今日は天候も穏やか、高速も空いていましたので、ついついスピード出しまくりでした。その車中で鳴らしていたのが――
■Cornbread / Lee Morgan (Blue Note)
昨日がハンク・モブレーなら、今日はリー・モーガンである! これはジャズ者のお約束、だなんて、誰が言ったかというと、それは私です。
まあ、好きなんだし、これにもハンク・モブレーが参加しているということで、ご容赦下さい。
録音は1965年9月18日、メンバーはリー・モーガン(tp) をリーダーに、ジャッキー・マクリーン(as)、ハンク・モブレー(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ラリー・リドレイ(b)、そしてビリー・ヒギンズ(ds) という、云わば当時のブルーノート・オールスターズです♪
主役のリー・モーガンは若干18歳でリーダー盤を出した神童ですが、残念ながら麻薬に溺れ、ジャズ・メッセンジャーズのスターの座からも退き、1960年代前半を棒にふった履歴があります。しかし、このセッションは、その後ようやく社会復帰して調子を取り戻した時期に行われたものだけあって、往年の輝きを取り戻し、尚且つ、新しい方向性も垣間見せた人気盤です。その内容は――
A-1 Cornbread
1963年晩秋、第一線に復帰したリー・モーガンがその存在を示したのは、ジャズロック調のヒット曲「The Sidewinder」でしたので、以降、レコーディングには必ずと言っていいほど、二番煎じ曲が演奏されました。この曲のそのひとつですが、当時のスパイアクション映画のテーマにでもなりそうな、なかなか楽しいカッコ良さがあります。
もちろんアドリブも充実しており、8ビートでファンキーにキメるリー・モーガン、粘りとタメのフレーズでソウル味まで出してしまうハンク・モブレー、持ち味のギスギスした音色で鋭角的に迫るジャッキー・マクリーンの泣き節と続くのですから、もう気分は最高です♪
しかもリズム隊がタイトにキメまくり! 中でもハービー・ハンコックがソロでも伴奏でも、メチャ鋭いファンキー節を聞かせてくれますし、ビリー・ヒギンズの合の手もドドンパにならないのは流石です。
ちなみに「コーンブレッド」とは、黒人家庭で焼くカステラと甘食の中間のような甘~いパンのことだと思います。
A-2 Our Man Higins
これもリー・モーガンのオリジナルですが、タイトルどおり、ビリー・ヒギンズとの掛け合いでテーマが進行します。しかもその曲調がアップテンポで、なんともいえない不吉な予感を含んでいるので、先発でソロをとるジャッキー・マクリーンは、オレにまかせろ! とばかりに絶好調のアドリブを聞かせてくれます。
そして続くリー・モーガンも、突出して不吉なフレーズをファンキー感覚に転換させていく妙技を披露するのですが、このあたりの鋭さは、本当に好調の証でしょう。しかし我らがハンク・モブレーはコルトレーン風のフレーズまで繰り出して対抗するのですが、やや、無理しているなぁ……、という雰囲気が漂います。しかし後半ではモブレー節も飛び出して、やはりきちんとファンを満足させるのでした。
で、もうひとりの主役といっていいビリー・ヒギンズのドラムスは本当に歯切れ良く、スマートなグルーヴを生み出しており、それに煽られたハービー・ハンコックは最新鋭のフレーズを披露し、続くビリー・ヒギンズのドラム・ブレイクに華を添えています。
B-1 Ceora
リー・モーガン作のボサノバ曲で、世評では、これがアルバムの目玉とされていますが、個人的には??? せっかくの優しい名曲が3管によるテーマ吹奏で野暮ったくなっている上に、リー・モーガンのアドリブ・ソロも何故かピントが甘く、アイディアが空回り状態……。しかしその窮状を救うのがハンク・モブレーで、せつなく良く歌うそのアドリブの妙技は何度聴いても、流石と唸ります。またイントロやアドリブで存分に発揮されるハービー・ハンコックの洒落たセンスも聴き逃せません。
B-2 I'll Wind
有名スタンダートをミディアム・スローで演じるリー・モーガンはミュートを使っていますが、マイルス・デイビスになっていないのは、やはり天才の証明です。またハービー・ハンコックが、元曲の中の愁いをハードボイルドに表現して、なかなかの名演になっています。さらに背後で密かに鋭くビートを強調するビリー・ヒギンズにも、ご注目下さい。
B-3 Most Like Lee
これまたリー・モーガン作のメチャ楽しいハードバップ曲です。そして先発でアドリブに突入するハンク・モブレーが、もう何者も寄せつけない絶好調のソロをたっぷりと聴かせます。続くリー・モーガンもリズムに対する自在のノリと溌剌としたモーガン節でリーダーとしての面目を保っていますし、ジャッキー・マクリーンも激情を爆発させるのです。
そういう好演を支えるのがビリー・ヒギンズを核としたリズム隊で、ハービー・ハンコックは弾けていますし、ラリー・リドレイの職人技的ベースソロも全開です。ただ惜しむらくは、ホーン隊とビリー・ヒギンズの対決が無いことでした……。
ということで、これはなかなか良く纏まった作品です。しかしそれ故に、いまひとつ爆発的なところが感じられず、何度か聴くと物足りなくなるのも、また事実です。
まあ、今となっては、そういうライト感覚が閉塞的状況にあった当時の黒人社会にアピールするだろう、というようなヨミで作られたのかもしれない等と、憶測出来るのですが……。
そして冒頭にも書いたように、個人的は車の中で愛聴しています。「A-2」や「B-3」では、つい、アクセル強く踏んじゃいますね。う~ん、安全運転第一です。