愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

ありきたりのテーマはだめなのか?

2015年06月05日 | 名古屋マーケティング・インカレ
先日,名古屋マーケティング・インカレのエントリーシート提出日を迎えました。現在,全参加学生と教員間で全てのシートを閲覧できるようになっています。

そのなかで,個人的に注目したものがあります。愛知大学の学生チームによる「なぜ総合スーパーの衣料品は弱いのか」というテーマのシートです。大半の学生チームは自分の生活体験上の興味からテーマを見つけようとするか,外部から依頼された「実践的」テーマに乗っかります。しかし,このテーマはどうもそうではなさそうです。

今どきの学生は総合スーパーで衣料品を買う機会は少ないでしょう。そこを利用したことがあったとしても目立つ存在ではありません。したがって,学生がそれに注目することはあまりないだろうと思います。また,総合スーパーの経営問題は,日経ビジネスのような専門雑誌の記事,学術論文等で散々取り上げられてきていますが,もはや花形の小売業態とは言えないので,未来に目を向ける若者がそれを掘り下げようとは思わないでしょう。以上は私の勝手な推察ですが。ともかく,学生が総合スーパーを取り上げたこと自体に注目しました。

さらに,学生がある意味ありきたりといってよいテーマに切り込もうとしていることにも感心しました。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのかという疑問に対しては,何度もメディアで取り上げられ,すでにジャーナリスト,コンサルタント,学者が答えを出しています。その概略はつぎのような内容です。つまり,何でも扱う総合スーパーに対して,特定カテゴリーに絞り込んで競争力をつけたカテゴリーキラーが,多くの商品分野において,総合スーパーの顧客を奪った。とくに,衣料品分野においてはSPAと呼ばれる専門店小売業者が,商品開発とコスト・コントロールに強みを発揮して,総合スーパーの衣料品分野から顧客を奪い,その分野を落ち込ませた。さらには,企業規模の大きくなった総合スーパー企業は柔軟性を欠き,顧客ニーズをつかみ損ねて,対抗措置をとることができなかった。

既に専門家が定まった答えを出しているように思える問題を,学生が検討する余地はないかもしれません。結局,専門家たちの書いたレポートや記事を読んで,その内容を整理して,作業は終わるかもしれません。しかし,本当にそうでしょうか。専門家たちの言説には,納得のいく根拠が示されているでしょうか。要因間の関係がきちんと提示されているでしょうか。疑ってみることはできるのではないでしょうか。そしてその疑いの果てに,専門家が示した答えとは違ったものを示すことができる可能性があります。あるいは,答えは同じでも,違った視点の説明を提案することができるかもしれません。もし,そのようなことができれば,十分オリジナリティーのある面白い研究発表になります。

一般的に,企業とコラボした新しい商品パッケージや,オタク市場に切り込むゆるキャラなど,学生は,実践的な戦略提案型の研究テーマを志向するか,自分たちに身近で奇抜な現象を取り上げることで,面白い研究発表が出来上がると考えているようです。そして,たいてい,学生のみずみずしい感性を活かして,学生をターゲットとする商品やプロモーションを提案するというのが結論です。メディアでは,優れた大学教育のトピックスとしてそのような活動がよく取り上げられているので,意義あるテーマのように思えます。しかし,これらはすでにあふれかえっていて,私の目からはもはやありきたりの研究発表に見えます。

むしろ,専門家が出した答えを疑って,それをひっくり返す発表をする方がよほど面白いと感じます。今や,学生がそのようなことをするのは,ありきたりではないと思います。なぜ総合スーパーの衣料品は不振なのか,専門家の気づかない,わくわくする答えを期待しています。同様のテーマの名城大学チームによる「立ち上がれGMS」にも期待しています。

うちのゼミでは,コストコはなぜ日本の消費者に受け入れられたのかというテーマを取り上げるチームがあります。これについても,専門家がそれなりに答えを出しています。しかし,本当それでいいのか疑って,自分たちなりの答えを出して,私や他の教員を面白がらせて欲しいと思っています。


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