『溶鉱炉の火は消えたり 八幡製鉄所の大罷工記録』(5)
九 鬨は揚がる
斯くて、いろいろの小悲喜劇はあつたが、罷工はプログラムどほりに進行した。
各工場から順次に雪崩出た職工群は、行列を遮ぎらうとする監督連や守衛を××にして、気勢をあげたほかには、別段の故障も、紛擾(ふんじょう)もなく、幾十度となき調練を経た軍隊でもあるかのやうに、隊伍堂々と目的地に進行して行つた。
八時頃には赤煉瓦の建物 . . . 本文を読む
『溶鉱炉の火は消えたり 八幡製鉄所の大罷工記録』(4)
七 準備は成れり
八幡に帰ると、直ぐ、四五の幹部を集めて、東京の様子を報告して置いて、私は姿を消した。
一月二十日、私は人夫供給所の手から、森重皆一と二人で人夫になつて工場にもぐり込んだ。構内の全地形を、地図の上ではなくて、現実に見知つて置いて、罷工の作戦計画を立てる必要があつたからである。此の事は、四五人の同志の他、誰にも知られなかった . . . 本文を読む