気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-02-07 17:55:23 | 朝日歌壇
参道のけやき落葉を踏みゆくに桜木下は桜の落葉
(ひたちなか市 篠原克彦)

寒林にひとりフルート吹いてみる定年近き過去の少年
(島田市 小田部雄次)

岸近き真鴨の群れにパンをやる五歳は小(ち)さき鴨を選りつつ
(堺市 丸野幸子)

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一首目。けやきの木の下にはけやきの落葉、桜の木の下には桜の落葉。当たり前のことなのに、心を惹かれる歌になっている。気持ちが安らかになる。
二首目。下句にとても惹かれる。いくつになっても少年のこころはそのまま。少年のころにフルートを習っていたのなら、またやりなおせばいい。ある年齢以上になって読み返すと本にも違う感想が生まれるように、フルートの音色も深くなるだろう。
三首目。こういうことって「ある」と感じさせる。自分と似た立場の小さい鴨は、大きい鴨に餌を取られてしまうから、わざわざ小さい鴨にえさをやるやさしさ、労わる気持ち。五歳の具体が効いている。