アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

20221106 内灘試射場接収反対闘争70周年にあたって

2022年11月06日 | 内灘闘争
内灘試射場接収反対闘争70周年にあたって

 2022年2月に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、すでに9ヶ月を過ぎ、世界は2陣営に分裂して、世界的戦争へと発展している。日本政府は米・NATOの側に立ち、ウクライナを支援し、ロシアへの経済制裁の道を選択している。日本経済研究センター(JCER)は4月時点で、ロシアのウクライナ侵攻後の日本経済を標準シナリオで、<資源価格の高騰→物価上昇、世界経済成長率の低下、エネルギー多消費産業の停滞、貿易・サービス収支の赤字化、経常黒字の半減、経済のマイナス成長化>と予測し、その後8月には、景気後退率=54.9%(67%=警戒シグナル)と発表した。日本経済は危機的状況に入りつつあり、生活必需品の値上がりで、労働者人民の生活は圧迫されている。
 今年は内灘闘争(1952.9~)から70周年で、何カ所かで記念集会が開かれている。今、内灘闘争の何に注目すべきなのか。それは朝鮮戦争下で、日米による朝鮮侵略戦争の遂行を阻害し、「敗戦を望む運動」としてたたかわれたからである。
 内灘闘争から学び、ウクライナ戦争に参戦する日本政府にたいして、いかなる態度で臨むべきか、まずは内灘闘争の背景から確認することにしよう。

経済的、政治的背景
 敗戦から1940年代末にかけて、世界資本主義は戦後恐慌に見舞われ、日本も輸出の不振・滞貨の累増などに直面し、日本資本主義は壁に突き当たっていた。そこに朝鮮戦争が起こり朝鮮特需が生まれ、「日本経済の起死回生薬」の役割を果たしたのである。
 朝鮮侵略戦争に必要な軍用材の大量発注(特需)による輸出の増大は重化学工業の発展にとってのカンフル剤の役割を果たし、機械・金属・化学・製材・繊維などの生産の拡大によって、1951年度に鉱工業生産は戦前の水準を突破した。
 この期間に独占への集中・集積が一挙に進み、1951年以降の独占資本主義としての急速な成長の基盤を形成したのである。朝鮮の人々の命と引き替えにして、日本の経済発展を得たのである。

 アメリカ占領下の日本では、大量人員整理、賃下げ、中小資本の系列化、低米価、地方税増税によって犠牲を労働者人民に転嫁し、共産党中央委員の追放、アカハタの発行停止、新聞・通信・放送・電産・官公庁へのレッド・パージ(1950.6)によって政治支配体制の「強権的安定化=暴力的支配」を強行したのである。
 敗戦帝国主義から回復しつつあった日本は、1952年サンフランシスコ条約と安保条約の発効を転機として、新たな段階に入るのであるが、日本は独力で人民支配を貫徹するために、破壊活動防止法立法攻撃(1952.7成立)を加えており、これにたいして労働者人民は「労闘ストライキ」をもってたたかいぬいていたのである。

朝鮮侵略戦争との対決
 外には朝鮮侵略戦争があり、内にはレッド・パージや破防法立法があり、人民はこれらと必死でたたかっている真っ只中で、内灘闘争(1952年~)は国民的規模でたたかいぬかれた。
 1952年9月「内灘砂丘地接収」の報せが伝わるや、漁業を生業とする村民は砂丘と海を死守するために激しくたたかい始めた。アメリカにとっても、中国革命に続く朝鮮失陥は絶対に許されず、日本を総動員してでも巻き返さねばならない瀬戸際に立たされていたのである。まさに内灘砂丘をめぐって、互いに譲り合うことのできない階級的攻防戦として、帝国主義と人民が激突したのである。
 内灘闘争は米日の朝鮮侵略プログラムをズタズタにし、内灘試射場を安定的に使用できるようになったのはようやく1年後であり、朝鮮戦争(1950.6~53.7)休戦直前だった。米日にとって最も緊急に必要なときは、村民のたたかい(坐り込みや強行出漁など)と全学連や労働者の支援、とりわけ北陸鉄道労働組合の「弾丸輸送拒否ストライキ」によって、試射場はほとんど機能せず、小松製作所などの倉庫には朝鮮向けの砲弾がうずたかく積まれていたのである。

