■カレン / 甲山紀代 (テイチク)
長らく中古盤屋を漁り続けていると、必ずしも店頭に出してある商品だけをターゲットにすることが無くなります。
つまり店の奥にある未整理のブツが気になるんですよねぇ。
皆様は、そんなことがありませんか?
そしてお金を払うついでに覗くカウンターレジの横に、例えばちょい前に買い取った仕入れ品が積んであり、そこに長年の物欲を満たす何かがあれば、もう、心は揺れっぱなしです。
本日ご紹介のシングル盤も、サイケおやじにとっては、そうした経緯のあるものでした。
それは十数年前のある日、某地方都市に出張した折、例によって強引に時間を作って当地の中古盤屋へ赴いたサイケおやじは、しかし然したる獲物も無く、幾分の失望感……。
ところが何気なく店主が分類している仕入れの商品の中に、ほんのチラリなんですが、このジャケットが見えたからたまりません。
早速、初めて行った店であるにもかかわらず、図々しく件のブツに探りを入れたところ、これは売り物ではないという、なかなか意志強固な返事が……。
実はその原因は、レコードが盤もジャケットも痛みが酷く、これを売っては店そのものの信用にかかわるという、店主の毅然とした方針だったのです。
う~ん、確かにそのとおりという品質は否めません。
特にA面は見ただけで針飛びは必至という状態が確認出来ます。
しかしサイケおやじの目的は、B面なのが正直なところでしたから、そちらは悪くないという現実を確かめ、なんとか店主と交渉の末に格安でゲット出来たのは、本当にラッキーだったと思います。
ただし店主からは、絶対に入手先が自分の店だと口外しないで欲しいと約束を求められましたが、それは当然でしょうねぇ。
だいたい中古盤、あるいは古本や骨董の世界で、自分が入手したブツを何処から、これこれの金額で入手したなんて他人に言いふらすのは絶対のご法度で、これは常識!
さて、肝心の中身については既に述べたように、サイケおやじはB面に収録された「カレン」がお目当てでした。
実はこの曲は、昭和40(1965)年にフジテレビで放映されていたアメリカ制作の青春コメディドラマの主題歌で、番組では確かビーチボーイズが歌っていたんですが、何故かそれはリアルタイムでレコード化されませんでした。
それでもドラマそのものは日本でも好評で、主演のデビー・ワトソンは来日もしたほどの人気者になりましたから、レコード会社も忽ち便乗です。
確か何枚かの競作盤が出ていたはずで、この甲山紀代のシングルもそのひとつですが、一番有名なのは、来日時のデビー・ワトソンとドラマで吹替えを演じた丘さとみのツーショットをジャケ写に使ったサーファリズのバージョンでしょう。しかし甲山紀代バージョンのジャケットにも、きっちりデビー・ワトソンの切り抜き写真があるんですよね♪♪~♪
まあ、どちらもオリジナルでは無いところが絶妙というか、それは当時の我国洋楽事情を示すエピソードのひとつかもしれません。
で、サイケおやじは甲山紀代の歌う日本語バージョンを当時のラジオで聴き、なかなか好きになっていたんですが、やはり経済的な事情からレコードは買えず、以降は中古盤屋における探索の対象となって幾年月……。
ようやく件の店で巡り合ったというわけです。
ちなみに歌っている甲山紀代は、ロカビリーやカパーポップスで活躍した人気者でしたから、この「カレン」でもダイナミックエコーズと称するエレキバンドをバックに、溌剌としたボーカルと明るい台詞を披露して感度良好♪♪~♪
残念ながら、前述の事情からA面は鑑賞不能なのが悔しいですねぇ……。それゆえに彼女の音源を網羅した復刻CDがあれば、買ってしまうと思います。
ということで、これを譲っていただいた中古盤屋の店主の矜持には、今でも敬意を表するばかりですし、全く自分の我儘を恥いるサイケおやじであります。
何事もきっちりスジを通した生き方をしたいと願いつつ……。