マジョルカピンク

水曜どうでしょう。大泉洋。大谷翔平。大好き

北海タイムス物語

2017-12-26 17:00:10 | 
月並みだけど、人生に無駄なことってひとつもないなと思う。
学生の時部活は必須で、田舎の高校ゆえ部じたい数少なくて選びようがなく仕方なく1年の時は新聞局に入った。普段あまり活動しないのでつまらなくて結局2年からは演劇に変わったのだけど、この頃新聞の読み方、記事の作り方、取材の仕方や段組みなどをざっと学んだのを覚えている。そして今会社で本業務の傍ら広報で冊子を作る係をやらされ、この時の経験が役立っているのであります。不思議だなあ。

今年私が読んだ本の中で、一番面白かったのが増田俊也「北海タイムス物語」
札駅近くの紀伊国屋書店で平積みされているのを見かけ、北海タイムス…?と昭和生まれの道民には懐かしい新聞の名に興味を惹かれ、購入しました。
いやー大変面白かった。
ミステリーでもないのに先が気になって仕方ないという、稀有な小説。しかも今どき珍しい青春小説というジャンルでないですか、これは。昔はこういう小説よくあったのよなあ。高橋三千綱とか庄司薫とか。東京の大学出たての主人公の男子が弱小地方紙の「北海タイムス」に入社し、新人記者として奮闘する物語なのですが、この新聞社の先輩や同僚たちのキャラが濃くて非常にユニーク。エリートのプライドもズタズタにされ、安い給料でボロボロになって働き、記者としてのスキルを身に着け一人前になろうと頑張る姿は、最初ブラックだなあと苦笑していても段々勇気づけられ胸が熱くなり感動するというね。すっごく昭和(笑)このメチャクチャな新聞社。98年秋に廃刊になるまで札幌に実在していました。そして、どうやらこの青春感動ストーリーは誇張もあるでしょうが、作者の経験に基づいているようで驚きます。
時代はまさにバブル前夜。これから景気が上向いていきそうな時に、発行部数で大きく同業他社に水を空けられ、苦労しながらも頑張っていた会社が存在したんだなあ。全然知らんかった。考えてみれば、朝日、読売、毎日と全国紙が幅を利かせる中、北海道は何故か地方紙が充実していた。道民のスタンダードは北海道新聞だし、十勝管内に行けば十勝毎日新聞(かちまい)に取って代わる。
その他には苫小牧民報、釧路新聞、室蘭民報など各地にたくさん独自の新聞社が存在する。
北海道という僻地ならではの現象なのかな。時の政権とは距離を置き、どこか反体制的なイデオロギーを持ち、地元愛に溢れた身近なネタが好きという土地柄に根ざした独特の文化だと思う。テレビも田舎のわりに、HBC、STV、UHB、HTB、TVHとキー局系列の地方局が充実している。このうちSTVとHTBは売り上げも凄く、確か何年か前に見たときはテレビ局の売上ランキングでキー局の次ぐらいにランクインしていた。HTBは水曜どうでしょう特需もあったのでしょう。来年はホームの平岸を出て現在着々と大通に建設中の立派な社屋に引っ越す予定です。
私自身、昔からの習慣で新聞は道新、テレビはHTBかHBCって感じかな。この2社は自社制作の番組も多く地元のタレントを使っていたり地域密着が凄い。ファイターズの取材でHTBに勝る局はないですし。
話がズレましたが、日本は小さい国ですがこのようにみんなが全国紙を読むというより、それぞれの地域に根ざした新聞がシェアを占めるという構図でもいいと思うんですよね。特徴があって。結局北海タイムスは道新には力及ばず、後に廃刊の憂き目に遭うわけですが、それでもこの小説の中に出て来る記者たちの矜持には胸を打たれずにはいられない。企業小説としても読めるし、これから社会に出ていく若い人へお勧めの作品です。


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