気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-09-07 20:03:54 | 朝日歌壇
この夫を恨みて書きし遠き日を悔みつつ燃す日記幾冊
(長岡市 馬場カヨ)

古書店のワゴンセールに売れ残る「美しい国」「品格」の山
(千葉市 愛川弘文)

娘の書き取りに「正しい人」とあり娘は何度もそれを書き取る
(北見市 渥美浩二)

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一首目。作者には夫婦の関係がうまく行かなかった時期があって、そのことを日記に書くことで気を鎮めて来たのだろう。しかしいまはもう恨みも消えてしまい、日記に愚痴をこぼした日を悔んで、日記を燃やすという。「この夫」とあるところを見ると、夫はまだ生きているのだ。年を重ねれば、恨みは消えるのだろうか。その程度の恨みだったのか。歌としてはまとまっているが、なにか優等生的なものを感じた。「悔みつつ」に私はひっかかる。「思いつつ」くらいでぼかした方がいいのではないだろうか。
二首目。古書店のワゴンセールの品揃えを見ていると時代を反映していて面白い。
『美しい国へ』安倍晋三、『女性の品格』板東眞理子、『国家の品格』藤原正彦。どれもアマゾンユーズドで1円で売っている。送料は350円。本はナマモノだと痛感する。わたしも過去の題詠ブログで題材にしていた。
三首目。句割れ句跨りの歌だが、内容が面白い。しかし「娘の書き取り」というのは、妙な言葉だと思った。「書き取り」という行為が勉強のスタイルの一つとして定着しているからなのだが・・・。そんなことを言いだすと「携帯」もあれもこれも変。
読者に、その娘は「正しい人」なのかと思わせる面白さがある。
大口玲子の歌で「形容詞過去教へむとルーシーに「さびしかつた」と二度言はせたり」というのがあるが、これを思い出した。

なかなかの美男に御座す宰相が『美しい国へ』導くか否か
(近藤かすみ 題詠ブログ2006)

本日の返品作業しこしこと『美しい国へ』箱詰めにする
(近藤かすみ 題詠ブログ2007)