OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

モブレーマニア

2006-02-21 19:34:07 | Weblog

雪が融けてきたら、その下からゴミが顔を除かせ始めました。犬のフンまであるんです……。雪は天からの贈り物ですが、それに狡さを隠しちゃイカンのじゃないか? 等と、本日は説教おやじに変身! どうもイカンですなぁ。そこで目立たずに皆をリードする秘訣が楽しめるこの盤を聴きます――

Hank Mobley with Donald Byrd And Lee Morgan (Blue Note)

ハンク・モブレーのリーダー盤ながら、リーダー本人が一番目立たないという、如何にもハンク・モブレーらしいアルバムです。この人はオレが、オレがっ、というのが苦手だったと言われていますが、実際はどうだったんでしょう……? このアルバムを聴くと、全曲がモブレーのオリジナル曲でありながら、さもありなん、という雰囲気です。

メンバーはドナルド・バード(tp)、リー・モーガン(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ホレス・シルバー(p)、ポール・チェンバース(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という、誰が聴いてもハードバップな面々で、その趣向は2人の若手トランペッターの対決を軸にしていることは、言わずもがなでしょう。ちなみに録音は1956年11月25日で、ということは、ドナルド・バードはハンク・モブレーと共にジャズ・メッセンジャーズを辞め、ホレス・シルバーのバンドでバリバリの看板だった頃ですし、方やリー・モーガンはちょうど3週間前に初リーダー・セッションを行ったばかりの若干18歳! つまりお互いに充分張り切ってた状況だったと思われます。その内容は――

A-1 Touch And Go
 如何にもハンク・モブレー作曲らしい景気の良いハードバップで、先発のソロはホレス・シルバーが独自のシンコペーションで燃えあがります。そして続くトランペットソロがリー・モーガンで、いきなりパワー全開で最後までぶっ飛ばしていくのですから、たまりません♪ ところが続くモブレーがやってくれました。というか、なんか心の準備が出来ていないうちに順番が回ってきたというような雰囲気で、モタモタしながらアドリブソロに入るのです。このあたりがなんともモブレーらしいという人が大勢おりますが、私もそう思います。そしてなんとか調子を上げて面目を保つのですが、続くドナルド・バードが溌剌としている分だけ、損な役回りというところです。
 肝心のトランペット勝負は、僅差でリー・モーガンに軍配が上がりそうなところですが、ドナルド・バードも素晴らしいです。そして演奏はベースとドラムスのソロがあって、クライマックスはリー・モーガンとドナルド・バードのソロ・チェンジの一騎打ちで盛上がります。う~ん、本当にハンク・モブレーが目立たないですねぇ……。

A-2 Double Wahmmy
 これもハンク・モブレー作によるアップテンポのオリジナル曲、先発のソロはリーダーとして面目躍如のモブレーが十八番の「節」をたっぷりと聴かせます。そしてそこにトランペット陣によるカッコ良いリフが被さるのですから、気分は完全にハードバップです。
 続くリー・モーガンも個性をしっかり出して絶好調ですが、追い討ちをかけるドナルド・バードは闘志が空回り気味でしょうか……。否、けっして悪くないのですが、リー・モーガンが素晴らしすぎなんでしょうねぇ。しかしクライマックスのトランペット・チェイスではドナルド・バードがリー・モーガンをリードして上手く盛り上げていくのです。そしてここでは本当に曲の良さがくっきりと浮かび上がり、ハンク・モブレーも自己主張をしていたというわけです。

B-1 Barrel of Funk
 タイトルどおりにファンキーな雰囲気が横溢したミディアム・テンポのハードバップです。先発のトランペットはドナルド・バードで、豊かな歌心を存分に発揮します。さらにハンク・モブレーも柔らかな音色にタメのあるフレーズで本当に魅力的♪ なにしろ途中のミストーンまでもアドリブ構成の一部分にしてしまうという裏技まで披露するのですから!
 そして満を持して登場するリー・モーガンがこれまた最高てす♪ リズムに対する自在なノリとフレージングの妙、さらにアドリブ構成の上手さは本当に神童の証明で、特に7分10秒目あたりからコーラス最後のフレーズまでの展開は、何ともいえない味があります。ちなにここでの勝負は引分けかもしれませんが、個人的にはリー・モーガンに座布団1枚♪ リズム隊の堅実なバックアップも素晴らしく、このアルバムの目玉はこの曲だと思います。

B-2 Mobleymania
 当にハンク・モブレー中毒者のための曲というタイトルがニクイです。先発のソロは溌剌としたリー・モーガンで、全力疾走のスピードに満ちたアドリブ展開が素晴らしい限りです。また続くドナルド・バードも淀みないフレーズを積み重ねて痛快です。そしてハンク・モブレーも十八番のフレーズを連発♪ もちろんその3人を煽るリズム隊も快適なクッションを送り出しており、特にポール・チェンバースの地味ながら強靭なベースワークは最高です。

ということで、最初から狙っていたのか、このアルバムはリー・モーガンがとにかく素晴らしく、ドナルド・バードは残念ながら、やや押され気味ではありますが、それでも新進気鋭のトランペッターの対決はモダンジャズの楽しさに溢れています。しかもそれが、単なる派手な音の吹き飛ばし合いになっておらず、各々がアドリブソロの充実さで勝負している点に好感が持てます。

もちろんそのキーマンはリーダーのハンク・モブレーで、けっしてでしゃばる事無く、手綱を締めている雰囲気が、そこはかとなく漂っています。これはなかなか出来ることではありませんが、そこはモブレーの人徳というか、個性というか、本来の性格の表れか……。そのあたりの結論は、皆様がこのアルバムを聴いて後、判定をお願い致します。

コメント
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