風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

『鏡は嘘をつかない』スラウェシの海に生きるバジャゥの少女の成長物語

2016-06-30 20:15:43 | シネマに溺れる
美しい原始の海、太古からの澄み切った青空!
30日、明日で終わってしまうインドネシア映画『鏡は嘘をつかない』(2011年)を、見てきた。これは、子供たちにも見せたい映画だと思った。海洋民バジャウの暮らしの様々が、子供たちにも憧れと愛しさを与えるだろうと思ったのだ。
監督はインドネシアの女性監督カミラ・アンディニ。女性的な視点が見られて、そこも注目だ。WWFインドネシアが制作協力という点もユニークである。
だがそれにしても、あのインドネシア(それも、スラウェシ島の「ワカトビ」)のどこか粘着的な潮騒の音がまさしくヤモリの鳴き声とともに映画の通奏低音になっている。
いうまでもなくインドネシアは、日本とともに地震国で、数年前には大きな地震に見舞われて大きな被害を出している。
映画の中でも、海の彼方の波が盛り上がる漁師に伝わる津波の伝説のようなものが語られ、そして映画が製作された2011年にはるか海の彼方の国(とは言え緯度はほぼ変わらない)日本の東北地方を襲った津波の報道が引用されている。
海は12歳の主人公パキスから、漁師である(ほぼそれ以外の生きる術はないのだが…)父を奪う。そして海の隠喩として使われる「鏡」は、母の中の海、そして少女自身の中の海を荒らし、鎮めて静かにワカトビの海として何事もなく鏡のように静まり返る!
『鏡は嘘をつかない』。この映画作品はインドネシア(とりわけスラウェシ島)が大好きなボクには忘れがたい一作になった。バグース!評価(★★★★)

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骨と皮/死の九相図——小町、皇女、オフィーリア

2016-06-06 12:36:57 | イベント告知/予告/INFO
インプロビゼーションの音楽と、二人のダンサーそしてホイト芸のパフォーマーに、デッドなポエトリーが絡む異様にアングラなひと夜を二部構成でお送りします。

『骨と皮/死の九相図——小町、皇女、オフィーリア』

(音方)浅原ガンジー(asなど)、室坂京子(Key),柳原たつお(B)
(ダンサー)遠藤栄江、田中奈美
(パフォーマンス)黒田オサム
(ポエット)フーゲツのJUN、平山昇
2016年6月25日(土)18:30 開場 19:00 スタート
(観覧料)1,500円+1ドリンク
(会場)新井薬師Special Colors

生前に後世にまで語り継がれるほど伝説的な美女だった小野小町にして、その「死」に際しても、肉体が朽ちて、鳥獣に食われ、腐敗して地上の芥となりおおせるまで「九つ」の段階があるのだ。
嵯峨天皇の妃だった檀林皇后も美女で知られたが、亡き皇女とならしめてもやはり「九相図」が描かれた。
それは、「地獄図」同様の絵解きされた仏の教えのエキスを伝えるものだったが、源信『往生要集』よりもさらに虚無をたたえたような絵図にとどめられ、山林に放置された中世までの葬制の潔さが、好ましい!
(ボク自身が「樹木葬」の実践者のためだけではないだろう。)
ガートで燻りながら焼かれるあの「死」の臭いを思い出しながら、言いたい。メメント・モリ!    (文責:JUN)

✻画像写真は今回のテーマにそったものとして、敬愛する日本画家である松井冬子さんの『浄相の持続』(2004年)をお借りしております。