今日もとびきりファンタスティックな京都のカフェを紹介しよう。それもとびきり異色と言うか、今この時でしか味わえないカフェであり、言い換えるとこれほど旬なカフェもないかもしれない!
そのカフェは百万遍の交差点に面した京大側にそびえ立っている!
東大路通りと今出川通りが交差するところ、そこが百万遍で、今出川通りを銀閣寺のほうに少し歩くと、そこに百万遍知恩院があり、その門のところに「百万遍念仏根本道場」と大書した石碑がたっている。京都は念仏講がいまも盛んな地域だが(民俗学的に守られていると言うより「子どものまつり」として生きている)、ここの地名「百万遍」は、この百万遍知恩院(浄土宗本山)に由来し、そして百万遍とは百万遍念仏をとなえると浄土に行けると言う信仰にもとづいているのだろう。
百万遍聞いても「百万遍」は好きな地名で、というのもこのあたりにはかっての思い出が詰め込まれているからなのだろう。食うものも食わずに徘徊した京都のみじめな思い出が……。
「しゃんくれーる」もこの近く荒神口にあったジャズ喫茶だ。『二十歳の原点』のエッちゃんこと高野悦子の著作を持ち込んで、ドルフィを聞いていた。何を求めてあんなに京都を徘徊し、歩き回っていたのか今となってはボク自身にも分からない。ただ、京都は当時(1960年代末)から現在にいたるまで、ファンタスティックな魅力をもった街だ。古都と言うだけでなく、ファム・ファタル(宿命のおんな)みたいにボクをとりこにしてしまう。
さて、その現在もっと旬だとおもわれるカフェは、一見するとなんだかなつかしいやぐらで組み立てられた占拠闘争の形態をとっている。ボクになんだか小三里塚、小蜘蛛の巣城を連想させたものだ。
そのカフェは、京大の北西門の拡大、改築にともなって百万遍交差点へ向けて絶好のタテ看の設置場所だった石垣をバリアフリーという名目で潰すことへの説明と反対ではじまったその名も「石垣カフェ」である。大学当局による石垣撤去その実、タテ看スペースにたいする弾圧に反対する学生有志は、当局の説明責任と話し合いを求めてこの石垣の上にヤグラを組み、3畳と2畳のスペースをカフェとして「カンパ制」(コーヒー50円 )で、オープンカフェの営業をこの2005年の1月からはじめた。
ただ、このオープンカフェは石垣の上にあるため、道からおおよそ5メートルの高さに簡易にしつらえたヤグラの上に置かれた炬燵でインスタントもどきのコーヒーがカンパで提供されると言うものである。ゆえに、カフェに行くには石垣にかけられた梯子を昇って行かないとならない。ただ、そのかわりロケーションは抜群で、百万遍の交差点そのものを借景とした贅沢な(?)オープンカフェではある。
大学当局との対話をもとめる学生たちは、当局のにべもない対応に業を煮やしたのか「いしがき寮」という分譲型(二畳ひと間10室。ひと部屋分譲価格2万円)の寮をつくるというあらたな作戦に出て状況は緊迫が高まっているようです(とはいえ、カフェはいたってのんびりと遊んでいました。まつりの期間テントサイトになったところです)。
この旬なオープンカフェを勇気をふるって体験してみることをおすすめします。ファンタスティックですよ!
住所:京都市左京区吉田本町百万遍南東角石垣上ル