旧優生保護法による強制不妊手術
公文書開示の経過
今年(2018年)の2月ごろから、旧優生保護法を根拠にして、強制不妊手術(石川県でも88人)がおこなわれていたことが報道された(2月24日付『北陸中日新聞』)。
去る4月18日、石川県知事に、「優生保護法によって障がい者らに不妊手術がおこなわれたことに関する公文書」の開示請求をおこなった。5月2日に開示決定通知があり、7日に1973年3月17日付の①「石川県優生保護審査会の審査決定通知」などの㊙文書を閲覧した。
開示文書は手術関係12人、審査会関係14人、1973、76、77、78年(4年分)の合計約270枚であった。4年分以外は不存在ということだった。記載事項のほとんどが、「個人に関する情報」という理由で、黒塗りされており、分析作業には役立たないので、ごく一部の38枚のコピーを受け取った。
開示文書は「個人に関する情報」の拡大解釈により、申請医師(病院)、手術病院(手術内容)、手術金額(手術内容、個人が類推されるという理由)で黒塗りされた。
旧優生保護法にもとづいて、1949年から1992年までに約25000人が不本意な不妊手術を強制されている。その責任は旧優生保護法を立法した政府と国会議員、法案を準備した厚生官僚、行政指導した都道府県知事と職員、優生保護審査会委員、不妊手術を申請し、執刀した医師のすべてにある。
にもかかわらず、その責任の重要な一端を担った石川県は、文書開示にあたって、手術内容などの重要事項の隠蔽に走った。開示文書によって明らかになった不当な不妊手術の流れを確認しておきたい。
審査会関係書類
開示資料によると、1973年3月15日に「石川県優生保護審査会」がひらかれた。出席者は委員8人と事務局4人。午後2時30分に開会され、3時に閉会された。
議事録には、議件(優生手術をおこなうことの適否に関し審査)は第1号から3号まであり、申請者(黒塗り)、優生手術を受くべき者(黒塗り)、申請書及び調査書を朗読説明(黒塗り)で、閉会は午後3時00分。わずか30分で、3人の審査が終わったのである(1人あたり10分)。
②「石川県優生保護審査会の優生手術適否審査書」があり、「申請者」(黒塗り)、「優生手術を受くるべき者」(黒塗り)、「申請の内容」(別紙)の記載事項があり、委員長を除く7人の適否欄はやはり黒塗りである。すなわち、だれが「適」とし、だれが「不適」としたのかを知ることが出来ない。
そして③「優生手術適否決定通知書」が審査日(3月15日)付けで出されている。「右の者については、優生保護法第5条第1項の規定により審査の結果、次のとおり決定したので通知する。なお、この決定に不服があるときは、この通知書を受けた日から2週間以内に書面で、中央優生保護審査会に対して再審査を申請することができる」として、適否の欄は黒塗りされている。④「優生手術実施医師指定通知書」もあるが黒塗りである。写真をクリックすると拡大されます。
添付書類には、⑤「優生手術申請書(申請者は医師、宛先は石川県優生保護審査会)」、⑥「健康診断書」、⑦「遺伝調査書(本人の血族中遺伝病にかかった者)」、「同意書(右の者について優生保護法第12条の審査を申請することに同意します)」、そして⑧「(黒塗り=被施術者)についての調査書」には、本人の生活歴、⑨家庭の状況、⑩家系図まで添附されている。
手術関係書類
1973年5月17日付けの「優生手術費の支出負担行為について伺」という公文書があり、
(1)支出負担行為をする理由 昭和48(1973)年3月15日開催の石川県優生保護審査会において、優性上、優生手術をおこなうことを適当と認められた。(2行黒塗り)にかかる優生手術について優生保護法第11条の規定に基づき県が費用の支弁をするため支出負担行為をするもの。
(2)支出負担行為伺額 ¥(黒塗り)
(3)積算の根拠 被手術者、手術科、入院料、注射料、処置料、計、手術をおこなう病院(すべて黒塗り)
(4)支払先(黒塗り)
添付書類として、⑪「石川県知事宛の優生手術費請求書」、⑫「優生手術費請求明細書」、「国民健康保険診療報酬請求明細書」があるが、何もかもが黒く塗られており、概略さえ知ることが出来ない。
国家犯罪を弾劾する
旧優生保護法はナチスの「断種法」の流れをくみ、「遺伝防止のため公益上必要」として、1949~92年までに、25000人に強制不妊手術をおこなった。
2018年4月22日付『北陸中日新聞』によれば、石川県の手術人数(1948~1996年)は88人と報道されている。今回開示された県文書では審査段階の14人、手術段階の12人だけであり、ほとんどが闇に葬られている。
人の人生を決定的に左右した過てる政策に光をあてなければならない当事者としての石川県が「個人情報の保護」という理由で、手術内容(金額)さえ秘匿し、旧優生保護法による不妊手術の実態を覆い隠すという悪質な対応に終始している。
追伸
5月22日の『北陸中日新聞』では、石川県内で新たに114人の強制不妊手術に関する資料を発見―これまでに、146人の障がい者を優生保護審査会に審査申請し、144人が審査され、126人に強制手術がおこなわれた。5月21日には、全国で相談窓口が開かれ、石川県内でも金沢税務法律事務所が引き続き相談を受け付けるという。
