OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

白いジャケット、中身は熱い!

2005-12-16 16:35:09 | Weblog

昨日で雪も峠かと書き込んだら、本日は昼前から物凄い雪になってきました。アッという間に駐車場の車が埋まっていきます。ワイパーも動かなくなるほどの重い雪です。

あたり一面、真っ白というこんな日に、私はこのアルバムを聴きます――

Bill Evans The Paris Concert, Edition One (Blue Note)

ビル・エバンスはジャズの真実の巨匠♪ 自らのスタイルを歴史にした偉大なピアニストですから、死後も続々と発掘音源が登場しましたが、その中でも最高峰なのが、このライブ盤です。白いジャケットに気品があって印象的でしょう♪

録音は1979年11月26日で、フランス国営放送局によってラジオ放送用にレコーディングされたものなので、音質は良好♪ 加えて当日のエバンスは気合も充実というか、絶好調です。メンバーはビル・エバンス(p)、マーク・ジョンソン(b)、そしてジョー・ラバーバラ(ds) という最後のレギュラー・トリオです。

演目は当時の定番で、まず1曲目はポール・サイモンが作曲した「I Do It For Your Love」ですが、私は、あえて2曲目の「Quiet Now」から聴くことにしています。何故かと言うと、この曲はエバンス派のピアニストであるデニー・ザイトリンが作ったものなので、エバンスの最もエバンスらしい部分が良く出るというか、出せるように作ってあるのです。そしてそれをエバンス自身が演じるのですから、これはたまりません♪ 最初のワン・フレーズから辺りは完全にエバンス色に染まり、静謐なムードをたたえたテーマが、エバンス派だけのハーモニー感覚で処理されていくその時の流れに、身も心も委ねて後悔することの無い演奏になっています。ビートに対するアプローチとアドリブ・メロディの美しさには絶句です。もちろん、それに寄添いながら絶妙のサポートを展開するジョー・ラバーバラのドラムスも素晴らしい!

続く3曲目はミッシェル・ルグランが作曲した「Noelle's Theme」というのもニクイところで、エバンスはピアノ・ソロでじっくりとテーマ・メロディを独自の美意識で染上げていきますが、スローな展開なのに非常に力強い演奏になっています。

その部分は4曲目の「My Romance」で炸裂します。この曲は1950年代からの定番メニューで、エバンス自身によって多くの名演が残されていますが、このバージョンは最高です。何気ない出だしからブロック・コード弾きでテーマを変奏して行き、ベースとドラムスを呼び込んでからは一気呵成にトリオによる饗宴に突入します。それはまずドラムスとベースの熱い掛け合いからエバンスのピアノがそこに割り込んでいく修羅場が、自在のテンポで演じられるのです。ここではジョー・ラバーバラのブラシによるソロが素晴らしい限りです。ちなみに私はこの人の大ファンで、この人が参加しているアルバムは、ほとんど無条件で入手するほどです。つまり間違いの無いドラマーなんです♪ それはこの演奏を聴いていただければ、ご理解いただけるかと思います。あぁ、何度聴いても熱くなります。そしてスラッと入り込んでくるエバンスのアドリブの鮮やかさ! 名演です!

そして次もハイライト♪ これも私が大好きな曲の「I Love You Porgy」がエバンスの素晴らしいピアノ・ソロで演じられのです。この解釈の美しさ、力強さ、ひとつの音にこめられた情感の深さ……。ジャズの極致だと思います。ただ、聴き入るのみです。

その緊張感を和らげてくれるのが、続く「Up With The Lark」で、ここではマーク・ジョンソンのベースとのデュオで演じられますが、このマーク・ジョンソンが、また素晴らしい! 完全に自分の世界に没頭しているエバンスの尻を、これでもかと叩くような、そして演奏そのものをリードしていくような唯我独尊ぶりを発揮しています。

歴代ビル・エバンス・トリオには夭折したスコット・ラファロを頂点として何人もの優れたベーシストが去来しましたが、マーク・ジョンソンはその中でも特に優れた力量の持ち主だと思います。

この2人のコンビネーションは続く「All Mine」にも受け継がれ、耽美溢れる展開の中で濃密に絡み合うのでした。

もうこのあたりで聴き手は悶絶ですが、それをカラッとした爽快感に変えてくれるのが最後の「Beautiful Love」です。この曲も長くエバンスの十八番になっていますが、このバージョンも何時もながらの突っ込んでいくエバンスのノリを安心して楽しめる出来になっています。もちろん、それというのもマーク・ジョンソンとジョー・ラバーバラの素晴らしいサポートがあるからです。

ということで、これは名盤! 発売されたのは、確か1983年頃で、その時は当然アナログ盤としてエレクトラ・ミュージシャンというレーベルから出たのですが、演奏時間の関係から若干、編集疑惑がありました。ところがCD時代になってそのあたりが解消され、新生ブルーノート・レーベルから再発された時に、名盤として決定的な評価を得たようです。

とにかくエバンスのファンは必ずコレクションしているはずのアルバムですし、これからエバンスをという皆様にも、激オススメの1枚です。ちなみに第2集として「Edition Two」も同時に出ていますが、そちらも最高です。

あぁ、そうでした、割愛していた1曲目の「I Do It For Your Love」を、私は最後の最後に聴きます。鳴り止まない拍手がようやく終了した後、CDならではのプログラム機能でアンコール的に聴くと、これが心に染み入るのでした……。

コメント
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