目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

究極のサバイバル本『ぼくは原始人になった』

2017-08-11 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『ぼくは原始人になった』マット・グレアム/ジョシュ・ヤング 宇丹貴代実訳(河出書房新社)

いかにもといったいでたちで本の表紙を飾る写真は、この本の著者で主役マット・グレアム本人。演出ではなく、実際にこの格好で荒野や山の中を歩き、狩猟をする。本のタイトルどおり原始人の生活を厭わない。むしろそれを好んで実践しているのだ。アメリカでは、ディスカバリーチャンネルの「デュアル・サバイバル」に出演し、多くのファンがいるらしい。

どうしてこうなったのか、彼の半生を描いたのがこの本だ。そもそもマットには、そうなるだけの生まれ持った体力や、そして志向があった。最初は山登りから始まる。凍死してもおかしくない、あるいは熊に襲われても文句のいえないような無謀な登り方をする。やがて早く移動することに関心が移り、トレランを始める。驚くのは、パシフィック・クレスト・トレイル2,740Kmを58日間で踏破したことだ(1日平均45Km)。実際には、ゴール直前で引き返すという、彼らしい天邪鬼ぶりを発揮しているが。最高で1日100Kmのランが可能というから、その体力は常人の想像を超えている。

マットがこの快挙を回避したのには理由がある。ゴールしてしまえば、注目を浴びる。スポンサーがつき、お金が入ってくる。それはまさに彼の嫌う商業主義に堕することにつながる。お金はなくていいのだ。なるべくシンプルにものを減らして生きるのが彼のやり方、主義なのだ(とはいえ、本を出版したり、テレビに出ているのは主義に反するじゃないかと思うが)。

その後、グランド・ステアーケース=エスカランテ国定公園(ユタ州)にあるサバイバルスクールのインストラクターになることで、彼の生き方は、長くてまっすぐ延びている「原始人生活」のレールに乗ることになる。150Kmの道なき道を歩いて自宅へ帰る旅や、60日間のサバイバル生活は、読んでいてそら恐ろしいばかりだ。雪に降り込められて死の淵まで言った述懐も出てくる。

原始の人たちが使用していた狩猟具、アトラトルと投げ矢、狩猟用のブーメランの使い方の説明も出てきて、その徹底ぶりにはあっけにとられる。それだけのめりこむと、もう研究者以上の知識レベルだ。その狩猟具を実際に自分が使うためにつくり、まるでオリンピックに出るためのように練習もしている。道具をまるで自分の手や足の延長であるかのように使い込む。そうすると、ほんとうに獲物を食糧とすることが可能になるのだ。

とにかく、一つひとつのエピソードを読んでいくたびに、こんな人が実際にいるのかと驚きは増す。ただ非常に面白い本だけれども、原始人にはなりたくないなあ。

ぼくは原始人になった
クリエーター情報なし
河出書房新社

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