日本の教科書検定問題に端を発した中国の反日デモの高まりが気になる。この国の首相が、再々近隣諸国の抗議にもかかわらず堂々と靖国神社参拝をつみ重ねることへの怒りと、「新しい歴史教科書をつくる会」の編纂した教科書が、この5日教科書検定をパスしたと言う事実が、歴史認識を教科書でねじ曲げるのかと言う中国民衆の怒りに火をつけた。
検定を通過したと言う教科書の記述が、そのまま政府見解とは言えないにしても、政府(文部科学省)がその見解を容認したことは事実として認めなければならない。検定制度の善し悪しや、不備や、それがどれくらい政府見解でコントロールできるものなのか否なのかは、いまは置いておく事にしても、その教科書を使って子供達を教育してよいと政府=文部科学省が認めたという事は確かである。だから、今回、コリアや中国側に批判・怒りが吹き出したのは当然、検定制度=日本政府(文部科学省)の責任である。この事態が隣国を刺激する事は、当然のように予想できた。実際、中国側はこの教科書の存在と、日本での議論を知っており、ずっと注視してきたのだから……(韓国の場合、ストレートに「竹島の日」の制定に端を発したとは言え、「新しい歴史教科書」は「竹島は日本の領土」とむしろ記述をし直して、検定をパスしたという経緯がある)。
それに、このような動きが起ったのは今さらではなくもう10年ほど前から、日本の立場で教科書の、とりわけ歴史の記述を書こうという動きは始まっていた。言ってしまえば、歴史認識の「竹島問題」だったのだ。
この会への291名の賛同者の中には、阿川佐和子のように親娘で名をつらねているものから、石原慎太郎、佐々淳行、一時はTVへの露出度が多かった「わしズム」の漫画家小林よしのりから元防衛庁幹部までいるが、そのメンバーの顔ぶれをみているととても一市民団体とは申しかねる。ひとつの思想団体だし、示威団体ではないのかと言いたくなってくる。
この会は、これまでこのような暴動じみた抗議デモに屈するのは、主権侵害だし、内政干渉だと言い続けてきた。
実際、今回の外務省の対応もこの問題とは切り離した日本人の安全の確保などを、中国政府に要請するといったものになっている。
また、その批判の矢面は日本製品のボイコット、日本企業や店鋪への攻撃・投石のみにとどまらず、日本の国連安保理常任理事国入りへの反対として火を吹いている。しかし、これは単純に「反日」運動、民族愛国主義の運動と言っていいものなのか?
紛争のタネは明らかに日本側が播いたのである。ニュースの内容はよく読み解かねばならない。
さらに追い討ちをかけるかのように、東シナ海の資源開発の問題がおこっている。そして、こんなタイミングで、自民党の新憲法起草案などというものも発表される。自衛隊を自衛軍として保持し、天皇の元首化も並記するといった内容だ。
これは、中国も韓国の人々も怒っているだけでなく、この国の中で安穏としているボクたちに教えてくれているのではないだろうか?