問われた日朝連帯
 内灘闘争に在日朝鮮人がどのようにかかわったのか。私が知り得た内灘に関する資料のなかで、下記5件がすべてであり、いかに内灘闘争が朝鮮戦争との関連で語られてこなかったかを示している。
 『内灘闘争資料集』(1989年)の別冊に、「内灘闘争資料目録」があり、そのなかに❶「朝鮮解放戦争第3周年神奈川県決起大会メッセージ」(1953.6.25)、❷ビラ「独立と平和のために闘っている労働者農民青年学生婦人市民の皆さん!」(在日朝鮮統一民主戦線石川県委員会1953.7)、❸ビラ「日本国民に訴う ふたたび第二の朝鮮にするな」(在日朝鮮統一民主戦線中日本地方協議会など1953.8.14)がある。資料原本は内灘町生涯学習課で閲覧し、写真に複写することができた。
   

 また、資料集の「年表」には、❹「朝連主催の8・15平和推進大会を向粟崎鉄板道路で開催」との項目があり、『内灘から三里塚へ(出島権二さん追悼集)』には、❺「1953年内灘解放区」(出島さんからの聞き書き)があり、そこでは、「内灘は朝鮮侵略のための試射場」と語られている。
 資料❶の「メッセージ」には、「日本の軍事基地は過去3年間、アメリカ侵略者が平和で豊かな土地や漁場を朝鮮侵略の基地に利用してきました。そのため何の罪もない朝鮮の数多くの婦人や子ども、老人が殺され、国土は灰燼と化し、文化遺跡は焼かれ」と記されていいる。10年前までは植民地にされ、強制連行によって来日し、強制労働を強いられていた朝鮮人民の危機感に満ちた訴えである。
 在日朝鮮人は明確に朝鮮戦争との関係で内灘闘争を認識していたが、当時最も読まれた『内灘-日本の縮図』には、前書きにも、本文にも、巻末の労働組合の声明書・抗議文にも、「朝鮮侵略戦争反対」の文言がなく、日本の労働者、知識人は米軍に対する「被害者意識」からの認識であり、日本政府も加わっていた朝鮮侵略戦争にたいする対決性が薄弱だったのである。かろうじて、「6・25軍事基地反対国民大会」決議で、「朝鮮における戦争の速やかな終結」を米英中仏ソに期待(お願い)しているぐらいであった。
 私たちが今、内灘闘争から学ぶべきはアメリカ(日本)による朝鮮侵略戦争にたいして、内灘村民と労働者市民、在日朝鮮人民が全力でたたかいぬき、朝鮮に送られ、使用される砲弾の試射を許さなかったことである。

ウクライナの事態
 米日が準備している対中国・北朝鮮侵略戦争の危機が高まる現代をどのように迎え撃つべきなのか、まずは、いま、私たちが直面しているウクライナ戦争について明確にすべきであろう。政府・マスコミは<民主主義Vs専制主義>という単純な構図で、人民大衆の反戦闘争を封じようとしているが、いったい、日本人民にとってウクライナ戦争とは何なのか。
 エマニュエル・トッド著『第3次世界大戦は、もう始まっている』(2022/6)によれば、「冷戦後のアメリカの戦略目標は、①ロシアの解体、②欧州とロシアの接近を阻止すること」(071)にあるとし、1991年独立後のウクライナに、さまざまな政治的介入をおこなってきた。トッドが「2014年2月、ウクライナで、民主主義によらずに(親EU派のクーデター)で親ロ派ヤヌコビッチ政権を倒した」(021)、「ロシアの侵攻が始まる前の段階で、米英は高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団を派遣し、ウクライナは米英の衛星国になっていた」(022)と書いているように、NATO・アメリカはウクライナの政治に介入し、自国に都合の悪い政権をクーデターで転覆するなど、この政治手法のどこに民主主義や民族自決の原則があるだうか。
 また、トッドは「ヤヌコビッチ政権崩壊後、ウクライナ東部では、言語的・文化的にロシアに近い住民が攻撃に晒された」(043)こと、すなわちウクライナの民族政策の偏狭さが、ロシアの侵攻を招き寄せたことも視野に入れておかねばならない。ところが、市井では、「ウクライナを併合するため、送り込んだロシア人が虐げられているからとの名目で軍を動かした」などというまことしやかな風評が流れているが、もともとウクライナは多民族国家であり、南部にはロシア語を話す住民が一定数を占めている。
 以上のように、トッドは現在進行中のウクライナ戦争の原因はアメリカにあると主張し、アメリカシカゴ大学のジョン・ミアシャイマーも「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」(017)と主張しているが、日本では、自称左翼でさえも、アメリカ批判を差し控え、すべての責任をロシアにあるとしており、ウクライナ戦争の本質を見誤っているような気がする。
 もちろん、ロシア軍が国境を越えてウクライナに侵攻することは許されないが、トッドが「アメリカの戦争の真の目的は、アメリカの通貨と財政を世界の中心に置き続けること」(142)と述べているように、戦争の原因をつくったのはアメリカであり、アメリカの責任を明らかにしたうえで、ロシアのウクライナ侵攻を批判すべきである。その上で、私たちの態度は、強盗同士の戦いの一方に荷担するのではなく、その戦争の最大の犠牲者ウクライナ人民とともに、米(使嗾されたゼレンスキー)・ロ(プーチン)両者による戦争に反対することである。とりわけ、日本政府のウクライナ軍事支援にはNOを突きつけることである。

