OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ボニー姐さんのデビュー盤

2010-07-31 16:16:25 | Rock

Bonnie Raitt (Warner Bros.)

嘗て我国では、日本語のロック云々と並んで、女にロックは出来ねぇ!?!

なぁ~んていう論争が本気でありました。

まあ、そんなことは完全な偏見でしょうし、実際、ジャニス・ジョプリンやグレース・スリック等々の凄い女性ロッカーが登場していたのは紛れもない歴史です。

しかし、そんな議論(?)の中で常に槍玉にあがっていたのが、本日ご紹介のボニー・レイットでした。

なにしろ女だてらにスライドギターを弾きながらブルースを歌うという、些か小癪な存在感が、可愛さ余って憎さ百倍!? 失礼ながら特別に美人ではないというあたりも本格派の面目として、逆に許せない!?

実は結論から言えば、ボニー・レイットはそのデビュー時からブルースを演じる若き白人女という商品価値が絶対的でありながら、一般的なレコードセールスは決して芳しくなく、おそらくは会社側の意向だったんでしょうが、アルバム制作を重ねる度にブルース色を抑え、如何にも流行のロック系女性シンガーという方向性を強めていった時期もあります。

しかし、巡業におけるライプの現場では、きっちりスライドギターを弾きながらのブルースをやって、お客さんもそこに期待していたのは明らかでした。

また、彼女の音楽性は決してブルース一辺倒だけではない、なかなかハートウォームでソウルフルなボーカルスタイルや凛とした女性としての表現も、素晴らしいのです。

さて、そこで本日の1枚は1971年に発売されたボニー・レイットのデビューアルバムで、評論家の先生方からは好評だったと伝えられますが、売れ行きは散々……。リアルタイムの我国でも、果たして日本盤が出ていたのか? ちょいと定かではありません。

それでも前述した、女にロック云々の論争の中でボニー・レイットの名前を知ったサイケおやじは、彼女がスライドギターを弾くという事実もあり、聴いたことも無いのに話は出来ないという思いから、とりあえず1973年夏に中古で、このLPを手に入れたのです。

 A-1 Bluebird
 A-2 Mighty Tight Woman
 A-3 Thank You
 A-4 Finest Lovin' Man
 A-5 Any Day Woman
 B-1 Big Road
 B-2 Walking Blues
 B-3 Danger Heartbreak Dead Ahead
 B-4 Since I Fell For You
 B-5 I Ain't Blue
 B-6 Women Be Wise

まずA面に針を落とせば、いきなりスティーヴン・スティルス作で、バッファロー・スプリングフィールドの代表曲という「Bluebird」が、グッとスワンプロック系のフォークブルースなアレンジで演じられるのですから、吃驚仰天!

しかもイントロから鳴りっぱなしのアコースティックスライドは、もちろんボニー・レイット本人が弾いているというのですから、たまりません。

バンドサウンド主体で、ボーカルやコーラスと演奏パートの録音バランスが、当然ながらステレオミックスではありますが、何故か団子状なのも、好き嫌いはあるにしろ、サイケおやじにはジャストミート♪♪~♪

う~ん、これはガチンコで本気度が高いっ!

ですから黒人ブルース本流というロバート・ジョンソンの「Walking Blues」や女性ブルース歌手のシッピー・ウォレスが十八番「Mighty Tight Woman」に「Women Be Wise」、あるいはトミー・ジョンソンの「Big Road」あたりを演じても、そこに独自のアレンジを持ち込んで、決して流されることがありません。

中でも「Walking Blues」は手拍子と彼女のアコースティックギターが絶妙のビート感を作り出す中、これまた黒人ブルースの現役大御所だったジュニア・ウェルズのハーモニカを従えたボニー・レイットの意気込みと矜持が、実に良く出た名唱名演だと思います。

巧みなスライドも良い感じ♪♪~♪

またソウルフルなイメージとしては、R&Bファン感涙の「Since I Fell For You」が嬉しいところでしょう。ジャズ者にはリー・モーガンの演奏も有名ということは、その泣きの歌メロが魅力の根幹! それをボニー・レイットは、ちょいと拙い雰囲気で歌っているですが、その守ってあげたくなるムードが、捨て難いんですよねぇ~♪ バックの面々の、そんなスケベ心(?)を滲ませた助演も憎めません。

