気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2010-09-12 18:42:59 | 朝日歌壇
一二○円の入場券を買う発車するまでの時間を買う
(奈良市 杉田菜穂)

無風の夜眠れぬ子を抱きブランコへここだけに吹く風を求めて
(東京都 黒河内葉子)

百歳の不明者ありて今更に淡きこの世の遠花火みる
(八王子市 三沢愛子)

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一首目。「買う」で終わる事実を二つ素っ気なく並べた歌。句またがりあり、字足らずありで読みにくいが、なぜか魅力がある。下句は8+6=14音で、辻褄はあっている。この不安定さが恋の危うさを詠んでいると思うのは、作者に加担しすぎかもしれない。
二首目。今年は熱帯夜が多かった。その上、風がないと眠れない。ブランコは庭にあるのか、近くの公園にあるのかわからないが、そこまで行く気持ちもわかる。「ここだけに吹く風」というのが素敵だ。
三首目。百歳の不明者と遠花火の取りあわせが良いと思った。
夕べ、死に直面した母親が、家族に囲まれて最期の一日を過ごすというテレビドラマを見た。あれは「テレビドラマ」と思わないと、やってられない。いつどこで死ぬかわからないけれど、それは考えないことにしている。