風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

クラウド・ウオッチャー/クラウド・コレクター

2007-08-18 23:59:58 | コラムなこむら返し
Cloud_817_4 17日付けで「8・15の積乱雲」について書いてから、空ばかり眺め暮らしている。正確には、空の雲を眺め暮らしているのである。少年時代にそうであったように、空の雲は彼方や、まだ行ったことのない異国やらの空想にボクを引きずり込んで、いつもボクは時間を忘れるのであった。
 そうしたら折も折り、本屋で面白そうな書物を見つけた。少し値段がはるので、購入せず図書館にリクエストしてから読むことになるだろうが、面白そうなところを立ち読みした。

 『クラウド・コレクター』(クラフト・エヴィング商会)という本の存在は知っている。しかし、それはたしかエッセイやオブジェの設定で書かれたファンタジー(存在しない国への旅行記)だったが、この日見つけた本は本格的な雲の研究書で、それに立ち読みした箇所だけでも読み物として充分楽しめる内容であることが分かった。これまで、雲の研究書というものは気象学の見地から書かれた本が多かったと思う。読み物としては、楽しめる内容のものはほとんどなかった。
 その意味でも、これは「雲好き」にはたまらない書物だと思う。雲に対する古今東西の知見が盛り込まれているようだ。
 ボクがたった今書いた「雲好き」(という言葉があるとして)のこと。毎日、空の雲ばかりを眺め暮らしている人のこと(ちょうど、今のボクだ)を、この書物では「クラウド・ウオッチャー」と呼んでいる。が、ボクは「クラウド・コレクター」の方がいい言葉(詩的で素敵だ)だと思うので、こちらを同じ意味で使わせてもらう。
 ボクが立ち読みした箇所は、言うまでもなく「積乱雲」をテーマとした第2章である。この真夏日の空を見上げては無意識のうちに探しているのが、積乱雲である。
 積乱雲は、発生するとチョモランマよりも高い1万8千メートルほどの高さになることもあり、その雲の内部のエネルギーはなんと広島型原爆の10倍ほどのエネルギーを秘めているのだそうだ。
 積乱雲はかみなり雲で、筆者はそれを「そそりたつ怒れる王」と呼び、その凶悪さは「雲のダース・ベーダー」だと言う。
 エピソードで取り上げられるのは、その積乱雲に飛行機ごと巻き込まれて積乱雲のただ中から、パラシュート脱出したある操縦士の手記だ。その手記は、まさしく宮崎アニメの隠れた傑作『天空の城ラピュタ』の中の、「竜の巣」の出現シーンを思い起こすようなものだ。というより、きっと「竜の巣」は「積乱雲」の設定で、たしかランキン中佐という名だったと思うこの中佐の手記が、この「竜の巣」の設定に反映しているのだろう(宮崎駿はよく知られているように「飛行機」マニアである。ランキン中佐の積乱雲を落下した得難い手記の存在は、当然知っていただろう)。

 クラウド・コレクター必読の書に思えるこの本の名前は、『「雲」の楽しみ方』という実に平凡な書名がついている。著者ギャヴィン・プレイター=ピニー。桃井緑美子訳。河出書房新社2,400円。

 (付記)しかし、メモを取りながら新刊書店で立ち読みするのも疲れますわ(笑)。