気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-08-19 00:25:41 | 朝日歌壇
やわらかき訛こぼるるふるさとの風に結び目ゆるびゆくなり
(福島市 美原凍子)

一天文単位の先の光浴び蝉もわたしも束の間を生く
(茨木市 瀬川幸子)

久々に父の形見の墨磨りて墨に残りし父の癖知る
(東京都 津久井英喜)

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一首目。美原凍子さんの住所が福島市になったことに驚いた。夕張市からどこへ行かれるのかと、陰ながら気になっていた。そうか、福島が故郷でそこへ帰られたのだと納得した。歌の気分は、啄木の「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」に近い感じだが、結び目ゆるび・・・で緊張が緩んだことを表現している。
二首目。天文単位という言葉をよく知らなかったが、調べてみると、1天文単位は太陽と地球との平均距離で、1億4960万キロメートルとある。こういうはっとするような言葉を初句にもってきて、蝉もわたしも・・と自分に引きつけて詠んでいるのがよいと思う。
三首目。亡くなられたお父さまを懐かしむ歌。墨というのは、磨る人のクセが残るものだと改めて思った。頭で考えたのじゃなく、きっと実際に体験して作られた歌だと思う。胸にじんと来る歌だ。