OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

トニー・ウィリアムスのサイケデリックジャズ

2009-11-05 12:02:36 | Jazz

Spring / Anthony Williams (Blue Note)

あぁ~、今の国会は亡国合戦というか、今週は特に酷いですねぇ。野党のセコイ質問に答えの出ない答弁を演じる与党、それに拍手で野次を消すという、丸っきりヒットラーユーゲントの如き有象無象の新人議員! さらに昨日は口喧嘩……。

全く情けない親分衆の総長賭博って感じですが、こういう時こそ子分達が意気地を見せないと、ねっ!

ということで、本日はそんな気分の過激なジャズを聴いてしまったです。

主役のアンソニー・ウィリアムスとは、もちろんマイルス・デイビスのバンドで一躍名を上げた天才ドラマーのトニー・ウィリアムス(ds) ですから、参加メンバーもウェイン・ショーター(ts)、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ゲイリー・ピーコック(b) という所縁の過激派が揃っています。

そして録音が1965年8月12日ということは、トニー・ウィリアムスが弱冠二十歳そこそこの若造ながら、演目は全てが自身のオリジナル! ここで聴かれる勢いと音楽性の深さには絶句して、驚嘆するばかりです。

A-1 Extras
 いきなりスピード感満点に弾けるトニー・ウィリアムスのブラシが強烈! そして自在に飛翔しては暴れるゲイリー・ピーコックのペースも、基本は堅実な4ビートですから、不穏なテーマを経て、まずはウェイン・ショーターの唯我独尊というテナーサックスが怖い存在感を示します。
 う~ん、このあたりは同時期のマイルス・デイビスのバンドよりも自由度が高く、それはゲイリー・ピーコックの好き勝手なベースワークの所為もありますが、もちろんトニー・ウィリアムスのリーダーシップを理解している、あるいは度量の大きい参加メンバー達の心意気でしょうねぇ~♪
 そして問題児的なゲイリー・ピーコックのベースソロが、トニー・ウィリアムス十八番のスティックワークに煽られて過激に展開され、そこに自然体で絡んでいくサム・リバースの不気味なテナーサックス、再びブラシに戻っているトニー・ウィリアムスの自在なリズムの解釈が、もはやフリージャズを超越した自由性感度が絶大!
 ただし、それでも普通に聴けてしまうモダンジャズの醍醐味は失せていませんよ。
 全く凄いです。

A-2 Echo
 これぞっ、トニー・ウィリアムスならではのドラムスが主役となった名演の決定版!
 つまりは5分弱のドラムソロなんですが、繊細でシャープなシンバルワーク、テンションの高いタムやスネアのコンビネーション、そしてバスドラのアクセントも絶妙にして迫力満点という、流石の展開は飽きることがありません。

A-3 From Before
 そして始まるのが、混濁して陰鬱な隠れ名演(?)なんですが、ここまであまり出番の無かったハービー・ハンコックが全体をリードしていく展開が素晴らしいかぎりです。
 それは自然にピアノトリオ形式へ発展し、その美しくも緊張感に溢れたアドリブパートの構成力は、あくまでも個人の自由裁量を優先させながら、最高の纏まりとしてクライマックスから大団円へと流れていくのです。特にウェイン・ショーターとサム・リバースが入り込んでくる終盤のスリルは圧巻!
 全体としては抑制されたギリギリのところで勝負しているのでしょうか? もう少しの爆発力も期待してしまうのですが、最後の最後で限りない美学をシンプルに披露するハービー・ハンコックのピアノが万事OK♪♪~♪

B-1 Love Song
 B面に入っては、いきなりサム・リバースのテナーサックスが、不思議なフォークタッチのメロディを吹きまくる、この名曲♪♪~♪ 実際、妙な哀愁と中毒性を兼ね備えた演奏は、トニー・ウィリアムスの張りきったスティックワークが楽しめますし、聴き易い中庸アップテンポながら、決してマイルス・デイビスなんか出る幕が無いというムードが濃厚にあるんですねぇ~。
 サム・リバースも要所では十八番のダーティなトーンで彩られた混濁フレーズを聞かせてくれますし、ハービー・ハンコックは薬籠中の「節」を大サービスして、まさに新主流派の醍醐味がいっぱいです。
 ちなみにウェイン・ショーターは休憩中なのでした。

B-2 Tee
 一転して過激な濁流が襲いかかってくる強烈な演奏!
 それをリードしているのは、明らかにウェイン・ショーターの奇怪なテナーサックスとはいえ、トニー・ウィリアムスが得意技の完全披露する激烈な4ビートで全篇のジャズグルーヴを確保していますから、タダでは済みません。
 このアルバムに収録された中では、一番にマイルス・デイビスっぽいムードと言えばそれまでなんですが、ここに果たして御大が入ってこられるかは、不確定の要素が強く存在すると思います。もちろん、それを逆手に活かしたメンバー各人の力演は激しいですよ♪♪~♪
 ウェイン・ショーターが意地悪く浮遊すれば、必死に追い縋るトニー・ウィリアムス! それを笑って許してのハービー・ハンコックとゲイリー・ピーコックという構図には、4ビートジャズが行く所まで、確かに行ってしまった感じさえします。
 ところが凄まじいゲイリー・ピーコックのペースのアドリブの途中で、いきなり演奏がカットされ、終了するんですねぇ~~!?! これについては当時から、後に続くと思われるサム・リバースのアドリブパートがヘタレだった!?! とか、あるいは意図的に思わせぶりをやった目論見だとか!?! 賛否両論があったようです。
 まあ、サイケおやじ的には答えの出せない疑問ではありますが、この唐突な終了が、なかなか良い感じ♪♪~♪

ということで、ある意味では究極の4ビートジャズだと思うんですが、実は最初に聴いた時のサイケおやじは、妙にサイケデリックロックの雰囲気を感じていました。

後で知ったところでは、当時のトニー・ウィリアムスはモダンジャズのトップドラマーでありながら、気持はロックへ傾いていたそうですし、このリーダー盤以降では、ついにジョン・マクラフリン&ラリー・ヤングと組んだフリーロックという言うべき傑作「ライフタイム」を作ってしまったのも、納得出来ます。

それと、ここまで散々書いたマイルス・デイビス云々に関しては、親分が決して古いとかいう問題ではなく、その基本姿勢がジャズかロックか、そういう部分の拘りにあったとすれば、個人的には氷解するのですが……。このセッション後に録音された、例の「プラグド・ニッケル」でのライプ盤あたりを聴くと、こちらの尖がり方がモダンジャズの保守本流を危うくしていた気がするほどです。

永田町のカッコマン議員の先生方には、こういうものが必要だと痛感する次第です。

コメント (2)
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