![Monica_1 Monica_1](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/b7/73ebd8a4fe5b8ee075542d1eb983633e.jpg)
アントニオーニ監督は50年代なかばから1970年にかけてめざましい活躍をした。それも「現代の愛の不在」というどこかヌーベル・ロマンの実験的な物語手法を先取りしたかのようなテーマで美しい映像の、そしてどこか空虚な心象風景といった物語と風景をフィルムに定着した。
その人間存在の不安と、不在をテーマにした初期作品に欠かすことの出来ない女優が、モニカ・ヴィッティだった。
美しく整った顔だち、その唇は心持ち開き、美しく澄んだ瞳はどこを見ているのか分からないほどにオドオドとし、彼方のまるでこの世の風景とは思えない鋼の大地に突き刺さったかのような工場の光景を見つめている。あるいは、心象風景そのもののような寂しい海の光景、もしくは風塵が舞うだけの砂漠の光景。それは、おんな主人公の求めても得ることのかなわない「愛」の「不在」だ。
これは、実存主義をへて、カミュなどの思想の影響もあるのだろうが、60年代の思想的あるいは哲学的キーワードは「不条理」、「疎外」(不毛、不在)、「反抗」だったのではないだろうか。いまにして思えば、60年代のメインストームやアングラを問わず、これらのキーワードを念頭において読むと、かなりのものが読み解けるような気がする。
それに、当時は三人娘、御三家という歌謡曲エンターティメントからアートまで「三」でくくって提示するのが、いわばブームのようによく使われた。ベルイマンが「神の沈黙・三部作」なら、アントニオーニは「愛の不在・三部作」だ。
ミケランジェロ・アントニオーニの「愛の不在・三部作」とは『情事』(1960)、『夜』(1961)、『太陽はひとりぼっち』(1962)のことを言う。
アントニオーニはベルリン、ヴェネチア、カンヌの三大映画祭をも制するという偉業も達成している。それだけでも、アントニオーニ監督のかかげるテーマがいかに当時のアクチュアルなテーマだったかが分かると言うものである。
●1956年 『女ともだち』 ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞
●1960年 『情事』 カンヌ国際映画祭審査員賞
●1961年 『夜』 ベルリン国際映画祭金熊賞
●1964年 『赤い砂漠』 ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞
●1967年 『欲望』 カンヌ国際映画祭パルム・ドール
(画像はアントニオーニ監督の美しき「不在」のヒロイン、女優モニカ・ヴィッティ)