先日の世界フライ級タイトルマッチ、既に大きく報道されているように坂田、内藤両チャンピオンが王座を防衛。特に今や大メジャーとなった内藤選手は、大善戦した清水選手に10R逆転のKO勝ちという派手な勝ち方でフライ級戦線の主役であることを強くアピールしました。
出場する4人全員が日本のボクサーという特殊なダブル世界戦だったが、両挑戦者の真摯な戦いぶりもあってボクシングらしい素晴しい興行であったと思う(試合後の変な出来事を除いては)。
意欲も満々、攻め手もありそうなのにズルズルと押し切られていった久高選手はさぞや歯がゆい気持ちであっただろうし、WBC世界戦特有の公開採点制により終盤までリードを知らされたうえで戦っていながら…あと僅かというところで勝利を失った清水選手の(ダウンを奪われダメージの残る身体で)リングをグローブで叩くほどに爆発するような悔しさはテレビの画面から飛び出すほどの勢いで伝わってきた。そして坂田選手の秘めておこうとしても溢れ出るような闘志。薄氷を踏むような勝利を遂げた内藤選手の喜びとも解放ともとれない咆哮。どれもボクシングの魅力が詰まっていたと思います。
でも…ねぇ。頼むよ。
内藤選手が10R開始早々に一気に仕掛けた後、右のフェイント気味のパンチからつなげた強烈な左フック。それまでの清水選手の研究や努力を一瞬にして霧散させるほどの一撃。直接ダウンを奪ったパンチではないけれど事実上この一発で勝敗は決しました。
驚きしかありません。ラウンド開始早々にいくつかフェイントを見せていたようでしたが、あの左フックの前の右は、いやそれにつなげる動きはどういう意図だったのでしょう??もちろん一瞬の事、本人だって解説し難いのかもしれませんが。。。スロー再生でみると問題の左フックが当たっ瞬間、ほとんどノールック(相手の方向を見ていない)に近いことがわかります。ならばその前の右は?いやそこにつなげる動きではどこに注意を向け、何処を誘っていたのか??
これらの点に関しては後から映像を見て気づいたことであるけれど、その時その瞬間に驚いたのは左フックを決めた時の内藤選手の体勢、というか足の位置だ。広がっていたよなぁ~と思う。決して流れの中から力のこもった一撃を放てるような体勢ではなかったように思う。え??と思ったものでした。どうしてあの流れからカウンターの左フック?しかも強~烈な。異常に強靭な足腰といえばそこまでなのだけれど…。悔しかったであろう清水選手もあとでVTRを観て「なんだよコレ~」と思ったのではないでしょうか?9Rまで積み重ねてきたポイント、これまでのボクサー生活での精進、などなどを撃ち抜いた無情の一撃でありました。驚異的で常識はずれ。軽量級のフライ級で、しかも変則変則と言われながらもKOを重ねてきた内藤選手の凄みが垣間見れた試合でした。
でも…左フックの前の右パンチの時の視線や(これは放送では見えなかった)。ラウンド開始時からロープ際にまで至るような、10Rの内藤選手のツメについてはもう少し(別の角度のカメラなども含めて)じっくり見せて欲しかった!開始から僅か57秒。丸々じ~っくりと検証、解説してくれてもいいのではないか?いや、内藤選手のボクサーとしての魅力を伝えようという気があるのならしっかりと視聴者に「左フック」について解説するべきではなかったのでしょうか??「内藤劇的な勝利です!」と連呼するだけなんて、これってスポーツ中継なのでしょうか?
わけのわからない「仕込み」に神経使うくらいなら。。。清水選手の何処に落とし穴があったか?などを解説し、ボクシングの繊細さを感じさせ、その深淵を視聴者に覗かせてくれよ~。
頼むよTBS!もうボクシングはいいよ~。
ボクシング中継でそんな専門的なこと無理だよ。という声も聞こえてきそうですが…考えてみて下さい。プロ野球中継では投手の配球の妙が当然のように語られますし、サッカー中継では「中盤が…」というような解説や、ゴールシーンに至るその2つ3つ前のプレーから、はたまたそのきっかけとなった相手のポジショニングから解説されています。
なのになぜだかボクシングのTBSでは倒したか倒されたか、当たったか当たらなかったか?を中心に据えたバラエティの趣き。ボクシングの魅力を伝えたり、ファンを増やそうという志は一切見受けられません。素晴しいボクシングだったのに残念でした。
…文句が多くて失礼しました。
でも内藤選手が勝ち残って、安堵と嬉しさでいっぱいです。
勝利の瞬間、画面の中で友人 I井さんが「なんだよおまえ~ハラハラさせんなよ!」「おどかすなよヤバかったなぁ~」というようななんともいえない笑顔で、大きな声を出しながら内藤選手の胸を押しているのが印象的でした。