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小松基地問題研究会

20230407 いま、言論の自由が危ない!

2023年04月07日 | 教育、憲法、報道
20230407 いま、言論の自由が危ない!

 2022年10月にドキュメンタリ-映画「裸のムラ」が公開された。私は見ていないが、さまざまなメディアの映評を見ると、同年3月におこなわれた石川知事選挙を舞台に、谷本前知事、馳現知事、森喜朗を取り巻く人々の「忖度(そんたく)」や男尊女卑の空気感をとらえようとしている作品だという。この映画のプロデューサー・米澤利彦さんは「石川県政界の知事を頂点とした圧倒的な力関係。そして為政者と一部メディアとの癒着」とパンフレットで解説しているという。

 県議会での馳知事や職員の映像使用について、馳は肖像権を盾にして、石川テレビ社長を呼びつけて、屈服させようとしているが、拒否されている。当然である。ここで石川テレビはもちろん他のメディアが屈服してしまえば、石川県行政によるメディア支配が確立し、戦後民主主義は戦時民主主義となるだろう。そこには報道の自由(批判の自由)はなくなり、大本営発表をそのまま報道する下請けメディアが残るだけである。

 これは石川テレビ一社の問題ではない。石川県内メディアだけの問題ではない。すでに、金沢市役所前広場は体制順応型のイベントにしか使用許可が下りず、言論の自由(批判の自由)が侵されている。全国的に見ても、2020年に菅首相は日本学術会議が提案した新会員候補者105人のうち6人の任命を拒否した。政府は日本学術会議法を改悪し、選考諮問委員会を設けて、学術会議の独立性を解体し、政府への批判を封じようとしている。

 表現の自由(批判の自由)は権力(法律)が守ってくれるものではなく、自らの表現(批判)を通して確立するものである。メディアはもちろん市民も馳知事によるメディアコントロールと対決しなければならない。

 『北陸中日新聞』に掲載された学識者のコメントを列記する。また「森喜朗新聞」とささやかれる『北国新聞』の論調は、自らにかけられている攻撃であるにもかかわらず、他人事のように事実報道のみである(2023/1/28ネット記事、4/5朝刊)。

 

『北陸中日新聞』
 砂川浩慶(立教大・メディア)「そもそも会見は県民に向けて発信するもの。特定の者とのもめ事を取り上げて開かないというのは、木を見て森を見ずだ」「もめ事から会見を開かないとなると、ご用メディアだけになる。選挙で選ばれた知事としての行いではない」(4/1北中)

 石川テレビ放送「報道の目的である公共性、公益性に鑑みて特段の許諾は必要ない」(2月中旬)

 砂川浩慶「メディアをコントロールしようとする介入は明らかだ」「メディアは自己検証することが大前提で、一民間の報道機関に権力側が検証などを求めることではない。権力の介入が進めば、大本営発表が当たり前となり、主権者の県民に情報が行かなくなる。民主主義の原則が崩れる」「石川テレビとの肖像権の問題と、会見を開かないのは別問題。論理のすり替えも甚だしい」(4/5北中)
 
 曽我部真裕(京都大・情報法)「公務中の場面を映したものは違法な肖像権侵害にはならないと考える」「(肖像権には)総合的な事情に考慮し、行き過ぎている場合は違法。撮影する目的、撮影の仕方、使われ方などを見て、限度を超えている場合は許されない」「公務中の映像で、ドキュメンタリーは報道の一種。公益性が高く、報道の自由が優先される」「(一般職員の肖像権については)一般論として知事や幹部職員よりも保護される対象であるが、今回は開かれた場での活動のため結論は変わらない」「(商業利用については)公共や報道目的というものは内容や制作意図で決まる話。有料で上映しているか、どうかは重要ではない。内容で判断すべきだ」(4/5北中)

 石川テレビ放送はプロレス映像について、「私的な映像の場合、権利者に提供の可否を判断する権限がある」として、質問を撤回し、謝罪した。→西田亮介(東工大・社会学)「プロレス映像は県民が知事の姿勢を評価する上で大切な判断材料として、公的なものであり、撤回する必要はなかった」「放送局の社長を記者会見の場に呼ぶこと自体おかしい。政治家は弁が立ち、自分に有利な土俵に持ち込もうとすることが多く、見世物的で下らない」(4/5北中)


メモ これまでにも、言論の自由の侵害に繋がる事件があり、簡単に列記しておこう。
● 2000年12月に「女性国際戦犯法廷」が開かれ、日本軍による婦女暴行や「慰安婦」制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとして、有罪判決を下した。自民党の安倍晋三幹事長代理による政治的圧力があり、この部分を全面的にカットした。朝日新聞も「この番組ではNHKが政治家からの圧力に抗しきれず番組内容をねじまげた」と報道した。

● 2015年、安倍政権の高市早苗総務大臣が総務委員会で「1つの番組でも極端に偏向報道がある場合は、政治的公平に欠く」と答弁した。これは、メディアに対する言論弾圧に直結する重大問題である。

● 2017年には、苫小牧市立中央図書館、2018年には鹿児島市立図書館で、図書貸し出し情報を警察に任意提出した。2011年に日本図書館協会がおこなった調査では、警察から情報を求められた図書館は945館のうち192館あり、そのうち113館が情報を提供したという。もはや「図書館の自由宣言」は崩壊しているのである。

● 2019年の表現の不自由展(愛知)も極右の脅迫で、公共施設が表現の自由を守る努力を放棄し、いとも簡単に中止を余儀なくされている。

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