気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

耕心菴日乗  山崎圭雪 

2009-09-06 00:45:23 | つれづれ
またここに一盌の茶は点ちにけり一会の重みかみしめながら

炉の前に坐したるわれはわれでなくただ茶を点つる人にあらずや

客ぶりのよき人人に助けられ開炉の茶事を恙なく終ふ

横丁の隠居のごとき長閑なる時空をもつもいいではないか

甘露とはかくのごときぞ術後三日目、のみど潤す数滴の水

いまの世に廊下にぴたつと両手つき見舞ひをのぶる人のありたり

しつかりと一歩一歩を踏みしむる残生なりと海風にいふ

鮮やかな宗旦木槿は一日花 重き一日ぞ語りかけくる

ひとつふたつの仕事放りて時間(とき)をかけ丹波黒豆煮るはたのしき

(山崎圭雪 耕心菴日乗 ながらみ書房)

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短歌人の同人である山崎圭雪さんの第二歌集を読む。
山崎さんは、表千家茶道教授であり、いけばな「圭雪会」の主宰もされている。
茶人で歌人という人はめったにいないのではないだろうか。趣味程度の人なら多いかもしれないが、これだけまとまって、茶道に関する短歌を読んだ記憶がない。
途中、「腰部背柱管狭窄症」という病気になって、入院生活を体験されるが、無事回復、ほぼ元に生活に戻られたようだ。
お茶を通じて、日常の花や食べ物に一期一会のこころで接しておられるのがわかる。
すっきり読めて、わかりやすい歌が多い。私も学生のころ茶道研究部に所属していたので、当時のことがなつかしく思い出された。