東アジアにおける米軍
 中国・北朝鮮の軍事的行動は、アメリカによる東欧(ウクライナ)への軍事的・政治的プレッシャーに反応したロシアによるウクライナ侵攻に酷似している。
 ここ数年、アメリカは中台危機を醸成し、中国、北朝鮮を追いつめてきた。最近数カ月間の東アジアでの米軍の挑発的軍事訓練(演習)をマスコミ報道から摘記すると、
①8/22~米韓合同演習(野外機動訓練)【9/2北中】/
②8/29~9/2小松基地での日米共同訓練(米軍三沢基地90人)【8/30、9/2北中】/
③9/23米原子力空母(レーガン)の釜山港入港>【9/24北中】/
④9/26~29日本海(東海)で米韓海軍合同軍事演習(レーガンなど艦艇20隻)【9/27北中】/
⑤9/26~空自小松(F15)・空自三沢(F35)の共同訓練【10/6北中】/
⑥9/30日本海(東海)で日米韓合同軍事演習(対潜水艦作戦)【9/30、10/1北中】/
⑦10/4米韓戦闘機共同訓練【10/6北中】/
⑧10/4日米戦闘機共同訓練【10/6北中】/
⑨10/5米韓両軍―日本海に向けてミサイル発射【10/6北中】/
⑩10/6~日米韓合同軍事訓練(米空母レーガン)【10/6北中】/
⑪10/7~8米韓機動訓練(空母レーガン+韓国駆逐艦)【10/8北中】/
⑫10/24~27米韓合同海上訓練【10/25北中】/
⑬10/27宮古島・多良間島北方で、日米両空軍救難訓練【11/3北中】/
⑭10/31~11/5米韓空軍合同空中訓練【10/25北中】/
⑮11/10~19日米共同統合演習(実動演習)【10/21統合幕僚監部発表】と、膨大な数になる。

 以上の軍事訓練・演習に加えて、アメリカは嘉手納基地にF22ステルス戦闘機を12機配備し、従来のF15と合わせて60機態勢にする【11/4沖縄タイムス】、オーストラリア北部のティンダル空軍基地に核兵器搭載可能なB52戦略爆撃機を最大6機配備する【10/31産経】、フィリピンでは、米軍基地を倍増(5→10ヶ所)し【10/29北中】、中国にたいする攻撃態勢を固めている。
 米軍を核とした米・台・韓・日による軍事的挑発が、中国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のリアクション(ミサイル発射など)を誘引し、より一層両陣営間の軍事的緊張を高めている。

日本政府も
 他方、日本政府は、高速滑空弾の射程延長(1000キロ超)【10/31北中】、長距離巡航ミサイル「トマホーク」購入の検討【11/1北中】を開始した。トマホークの最大射程は2500キロ超であり、北朝鮮全土から中国主要都市が射程圏に入る。まさに、「専守防衛」を投げ捨て、敵基地攻撃能力への進化を如実の物語っている。
 また、政府は次期中期防衛力整備計画(2023~5年間)で、現行(2019~23年)の1・5倍の40兆円超を検討している【9/25北中】。9月には基地反対運動潰しの「土地利用規制法」が全面的に施行された【9/17北中】。
 このように、日本政府は、軍事力の強化と軍事演習をおこない、北朝鮮のリアクション(ミサイル発射)にJアラート(空襲警報)を発出し、国民を北朝鮮排外主義で組織し、戦争熱を形成しようとしている。

  

内灘から学ぶこと
 すでに、日米軍事同盟と中国・北朝鮮は負のスパイラルに突入しており、戦争を止めることができるのは、日本・朝鮮・韓国・中国・台湾の労働者人民の反戦闘争以外にない。
 それは、1952~3年の内灘闘争から多くを学ぶことができる。戦争反対の声を上げつづけ、交戦国人民との連帯をかけて、内灘漁民のように鉄条網をかいくぐって出漁し、砲弾の試射を阻止し、基地機能を止め、北陸鉄道労働者のように軍需物資輸送のハンドルを握らず、戦争への非協力・サボタージュで、タマを一発も送らないたたかいが求められている。
 困難なたたかいだが、70年前の内灘住民、北陸鉄道労働者がやってのけているのだ。現代の私たちにできないはずがない。

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