気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-09-14 22:14:28 | 朝日歌壇
うずくまる野手をなだむる野手がいて勝者は既に整列を終う
(いわき市 鈴木一功)

どの坂も下れば海に行きあたる神戸の街と横浜の街
(奈良市 杉田菜穂)

隣人の訃報を家族と哀れめばせつなきまでに会話はずみぬ
(東京都 岩崎佑太)

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一首目。高校野球の試合後の様子だろう。勝者と敗者の明暗がはっきり分かれた瞬間を活写した歌だと思った。敗者の野手同士のいたわりも温かい。
ほかの歌を読んでいても、勝ち組という言葉を見かけた。私自身も含めて、なぜこんなに勝ち負けが気になってしまうのだろう。勝つともちろんすごく嬉しいが、次は負けるかもしれない。負けることがほとんどだと言って過言ではない。負けず嫌いの性格の私は、いつも負けたくなくて不安な気持ちでいる。高校野球のように、これでおしまいならば、区切りがつくのだが・・・。
二首目。横浜へは行ったことがないが、神戸はたしかに坂道の街。その坂は海に通じている。事実だけを述べた歌であるが、そこはかとない旅情を感じさせる歌で気分が良い。
三首目。家族というのは、余りに身近な存在なので、会話がはずむということはなかなかない。むしろお互いの感情がむき出しにならないように神経を使って、距離を置いた方がうまくいく。そこに隣人の訃報が聞こえると、ひさしぶりに会話がはずむ。「せつなきまでに」に実感がこもっている。
小池光の歌「猫にだともの言ひやすくこもごもに猫にもの言ふ家の者たち」を思い出した。