公文書開示の経過
今年(2018年)の2月ごろから、旧優生保護法を根拠にして、強制不妊手術(石川県でも88人)がおこなわれていたことが報道された(2月24日付『北陸中日新聞』)。
去る4月18日、石川県知事に、「優生保護法によって障がい者らに不妊手術がおこなわれたことに関する公文書」の開示請求をおこなった。5月2日に開示決定通知があり、7日に1973年3月17日付の①「石川県優生保護審査会の審査決定通知」などの㊙文書を閲覧した。
開示文書は手術関係12人、審査会関係14人、1973、76、77、78年(4年分)の合計約270枚であった。4年分以外は不存在ということだった。記載事項のほとんどが、「個人に関する情報」という理由で、黒塗りされており、分析作業には役立たないので、ごく一部の38枚のコピーを受け取った。
開示文書は「個人に関する情報」の拡大解釈により、申請医師(病院)、手術病院(手術内容)、手術金額(手術内容、個人が類推されるという理由)で黒塗りされた。
旧優生保護法にもとづいて、1949年から1992年までに約25000人が不本意な不妊手術を強制されている。その責任は旧優生保護法を立法した政府と国会議員、法案を準備した厚生官僚、行政指導した都道府県知事と職員、優生保護審査会委員、不妊手術を申請し、執刀した医師のすべてにある。
にもかかわらず、その責任の重要な一端を担った石川県は、文書開示にあたって、手術内容などの重要事項の隠蔽に走った。開示文書によって明らかになった不当な不妊手術の流れを確認しておきたい。
審査会関係書類
開示資料によると、1973年3月15日に「石川県優生保護審査会」がひらかれた。出席者は委員8人と事務局4人。午後2時30分に開会され、3時に閉会された。
議事録には、議件(優生手術をおこなうことの適否に関し審査)は第1号から3号まであり、申請者(黒塗り)、優生手術を受くべき者(黒塗り)、申請書及び調査書を朗読説明(黒塗り)で、閉会は午後3時00分。わずか30分で、3人の審査が終わったのである(1人あたり10分)。
②「石川県優生保護審査会の優生手術適否審査書」があり、「申請者」(黒塗り)、「優生手術を受くるべき者」(黒塗り)、「申請の内容」(別紙)の記載事項があり、委員長を除く7人の適否欄はやはり黒塗りである。すなわち、だれが「適」とし、だれが「不適」としたのかを知ることが出来ない。
そして③「優生手術適否決定通知書」が審査日(3月15日)付けで出されている。「右の者については、優生保護法第5条第1項の規定により審査の結果、次のとおり決定したので通知する。なお、この決定に不服があるときは、この通知書を受けた日から2週間以内に書面で、中央優生保護審査会に対して再審査を申請することができる」として、適否の欄は黒塗りされている。④「優生手術実施医師指定通知書」もあるが黒塗りである。写真をクリックすると拡大されます。
添付書類には、⑤「優生手術申請書(申請者は医師、宛先は石川県優生保護審査会)」、⑥「健康診断書」、⑦「遺伝調査書(本人の血族中遺伝病にかかった者)」、「同意書(右の者について優生保護法第12条の審査を申請することに同意します)」、そして⑧「(黒塗り=被施術者)についての調査書」には、本人の生活歴、⑨家庭の状況、⑩家系図まで添附されている。
手術関係書類
1973年5月17日付けの「優生手術費の支出負担行為について伺」という公文書があり、
(1)支出負担行為をする理由 昭和48(1973)年3月15日開催の石川県優生保護審査会において、優性上、優生手術をおこなうことを適当と認められた。(2行黒塗り)にかかる優生手術について優生保護法第11条の規定に基づき県が費用の支弁をするため支出負担行為をするもの。
(2)支出負担行為伺額 ¥(黒塗り)
(3)積算の根拠 被手術者、手術科、入院料、注射料、処置料、計、手術をおこなう病院(すべて黒塗り)
(4)支払先(黒塗り)
添付書類として、⑪「石川県知事宛の優生手術費請求書」、⑫「優生手術費請求明細書」、「国民健康保険診療報酬請求明細書」があるが、何もかもが黒く塗られており、概略さえ知ることが出来ない。
国家犯罪を弾劾する
旧優生保護法はナチスの「断種法」の流れをくみ、「遺伝防止のため公益上必要」として、1949~92年までに、25000人に強制不妊手術をおこなった。
2018年4月22日付『北陸中日新聞』によれば、石川県の手術人数(1948~1996年)は88人と報道されている。今回開示された県文書では審査段階の14人、手術段階の12人だけであり、ほとんどが闇に葬られている。
人の人生を決定的に左右した過てる政策に光をあてなければならない当事者としての石川県が「個人情報の保護」という理由で、手術内容(金額)さえ秘匿し、旧優生保護法による不妊手術の実態を覆い隠すという悪質な対応に終始している。
追伸
5月22日の『北陸中日新聞』では、石川県内で新たに114人の強制不妊手術に関する資料を発見―これまでに、146人の障がい者を優生保護審査会に審査申請し、144人が審査され、126人に強制手術がおこなわれた。5月21日には、全国で相談窓口が開かれ、石川県内でも金沢税務法律事務所が引き続き相談を受け付けるという。