「キミたちの国は、確実に第二次世界大戦の教訓から得たはずの平和憲法、戦争放棄の精神からかけはなれて、一歩一歩右傾化してきていることに自国民であるキミたちは気付かないのですか?」と。
実は、この教科書問題に限って言えば朝日新聞と、産経新聞がそれぞれの社説でやりあっている。一番こわいのは、この機に乗じて右派勢力がふたたび力を得る事だとボクは思う。この国の中でもちゃんと議論は戦わすべきだ。日本大使館が投石されたことよりも、この国のジャーナリズムの中での論争が、どのような結果をもたらすのかをボクは注視したい。新聞や公共性を持つと言うTVが民衆のオピニオンリーダーや良識を代表し、そしてジャーナリズムという機能をまだまだ果たしているものだと言うことであれば、そのことを見届けたい。
(「新しい歴史教科書をつくる会」の検定をパスした教科書というのは、扶桑社刊の『改訂版新しい歴史教科書』『新訂版新しい公民教科書』でともに中学校教科として編纂されたもののことです。)
(写真は中華人民共和国「愛国者同盟朋」HPより転載)
検定を通過したと言う教科書の記述が、そのまま政府見解とは言えないにしても、政府(文部科学省)がその見解を容認したことは事実として認めなければならない。検定制度の善し悪しや、不備や、それがどれくらい政府見解でコントロールできるものなのか否なのかは、いまは置いておく事にしても、その教科書を使って子供達を教育してよいと政府=文部科学省が認めたという事は確かである。だから、今回、コリアや中国側に批判・怒りが吹き出したのは当然、検定制度=日本政府(文部科学省)の責任である。この事態が隣国を刺激する事は、当然のように予想できた。実際、中国側はこの教科書の存在と、日本での議論を知っており、ずっと注視してきたのだから……(韓国の場合、ストレートに「竹島の日」の制定に端を発したとは言え、「新しい歴史教科書」は「竹島は日本の領土」とむしろ記述をし直して、検定をパスしたという経緯がある)。
それに、このような動きが起ったのは今さらではなくもう10年ほど前から、日本の立場で教科書の、とりわけ歴史の記述を書こうという動きは始まっていた。言ってしまえば、歴史認識の「竹島問題」だったのだ。
この会への291名の賛同者の中には、阿川佐和子のように親娘で名をつらねているものから、石原慎太郎、佐々淳行、一時はTVへの露出度が多かった「わしズム」の漫画家小林よしのりから元防衛庁幹部までいるが、そのメンバーの顔ぶれをみているととても一市民団体とは申しかねる。ひとつの思想団体だし、示威団体ではないのかと言いたくなってくる。
この会は、これまでこのような暴動じみた抗議デモに屈するのは、主権侵害だし、内政干渉だと言い続けてきた。
実際、今回の外務省の対応もこの問題とは切り離した日本人の安全の確保などを、中国政府に要請するといったものになっている。
また、その批判の矢面は日本製品のボイコット、日本企業や店鋪への攻撃・投石のみにとどまらず、日本の国連安保理常任理事国入りへの反対として火を吹いている。しかし、これは単純に「反日」運動、民族愛国主義の運動と言っていいものなのか?
紛争のタネは明らかに日本側が播いたのである。ニュースの内容はよく読み解かねばならない。
さらに追い討ちをかけるかのように、東シナ海の資源開発の問題がおこっている。そして、こんなタイミングで、自民党の新憲法起草案などというものも発表される。自衛隊を自衛軍として保持し、天皇の元首化も並記するといった内容だ。
これは、中国も韓国の人々も怒っているだけでなく、この国の中で安穏としているボクたちに教えてくれているのではないだろうか?
「キミたちの国は、確実に第二次世界大戦の教訓から得たはずの平和憲法、戦争放棄の精神からかけはなれて、一歩一歩右傾化してきていることに自国民であるキミたちは気付かないのですか?」と。
実は、この教科書問題に限って言えば朝日新聞と、産経新聞がそれぞれの社説でやりあっている。一番こわいのは、この機に乗じて右派勢力がふたたび力を得る事だとボクは思う。この国の中でもちゃんと議論は戦わすべきだ。日本大使館が投石されたことよりも、この国のジャーナリズムの中での論争が、どのような結果をもたらすのかをボクは注視したい。新聞や公共性を持つと言うTVが民衆のオピニオンリーダーや良識を代表し、そしてジャーナリズムという機能をまだまだ果たしているものだと言うことであれば、そのことを見届けたい。
(「新しい歴史教科書をつくる会」の検定をパスした教科書というのは、扶桑社刊の『改訂版新しい歴史教科書』『新訂版新しい公民教科書』でともに中学校教科として編纂されたもののことです。)
(写真は中華人民共和国「愛国者同盟朋」HPより転載)