■If I Could Only Remember My Name / David Crosby (Atlantic)
本日未明、ディヴィッド・クロスビーの訃報に接し、ど~にも気持ちの整理が……。
皆様ご存じのとおり、故人はザ・バーズが大ブレイク時からのメンバーであり、そこを脱退して後は、クロスビー・スティルス&ナッシュ=CS&Nからクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング=CSN&Yでの活動で間違いなく、ロックの歴史に名を刻んだ偉大なるミュージシャンなんですが、その音楽性はジャズや民族音楽等々の要素を含んでいると思われる摩訶不思議にして難解、それでいて心地良いメロディとハーモニーで彩られた独特な世界が広がっており、だからこそ時代に先んじていた事もあったらしく、前述のザ・バーズでは居場所を失ったかの様にグループを去り、またCS&Nの集合離散においては、キーマンともなっていたと云われていますが、全く同感です。
以前にも書きましたが、少年時代のサイケおやじはビートルズよりもザ・バーズが好きだった時期もあり、その魅了されていたフワフワしたボーカル&ハーモニーコーラスとハードなロックサウンドの要が、後にディヴィッド・クロスビーだったんじゃ~なかろうか?
そんなふうに思い込んでみると、強い響きと余韻を残す変則チューニングを用いたギターワークや天才的なハーモニー感覚等々は、正に唯一無二!?
実際、故人が作った楽曲をコピーしようとしても、コードが全く分からず、またメロディ展開のシンコペイトするビート感が掴めずに、挫折した前科も……。
さて、そこで本日掲載したのは、1971年に発表された故人ソロ名義による最初のアルバムなんですが、画像は裏ジャケでございます。
A-1 Music Is Love
A-2 Cowboy Movie
A-3 Tamalpais High
A-4 Laughing
B-1 What Are Their Names
B-2 Traction In The Rain
B-3 Song With No Words
B-4 Orleans
B-5 I'd Swear There Was Somebody Here
上記の収録曲は既に述べたとおりの音楽性に満ちているので、当時流行していたアメリカ西海岸系のロックサウンドとは一味異なる、フォークロックやジャズをベースにしたサイケデリックロックの進化系として聴ける魅力があり、だからこそ、決してシングルヒット向けのトラックは入っていません。
ですから、一聴すれば、特に初めてディヴィッド・クロスビーに接するリスナーにすれば、ネクラで地味な音楽と受け取られるかもしれませんが、そこに仕込まれている不思議な心地良さに覚醒すれば、もう……、これ無くしては……!?!
そんな麻薬的な魅力に溢れているはずで、これはサイケおやじの実体験に基づくところでもあります。
例えば、ザ・バーズ在籍時に書き上げていながら、バンドメンバーからは拒絶されていたらしい「Laughing」、ミョウチキリンな和声を積み重ねた「Tamalpais High」や「Song With No Words」「Orleans」「I'd Swear There Was Somebody Here」と続く後半3曲の流れの素晴らしい構成美は、独壇場でしょうか。
聴いているうちに何となく、心身が浮き上がっては沈んでいく、そんなループに陥ってしまう自分を感じてしまいますし、そんな感覚に衝かれてしまえば、「If I Could Only Remember My Name / 名前しか思い出せないなら」というアルバムタイトルにも説得力がある気がしております。
ちなみにレコーディングセッションに参加したミュージシャンというか、親しい仲間達なんでしょうが、とにかくCSN&Yのグラハム・ナッシュとニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、グレイトフル・デッドからはじェリー・ガルシア、ビル・クルーツマン、ミッキー・ハート、さらにはジェファーソン・エアプレインからはグレース・スリック、ヨーマ・カウコネン、ジャック・キャサディ等々、当時の西海岸ロックを活性化させていたメンツが大集合!
そのあたりにも故人の人脈や人望が想像出来るというものです。
最後になりましたが、ちょっぴり捉えどころが曖昧なアルバム内容であるが故でしょうか、表ジャケットの画像を掲載させていただきますが、重ね焼きされたアルバムデザインは、落ち着きと過激の二面性を持っていたかもしれないディヴィッド・クロスビーという偉人には相応しかったという思いが、今は強いです。
どうか、安らかにお休みください。
合掌。