愛知学院大学青木ゼミのブログ

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リクルートスーツ

2016年04月25日 | Weblog
 「暑いなか、なぜ黒いスーツを着なきゃいけないんでしょうか」。就活生のTくんがぼやいてきた。6月から社会人は「クールビズ」となり、上着を着ない人の方が主流になっている。それなのに、就活生は黒い上着を着て電車に乗り、外を歩いている。暑そうで気の毒で仕方がない。就活がうまくいってなかったら、暑さによる肉体疲労が追い打ちをかけてくるだろう。「クールビズで行っていいですよ」と助言するが、どうもその勇気はないようだ。
 そもそも、なぜ全員が黒いスーツなのか? 「就活七不思議」の一つと言ってもいいくらいの謎だ。紺色でもグレーでも、ビジネスシーンに合うものならいいと思うが。以前は違った。私がキャリアコンサルタントとして学生の就活指導を始めた1994年。当時の写真を見ると、男子は紺かグレー、女子は加えてベージュや茶系もいた。女子はブラウスのスタイルも様々で、大きなボウタイやリボン、バブルの名残のようなスカーフを結ぶのがはやったこともあったと思い出す。それが2000年あたりには黒が主流になり、05年にはほとんどが黒。
 黒一辺倒になった理由は何なのだろう。会社側の指定なのか、売り手のスーツ業界の仕組んだものか、はたまた学生の自主規制か。会社側の指定ではないはずだ。むしろ人事担当者からは「なぜみんな黒なのか、と疑問に思っている」とよく聞く。売り手側のスーツ業界の仕掛けとも思えない。色や柄のバラエティーがあった方が消費者の購買意欲がわき、2着目の需要も見込めてメリットは大きいはずだから。
 結局、黒を選択してきたのは、学生側の理由だと思わざるを得ない。空気を読むことにたけた今どきの学生たち。「人と違うと落ち着かない」「悪目立ちしたくない」と無難な黒一辺倒に落ち着いたという考察が妥当か。
 長引いた不況の影響もあるだろう。就活スーツはいわば制服。1着で済めば金銭的に助かるし、服装を悩まずに面接に臨めて合理的だ。不況下の学生の防衛策ともとれる。そろそろ「カラス軍団」をやめて、服装でも個性を出せるようになるといい。

上田晶美「スーツは黒でなきゃだめ? 『カラス軍団』企業も疑問」日本経済新聞2015/6/29夕刊

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キャリアコンサルタントの上田さんによる記事の通り,学生のリクルートスーツは,男女とも全員黒。私の周りで黒以外を見かけることはありません。変とかしか言いようがありません。リクルートスタイルどころか,入学式を観察していると,新入生のスーツも黒だらけです。4年次にリクルートスーツとして活用すべく,入学前に黒スーツを買ったのでしょうか。

スーツをよく着る立場からすると,黒スーツは意外にネクタイやシャツを合わせるのが難しいのです。紺やグレーの方がネクタイやシャツを合わせ易く,おしゃれな装いも作り易い。したがって,職場で黒のスーツ(特に無地)を着ている社会人はほとんどいません。記事にもある通り,採用側が自分たちがほとんど着ない黒スーツを学生に強要することはないでしょう。にもかかわらず,なぜ学生はリクルートスタイルとして黒スーツを選ぶのか?マーケティング研究の一環である消費文化研究として,この問題を扱うと良いのではないかと常々思っています。卒論のテーマを見つけ出すことができないゼミ生に,この黒スーツ問題を探究してもらおうと考えています。

 4月中既に最高気温が25度近くになっています。5月以降就職活動は佳境を迎えますが,気温も上昇します。暑い中スーツ姿は健康を害することがあります。企業が就活中スーツを着てこなくても良いと指示したならば,学生は素直にそれにしたがっていいと思います。ただし,そうすると,服装で頭を悩ますことになるかもしれません。かつて,「スーツを着てくるなと企業から指示されたのですが,どんな格好をすればいいのでしょうか」とある学生から質問されました。常識的に清潔な格好すれば問題ないとその学生にアドバイスすると,「常識的?清潔?よく分かりません。具体的に服装を教えてください」と反論されました。黒スーツはそういう悩みからの逃走なのでしょうか。

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