気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人9月号 同人のうた その1

2010-09-04 00:04:02 | 短歌人同人のうた
招魂社とよべばしづかな暗がりが黄のやはらかな月揺り出だす
(渡英子)

こまごまと広げ商ふ土曜日びと木(こ)の暗(くれ)にして鎖きらめく
(酒井佑子)

早送りの動画のごとしおとなりの幼な子にけさ遇へば詰襟
(大橋弘志)

昼ながら人まばらなる丸善に湖底をめぐるごとき靴音
(木曽陽子)

雲切れてほっそりと来る月の光(かげ)吾に還らぬ幾人(たり)のひと
(野地千鶴)

自意識の滴るようなメッセージ消去。消去ののちの空白
(鶴田伊津)

外国にゆきし時おもひ出せぬ名 たとへば奥村晃作などは
(山寺修象)

いつこども止めたのだらう綾取りに紡ぎたるものつぎつぎ消して
(山下冨士穂)

休憩に入りしころより楷書から行書にかはる会話となりぬ
(杉山春代)

あぢさゐの花束ぎゆつと抱きしめて私はもう藍まみれなる
(藤本喜久恵)

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短歌人9月号同人1欄から。