風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

ベルイマン/アントニオーニ……二人の名監督の死(3)

2007-08-02 01:16:05 | コラムなこむら返し
Blowup アントニオーニ作品が、あなどれないのは『赤い砂漠』(1964)を経てスウィギング・ロンドン直前のイギリスを当時のロックを映画の中に取り入れ『欲望(Blowup)』(1966)などのファッション性でも見のがせないポップな感覚の映画をも撮ってしまうことにある。フィルムの中には地下のクラブで演奏するYARDBIRDSの姿がある。若き日のジミー・ページやジェフ・ベックが見れるのだ。最初、ボクはその映画をトニー・リチャードソンみたいだと思ってみていたようだが、道化の集団が現れ、球のないテニスなどをはじめるシーンでアントニオーニはやるなぁと感心していたのを覚えている。60年代必見のフィルムの1本である(『欲望』の音楽監督はハービー・ハンコックである!)。
 この映画では現在でも充分通用するスタイルのバネッサ・レッドグレープとともに、ジェーン・バーキンもその美しい姿態を見せてくれる。ボクは、あんまり好きすぎてDVDを買ってしまったほどである。

 さらに、アントニオーニは1970年には『砂丘』(Zabriskie point)というサイケデリックな映画作品もものしてしまう。この作品の音楽にPINKFLOYDを起用している。ピンクフロイドの音をバックに、超スローモーションで爆発シーンが撮られている。このシーンはおそらくキューブリックの『2001年宇宙の旅』の宇宙飛行士が時空を超えるシーンとならぶ60年代のアルタードステートな映像だったと言えるだろう。

 晩年、脳卒中に倒れ言語が不自由になったらしいが、寡作とはいえ2004年までメガホンを握っていた。最期の作品になったのは、他の監督とのオムニバス競演となった『愛の神、エロス(Eros)』(2004)だった。
 最後に明かしておくと、「愛の不在(不毛)」の美しきヒロイン女優モニカ・ヴィッティはアントニオーニ監督の公然たる愛人だった。愛は不在(不毛)どころか、成就していたのだ。

(画像は『欲望(Blowup)』(1966年)のDVDソフトのパッケージから)

(おわり)