OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

白い地獄に熱いジャズ

2005-12-18 18:24:40 | Weblog

今日は本当に地獄見ました、白い地獄です。

朝から辺りは真っ白というか、猛吹雪でホワイトアウト状態……。車を掘り出す除雪はスノーダンプという大きなソリの様な道具を使うのですが、雪を乗せてこれを押すのは重労働で、ほとんど相撲の朝稽古です。ヘトヘトですよ……。

で、ようやく出発すると道路は除雪が間に合わないほど、雪に埋もれていますし、視界が悪くてノロノロ運転も恐いほどです。ここを歩いたら、完全に「八甲田山」の世界です。

ということで、本日は熱い、景気の良い1枚を――

A Blowing Session / Johnny Griffin (Blue Note)


瞬間芸が持ち味のジャズですから、とにかくアドリブの饗宴が上手くいけば名演になるかといえば、それは、否、だと思います。やはりそこに、纏め役というか、強力なリーダーが存在しなければ、ただの独り善がりで終わるのが、ジャズの恐さというものでしょう。

で、このアルバムは、リー・モーガン(tp)、ジョニー・グリフィン(ts)、ハンク・モブレー(ts)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、そしてアート・ブレイキー(ds) という、ウルトラ級のメンツで録音され、一応、ジョニー・グリフィンのリーダー盤として発売されたのですが、これが混乱の極みというか、全員が縺れてしまった問題作だと、私は思います。

録音されたのは1957年4月6日、まず、A面1曲目はモダンジャズの定番曲「The Way You Look Tonight」が、定石どおりに高速で演奏されますが、このバージョンは早吹き王のグリフィンが十八番とあって、尚一層、猛スピードになっています。それはテーマから最初のアドリブ・パートを一気呵成に駆け抜けるグリフィンの一人舞台と言えるほどですが、他のメンバーも負けていません。続くリー・モーガン、ハンク・モブレーが必死に追走していますし、コルトレーンも得意のシーツ・オブ・サウンドで夥しい音符を放出しています。

しかし、それだけの演奏です。つまり、リズム隊とのコンビネーションが上手くいっていませんし、聴き手の前を高速で通り過ぎる新幹線的なやりとりは、和めません。

そのあたりを鑑みて、最後のパートではアート・ブレイキーとグリフィンの対決やウイントン・ケリーとの絡みも聞かせますが、疲れます、正直言って……。

2曲目はグリフィンのオリジナルでファンキーな「Ball Bearing」ですが、ここでは先発のコルトレーンが、この曲をどう解釈していいのか迷ったように縺れます。その酩酊を上手く処理して現実に引き戻すのが、続くリー・モーガンの溌剌としたソロですが、三番手のグリフィンが全く独り善がりをやって、またまた演奏が混迷していきます。そしてリズム隊も完全にバラバラになりかけるのです。さらにハンク・モブレーまでもが、いつものペースを崩してコルトレーン調をやってしまい??? まったく落ち着かない演奏です。

B面のトップはスタンダード曲「All The Things You Are」がアップテンポで演じられますが、これもグリフィンの十八番とあって、テーマを独り悠然と歌い上げるところは流石に和みます。しかしそことアドリブ・パートのバランスの悪さは全く遺憾です。続くコルトレーンも好き勝手にやっているだけのように聞こえます。ただしリー・モーガンはマイペースながら、演奏そのものを大切にしていて好感が持てますし、次にハンク・モブレーが出てくるあたりでは、ブレイキーのドラムスも絶好調でジャズ・メッセンジャーズを想起させてくれます。

あぁ、そうか!♪ このアルバムはブレイキーをリーダーとして、つまりジャズ・メッセンジャーズの作品として聴けば良いわけねっ♪ するとどうでしょう、これまで雑と思われてきた演奏が、急にイキイキと♪

こうして覚悟が出来てみると、オーラスのブルース「Smoke Stack」が爽快に聴こえてしまいます。ウイントン・ケリーの颯爽としたイントロに導かれたテーマ・リフの楽しさからグリフィンがグルーヴィにジャズ魂を爆発させます。もちろんブレイキーとのコンビネーションもバッチリ♪ そして続くリー・モーガンも何時もの調子でリズムに対する自在のノリを聞かせますし、モブレーはやや縺れ気味ですが、ここではブレイキーの煽りが強烈です。しかし残念ながら次のコルトレーンが思い余って技足りず状態……。それでも執拗に突っ込んでいくリズム隊は最高です。これがハードバップです!

ということで、これは裏メッセンジャーズの作品として聴きましょう。実際、グリフィン、モーガン、モブレーは歴代メッセンジャーズのレギュラーとして活躍したわけですし、あらためてブレイキーのリーダーシップの凄さに最敬礼の1枚です。

コメント
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