OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

昼飯後の1枚

2005-12-13 17:27:28 | Weblog

昨日あたりから激しい雪になってきました。いよいよ、冬ですねぇ。もうすっかり雪国の冬には慣れたつもりですが、いたるところで交通事故が多発していますから、用心・用心です。つまりノロノロ運転も必要ということで、車内では音楽が欠かせません。

あと、昼飯時間には必ず何か聴いて、これを書くのも習慣になりました。ということで、本日の1枚は――

Emerson,Lake & Palmer (Island)

ビートルズが無くなって、クイーンが登場する前までのブリティッシュ・ロックでは、ゼップ、パープル、そしてエマーソン・レイク&パーマー=ELPが3大バンドで、別格としてキング・クリムゾンというのが、日本での人気度だったように思います。

もちろんストーズ、フー、ピンクフロイドあたりも人気ありましたが、彼等はどちらかといえば1960年代からの大御所、悪くいえば生き残りで、やや新鮮味が乏しかったのです。

で、ELPの何が新しかったかというと、演奏の主体がキーボードで、それまでの一座のヒーロー的なエレキギタリストが居ないというバンド構成、つまりジャズで言うところのピアノトリオでロックを演じたわけです。もちろんキーボードはシンセやオルガンも存分に使っていました。

しかもメンバーが元ナイスのキース・エマーソン(key)、元キング・クリムゾンのグレッグ・レイク(vo,b)、そして元アトミック・ルースターのカール・パーマーという剛の者でしたから、たまりません。発売されたのは1970年末ごろですが、日本では翌年発売だったような……。

ただし告白すると、私はこのアルバムが出た当時、キース・エマーソンがいたナイスというバンドは聴いたことがありませんでしたし、アトミック・ルースターなんて、名前も知りませんでした。ただし、グレッグ・レイクだけは、キング・クリムゾンで感動の名曲「エピタフ」を歌っていた人ということで、大いに気になっていたのです。

という情報をあって聴いたこのアルバムは、まったくそれまでのロックでは無い、クラシックもジャズも現代音楽も包括した本当のプログレという内容でした。ただしA面1曲目の「未開人」の出だしは、これってファズギター? というような響きが入っていて、恐らくシンセかエレキベースにファズを掛けたもんでしょうか、しかし、それを打ち消すように始まる熱いオルガンと重たいドラムスの対決は強烈でした。

曲のリフはクラシック? どうやらバルトークの曲をモチーフにしているらしいとか? 中盤からは生ピアノ主体の演奏にカール・パーマーがブラシで応戦していきますし、最後にはまた重たい展開になるという、当時の私には、何か分からないけれど、凄そうだ……。というのが感想でした。聴いているうちに圧倒されてしまうんですねぇ。カール・パーマーのドラムスが、とにかくド迫力!

ところが2曲目の「石をとれ」はグレッグ・レイクが歌う静謐なフォーク系の曲になっていて、こちらはもちろんクリムゾンの「エピタフ」の夢よ、再び状態です。キース・エマーソンの生ピアノも素晴らしく、間奏は完全にピアノ・トリオでジャズになっていきますが、クラシックの要素も残しているので、作り物感覚が横溢し、主題から逸脱しないのが上手いところです。そして次はグレッグ・レイクの生ギターのパートになり、和んだところで、再びキース・エマーソンの生ピアノでジャズっぽくいくあたりは、緊張感があって最高です。クライマックスで絡んでくるグレッグ・レイクのベースとカール・パーマーのドラムスも充分にジャズを消化しているので、イヤミではありません。

そしてA面ラストの「ナイフ・エッジ」はハードロック感覚が噴出し、バンドは暗闇を突進するのです。ここでも重くて歯切れの良いカール・パーマーのドラムスが全体を支えていますが、キース・エマーソンのオルガンも、なかなか聴かせます。

B面に入っては、まず組曲形式で演じられる「運命の三人の女神」が圧巻です。最初っから大袈裟なパイプオルガンが響きわたり、それはもちろんクラシックのイメージですが、そこからソロ・ピアノに展開され、ジャズになったり現代音楽になったりしながら、トリオの演奏へと繋がるのです。この部分でもカール・パーマーが大暴れで、タイトなリズムとセンスの良いオカズの入れ方が最高です。このあたりはアドリブというよりは、激しいリハーサルの果てに組みあがったものかもしれません。かなりカッチリとした演奏になっているので、聴いていて疲れることは否定出来ません。

それは続く「タンク」でのカール・パーマー大爆発で頂点に達します。アンサンブルでのトリオの息の合いかたも完璧ですが、疲れます、聴いていて……。

それが癒されるのが最後に収録されている「ラッキーマン」で、グレッグ・レイクの生ギターを中心としたほのぼの調の歌が、妙な感動を呼びます。「う~、彼は幸せな奴だった」というリフレインと厚みのあるコーラス、スネアを主体のドラムスが、何となくクリムゾンしていたりもします♪ 大団円でのシンセがシツコイですが、そこはクセになりますよ。

ということで、このアルバムは出来すぎ、作りすぎではありますが、静と動、疲れと安らぎがバランス良く配合された奇跡の1枚だと思います。イノセントなジャズ・ファンもけっこう聴けるロックアルバムではないでしょうか?

昼飯後に聴くと、気分が最高です。

コメント
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