南無煩悩大菩薩

今日是好日也

磁極の動きが速過ぎる!

2019-04-03 | 古今北東西南の切抜
(picture/source)

北磁極の異例の動きにより、世界のナビゲーションシステムの基礎になっている世界磁気モデルが予定を前倒しして更新された。

北極地方で奇妙なことが起きている。カナダにあった北磁極がシベリアに向かって移動しているのだ。北磁極を動かしているのは、地球の中心部で流動している液体の鉄だ。現在、北磁極の移動スピードは非常に速くなっていて、地磁気の専門家たちは異例の対応を迫られることになった。

2019年1月15日、研究者たちは世界磁気モデル(World Magnetic Model;WMM)の更新を行うことを決定し、2月4日には更新版が公開された。地磁気の分布を示すWMMは、海上での船舶の舵取りからスマートフォンのGoogleマップまで、現代のあらゆるナビゲーションシステムの基礎になっている。

WMMは5年ごとに更新されており、WMM2015モデルは2015年初頭から2020年末まで使用される予定だったが、地磁気の変化が速過ぎたため、モデルを修正せざるを得なくなってしまった。コロラド大学ボールダー校(米国)と米国海洋大気庁(NOAA)米国環境情報センター(NCEI)に所属する地磁気の専門家Arnaud Chulliatは、「誤差はどんどん大きくなっています」と言う。

問題は、北磁極の移動と、地球の中心部で起きている他の変化の両方にある。地磁気の大部分は地球のコアで液体鉄が流動することによって生じていて、時間とともにこの流れが変化することで地磁気の変化が起きている。例えば2016年には、南米北部と太平洋東部の地下の深い所で、磁場の一部の変化が一時的に大きく加速している。こうした変化は、欧州宇宙機関(ESA)の地磁気観測衛星SWARMなどが追跡している。

WMM2015モデルは、2018年初頭の時点で早くも問題を生じていた。このモデルが地磁気の変化をどの程度よく捉えているかを毎年確認していたNOAAと英国地質調査所エディンバラ支所の研究者たちは、ナビゲーションの誤差の許容限度を超えそうなほど不正確になっていることに気が付いた。

さまよう北磁極

「測定結果から、私たちが興味深い状況に置かれていることが分かりました」とChulliatは言う。「いったい何が起きているのでしょう?」。

2018年12月に米国ワシントンD.C.で開催された米国地球物理学連合(AGU)の秋季大会で、彼はこう問い掛け、答えは2つあると報告した。

1つは、2016年に南米の地下で地磁気パルスが発生したタイミングが最悪だったことだ。おかげで、2015年に世界磁気モデルを更新した直後に地磁気が大きく変化するという想定外の事態になってしまった。

もう1つは、北磁極の動きが問題をさらに複雑にしていたことだ。北磁極は予想のつかないさまよい方をしていて、1831年にJames Clark Rossがカナダ北極圏で最初に北磁極を測定して以来、探検家や科学者を魅了してきた。

北磁極の動きは1990年代中頃に加速し、それまで1年に15km程度だったのが1年に55km前後になった。2001年には北磁極は北極海に入り、2007年にはChulliatらのチームが海氷の上に航空機を着陸させて北磁極の位置を特定している。

2018年には、北磁極は国際日付変更線をまたいで東半球に入り、現在は真っすぐシベリアに向かって移動している(『北磁極の移動』参照)。地磁気の幾何学的性質上、WMMの誤差は北極のように磁場が急激に変化する場所で大きくなる。「北磁極の移動速度が高速であるため、北極圏で大きな誤差が生じています」とChulliatは言う。


北磁極の移動
北磁極はカナダを出てシベリアに向かっていて、最近、国際日付変更線を横切った。科学者たちは、北磁極の動きの速さと地磁気のその他の変化を受け、ナビゲーションの基礎となる世界磁気モデルの修正を余儀なくされた。



WMM2015モデルを修正するため、研究チームは2016年の地磁気パルスを含めた過去3年間のデータを取り込んだ。修正版モデルWMM2015v2は、次回2020年の定期更新まで問題なく使えるはずだとChulliatは言う。

コアの問題

科学者たちは、地磁気がこれほど劇的に変化する理由の解明にも取り組んでいる。2016年に発生した地磁気パルスのような事象の起源をたどると、コアの深部から生じる「磁気流体波」に行き着く可能性がある(J. Aubert Geophys. J. Int. 214, 531–547; 2018)。また、北磁極の速い動きは、カナダの地下にある液体鉄の高速の噴流と関連があるのかもしれない(P. W. Livermore et al. Nature Geosci. 10, 62–68; 2017)。

リーズ大学(英国)の地磁気の専門家Phil Livermoreは、AGUの会合で、この噴流がカナダの地下の地磁気を乱し、弱めているようだと述べた。つまりカナダの地磁気はシベリアとの覇権争いに負けつつあるということだ。

「北磁極の位置は、地磁気の2つの大きな区画によって決まってくるようです。1つの区画はカナダの地下にあり、もう1つの区画はシベリアの地下にあります」とLivermoreは言う。「シベリアの区画が競争に勝っているのです」。

世界の地磁気の専門家にとって、今後しばらくは忙しい状況が続きそうだ。

(切抜/磁極の動きが速過ぎる!)

この頃、どうもまっすぐ家に帰りつかれへんおもうたら、そんなことになってたんや。
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