今ここが伸びてる」と意識しながら、ゆっくり呼吸すると、本当に身体はやわらかくなっていく。中年と言われる齢になっても、やれば出来ることもある。
どの歌も、具体的な数字を入れたことで説得力が出た歌だと感じた。