蔓草がはてなく繁る夏野ゆくひかりするりと蛇へ戻りぬ
コンビニの伊右衛門取ればその隙間するする次の伊右衛門が消す
太極拳しながら母は朝の空はみだすほどの〈ゆ〉の字書きたり
曇り日の複写機ひらき詰まりたる雲のひとひらつまみ出したり
椎の木の下へころがる椎の実よ転がることが木の実のしごと
丸めんとすれども伸びたがる餅の気もちなだむる母の手わが手
豆を煮る母が笑へば黒豆もわたしも笑ふ大歳の夜
天上の春の質量いかほどかひかり引つ張りひきがえる跳ぶ
「勝」の字の肩のあたりを揉みほぐし深呼吸などさせてやりたし
新品の縞柄のシャツ着るけふは尻尾しやきつと立てつつ歩く
(河合育子 春の質量 短歌研究社)
************************
コスモス、COCOONの会所属の河合育子の第一歌集。身近な素材で歌を作っていて読みやすい。一読意味がわかるが、もう一度読むと仕掛けに気づかされる。小島ゆかりの傍で学んできて、そのユーモアの精神が受け継がれている。音感がよく、音が音を引き連れてきたのがわかる。
コンビニの伊右衛門取ればその隙間するする次の伊右衛門が消す
太極拳しながら母は朝の空はみだすほどの〈ゆ〉の字書きたり
曇り日の複写機ひらき詰まりたる雲のひとひらつまみ出したり
椎の木の下へころがる椎の実よ転がることが木の実のしごと
丸めんとすれども伸びたがる餅の気もちなだむる母の手わが手
豆を煮る母が笑へば黒豆もわたしも笑ふ大歳の夜
天上の春の質量いかほどかひかり引つ張りひきがえる跳ぶ
「勝」の字の肩のあたりを揉みほぐし深呼吸などさせてやりたし
新品の縞柄のシャツ着るけふは尻尾しやきつと立てつつ歩く
(河合育子 春の質量 短歌研究社)
************************
コスモス、COCOONの会所属の河合育子の第一歌集。身近な素材で歌を作っていて読みやすい。一読意味がわかるが、もう一度読むと仕掛けに気づかされる。小島ゆかりの傍で学んできて、そのユーモアの精神が受け継がれている。音感がよく、音が音を引き連れてきたのがわかる。