南無煩悩大菩薩

今日是好日也

目的因

2020-04-22 | 古今北東西南の切抜
(gif/original unknown)

アリストテレスが論じた、物事の四つの原因(アリストテレスの4要因)を説明しましょう。それは、質量因、作用因、形相因、目的因の四つです。

家を建てることを例にすると、質量因とは、素材・材料ですので、木材、石材、鉄骨や釘などに相当します。作用因とは、事象を生起するための操作、力であり、家の場合、大工さん、様々な工作機械の操作に相当します。形相因は設計図に相当します。目的因は、家の場合、誰々さんが住むため、という建築目的に相当します。家の存在理由を問われるなら、目的因は、人が住むためと想定可能でしょう。

しかし例えば、熱帯低気圧の存在理由、カブトムシの存在理由、わたしの存在理由、と言われるとき、目的因とは何なのでしょうか。質量因、作用因、形相因については指定できます。熱帯低気圧の質量因は、それを発生させる局所的な気圧配置であり、形相因は流体力学、作用因は、結果的に熱帯低気圧をもたらすまでの、エネルギー供給などとなるでしょう。カブトムシもわたしも、同様に、質量因、作用因、形相因はなんとかなります。

目的因はどうでしょう。熱帯低気圧やカブトムシ、わたし自身は、なんらかの存在理由があって存在しているとは思えません。それらの存在を手っ取り早く納得させるような理由はみつからない。それらは、それ自体として存在するという事実だけでしか、その存在を根拠づけられない。むしろ、「存在それ自体」こそが、目的因だと思われるのです。

-郡司ペギオ幸夫「天然知能」

翻って、新型でも旧型でも今はやりのウィルスについてはどうでしょう。

質量因は一万分の一ミリくらいで細菌と比べ生物と呼べるかどうかもまだよくわからない。作用因は何らかの都合で宿主を必要として活動し共生を目指しながら、形相因はある種のたんぱく質に覆われているRNAと呼ばれるもので・・・、なるほど、質量因、作用因、形相因はなんとかなりそうです。目的因はどうでしょう。

熱帯低気圧やカブトムシ、わたし自身とおなじように、なんらかの存在理由があって存在しているとウィルス氏自身も知る由なきに違いありません。

目的は「存在それ自体」、というところに妙にひかれている今日この頃です。

ART OF NOISE: MOMENTS IN LOVE (THE ORIGINAL)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 創発的特性 | トップ | 妄念掃えば屈託なし »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

古今北東西南の切抜」カテゴリの最新記事