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山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

早稲田探検部だった2人が語るマイウエイ『地図のない場所で眠りたい』

2021-01-01 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『地図のない場所で眠りたい』高野秀行・角幡唯介(講談社文庫)

著者の2人は、早稲田大学探検部出身。船戸与一氏や西木正明氏などつわものたちが集ったことでも有名で、またマスコミ界に人材を輩出(?)もしている。そんな共通項である探検部ネタから対談は始まっていく。

そういえば、私は学生時代(80年代終わりころ)に大阪南港から鑑真号で上海に行ったことがあるが、上海で行動を共にした2人のうち一人が早稲田探検部といっていたっけ。お互い連絡先を交換して、日本に戻ってしばらくしてから彼の自宅に電話をしたところ、お父さんが電話口に出て、息子は海外に行ってますといわれたのを思い出した。この本のなかに出てくる高野さんの証言によれば、当時探検部のなかでチベットが人気だったから、そこへ行ったのかもしれない(余談でした)。

この本を手に取った最大の理由は、高野秀行さんは名前はよく聞くけれども、著書を読んだこともないし、なんの探検をしているのかまったく知らなかったことにある。もうひとつ理由があって、角幡さんとの対談だから、当然探検論はあるだろうし、私の知らない面白いエピソードがあるのではないかと踏んだからだ。

期待どおりの面白さであったことをまずお伝えしておく。面白いエピソードは本を読んでいただくとして、この本でもっとも印象的だったのは、それぞれの探検への姿勢や、探検行を本にまとめる姿勢がまったく異なることだった。

高野さんのあとがきにそれが一言でまとめられていて、たしかにそうだとひざを打ってしまった。高野さんは未知なる場所や謎のモノが好きで、それを確かめに周到な準備をして調べにいくスタイル。簡単にいってしまえば、面白ネタを解明しに行くことを探検の基本としている。最初の探検は、アフリカのコンゴまで行って、まるで川口探検隊のように、いもしない幻の獣を探している(『幻獣ムベンベを追え』)。その後黄金の三角地帯でアヘンを栽培してみた『アヘン王国潜入記』や、内戦でやばい国に住んでみた『謎の独立国家ソマリランド』など、だれも知らないことを体験して恐るべき本を書いている。

一方で角幡さんは、チベット・ツァンポーや北極など命がけの冒険、探検を行い、それが自分にとっていかなるものかを命題とし、自分の内面に深く入っていこうとする。ただ命がけの割には、準備が雑でねえのかと高野さんはのたまっている。

いちばん笑えたのは、以下のくだり。ちょっと長くなるが、そのまま載せてしまおう。

 姿勢の差は文章にも如実にあらわれる。内面を深く掘り下げていく角幡の文章はきわめて文学的だ。それに対し、私のほうは掘り下げるほどの内面がないため、話はすぐにそこからあふれて笑いの淵に流れていく。どちらが読者の間で評価されるか、言うまでもない。
 極めつけはルックスである。角幡のほうが若くて、男前で、がたいもいい。一緒に並んだ写真を見ると、どうしても毎回俺はこいつの引き立て役にならなきゃいけないんだと思わずにいられない。

これを機に高野秀行さんの本を読んでみようか。

 

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