ちなみにこのセッション当時のボニー・レイットは二十歳だったそうですが、その生い立ちはブロードウェイで活躍したジョン・レイットの愛娘でありながら、ウエストコーストで育った幼少の頃から黒人ブルースを聴きつつ、ギターを練習!?! 言うまでもなく、その頃の白人社会で黒人ブルースを本気で聴くなんていうのは、よほどの世間知らずか、変り者というのがアメリカの社会常識でした。そして18歳で大学へ進学するはずが、何時しかボストン周辺でブルースを歌い、またサン・ハウスやフレッド・マクダウェルといった本物の黒人ブルースマンに師事していたというのですから、その覚悟のほどが知れようというものです。

そうした姿勢と存在感が有名興行師のディック・ウォーターマンの目にとまり、ここにデビューとなったわけですが、既に述べたように、ボニー・レイットの商品価値は、ブルースを本気で演じる白人女! そこに対する拘りの強弱が、常に彼女の活動につきまとったのは否めません。

ですから、実はシンガーソングライターとしても有能な彼女の魅力が、その初期のキャリアからあまり注目されなかったのは残念……。

このアルバムでも、実はきっちりと自作自演を披露して、まずは如何にも1970年代初頭のムードが横溢した「Thank You」が、個人的には最高に好きです。所謂フォークソング系の歌なんですが、演奏パートも含めて、吉田美奈子のデビューアルバムや初期ユーミンに通じる味わいが素敵♪♪~♪

また、もうひとつのオリジナル曲「Finest Lovin' Man」が、正統的なブルースロックのアンプラグド的展開なのも嬉しいかぎり♪♪~♪ 絶妙に肩の力が抜けた彼女の歌とギターからは、そこはかとない色気さえ漂ってきますよ。

ということで、これもまたサイケおやじの日常的愛聴盤のひとつです。

ご存じのようにボニー・レイットは、このアルバムを出した1971年の公式デビュー以来、強い存在感とは裏腹の売れ方でした。それが報われたのは1989年にグラミー賞を獲得したアルバム「ニック・オブ・タイム」まで待たねばならないのですが、その間も彼女は全く進化を止めていません。

今ではギターにしても堂々とエレキスライドを演じますし、それにも増して素晴らしいのがボーカルの味わい深さでしょう。実際のライプではピアノの弾き語りで、じっくりと歌う演出も、絶対に飽きることのないヤミツキ症候群です。

これはボニー・レイットのライプを1985年以来、4回も堪能したサイケおやじの偽りの無い気持です。

ちなみに彼女のスライド奏法は、中指にガラス製のパーを装着するという、ちょいと良し悪しの判断も出来かねるスタイルなんですが、とにかく出てくる音とフレーズは本格的で、しかも根源的な魅力に溢れていると思います。

このあたりは映像としても簡単にご覧になれますから、まさにスライド姐御の本領発揮が楽しめるはず!

現在、既に還暦を迎えているボニー・レイットではありますが、その佇まいや音楽に対する情熱に、ヤワな男は絶対勝てないでしょう。

そして出発的となった本日ご紹介のアルバムには、現在となんら変わることのない強さがあります。有名無名を問わず参集した助っ人達が、とにかくハートウォームに彼女を盛り立てんとする雰囲気の良さも、このアルバムの魅力のひとつです。

ちなみに、このアルバムのアナログ盤は一般的に音が悪いということになっていて、後にCD化された時にはリミックスが施されたらしいんですが、それは持っていないので比較のしようもありません。

しかし、一説によると木造の倉庫で録音されたというこのアルバムの「音」が、現在の彼女の状況を鑑みても、ボニー・レイットという女ロッカーには合っていたと思うのは私だけでしょうか?

そして冒頭に述べた議論に話を戻せば、確かにロックが出来ない女もいるでしょう。

しかしボニー・レイットは完全にロックした、素晴らしい女!

これは譲れません。

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2 コメント

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憧れのポニー姐さん (サイケおやじ)
2010-08-01 16:13:05
☆GORI様
コメントありがとうございます。

ボニー姐さんは、もう最高なんですよ、何時の時代も♪♪~♪

一般的には1970年代後半から1980年代中頃までは、レコード会社の方針と思われる中途半端なアルバムばかり出していた低迷期とされますが、それも今となっては愛おしいです。

そしてキャピトル移籍後から現在までは円熟の全盛期でしょうね。出すアルハムは素晴らしいものばかりですから♪♪~♪

ギターばかりか、歌の上手さも絶品だと思います。

このデビュー盤からのワーナー時代も、お楽しみ下さいませ。
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ボニーは最高! (GORI)
2010-08-01 11:09:48
彼女はいいですね。ぼくだけでなく家人もときおりCDを引っ張り出して聴いているみたいです。『LUCK OF THE DRAW』がそのアルバムのタイトルでした。この前後のCDが家にありますが、70年代の初頭になるとぼくもカバーしていませんでした。

機会を見つけて聴いてみたいですな。

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