愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

偉大な卒業生

2011年01月28日 | Weblog
それぞれの大学には目指す教育理念があり,それを受けて独特の校風を形成しています。そしてその校風は人材輩出に影響を与えています。各大学の学生は校風に影響を受けて育ち,その卒業生は多かれ少なかれ大学の校風を体現しているのです。そのため,○○大の出身者らしいと評される一部の卒業生が存在します。

一般によく話題になるのが,日本の私学の雄,早稲田大学と慶応大学でしょう。ビジネスの分野で,経営者に絞って,典型的に両大学らしい卒業生を取り上げてみると,まず慶応大学らしい卒業生といえば,財界の大物二世・三世です。大物二世・三世には,サントリーの佐治信忠さん,資生堂の福原義春さん,日清食品の安藤宏基など多数存在します。極めつけはトヨタ自動車社長の豊田章男さんです。伝説の豊田喜一郎の孫,豊田章一郎の長男で,母方の血筋は三井家につながります。慶応の付属高校から大学に入学。アメリカの大学院でMBAをとり,アメリカにおけるGMとの合弁事業の責任者として活躍。レーサーとしての経験を持ちながら,国内営業の最前線で陣頭指揮を執ったこともあります。経歴・毛並みの良さ,バランスのとれた活躍,スマートさはいかにも慶応の卒業生という印象です。世襲経営者というだけでなく,きちんと能力も備わったりーダーなのか,リコール問題後のトヨタの危機を乗り切っていると評価されています。

早稲田らしい卒業生といえば,ファーストリテイリング会長の柳井正さんです。山口の商店街で育ち,地方の高校を出て,大学に入学。卒業後,実家の紳士服店を継いで経営する中で,SPAと呼ばれるカジュアル衣料の新業態を創造し,実質的創業者としてユニクロを立ち上げました。野菜販売,スポーツ用品販売,事業買収などで失敗を重ねつつも,徹底的に企業成長を追い求め,世界企業への飛躍を画策。海外事業中心,英語社内公用語化などを宣言して世間をあっといわせました。柳井さんは今日本の経営者の中で最も注目を集め,最も尊敬を勝ち得ています。一見冷徹な発言,高いモチベーションによる猪突猛進ぶり,転んでもただでは起きないバイタリティー,これら一匹オオカミのような姿はいかにも早稲田の卒業生という印象です。

さて,愛知学院大学商学部の卒業生の中に,豊田さんや柳井さんに負けない偉大な経営者が存在することをうちの学生たちは知っているでしょうか。機械部品の商社ミスミを創業した田口弘さんこそが,その偉大な経営者です。日本における代表的な起業家の一人です。田口さんは,従来の営業マンが取引先に入り込んで部品を売り込む商社の営業スタイルを改め,マーケットアウトというコンセプトの下,取引先のニーズを聞き取って必要な部品を届けていく取引先の購買代理業という視点で,営業マンのいない通販型の商社を作り上げました。産業財に流通革命を起こしたと評されました。ミスミを東証一部上場企業に育て上げた後,地位に恋々とすることなく,外部から招いた人材に「自分よりもふさわしいからと」社長の座を譲り,世間をうならせました。今は,エムアウトという起業を専門とするユニークな会社を立ち上げ,絵画,宝飾品などのビジネスの革新に取り組んでいます。

10年ほど前,少人数セミナーで講演を行うために,田口さんが愛知学院大学を訪れたことがあります。私はそのセミナーに出席しました。かつてミスミの「産業財流通革命」は大きな話題を呼びました。私もそのビジネスモデルについて幾度となく耳にしていました。その総帥田口さんに間近で会うことができると知って,半ば強引にセミナーに割って入ったのでした。やり手の熱っぽい人物を想像していた私は田口さんが話し始めた時面くらいました。物腰の柔らかな紳士が笑顔で淡々と語り始めたからです。とても「革命」を起こした経営者には見えず,教師か宗教家のようでした。ただ,淡々と語られるマーケットアウトのコンセプトには説得力が備わっていたことを思い出します。

田口さんが愛知学院大学らしい卒業生なのかどうかは私は判断がつきません。ただ,愛知学院大学が育んだ人材であることは確かです。そして愛知学院大学卒業生を代表する人物の一人であることは間違いありません。うちの学部の学生には,是非偉大な先輩の足跡を知って欲しいと思います。自分でまずは田口さんのことを調べてください。もうすぐ卒業する4年生は職業生活上のモデルの一つとして捉えて欲しいと思います。学生たちには,雲の上の話であると聞き流さず,勉学や仕事に対するモチベーションを高めるきっかけにして欲しいのです。偉大な先輩から学ぶことはたくさんあるでしょう。
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