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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

もうひとつのビル・エバンスとジム・ホール

2010-04-08 15:38:59 | Jazz

Intermodulation / Bill Evans & Jim Hall (Verve)

最近、少しずつジャズモードへ戻りかけている自分を感じます。

で、そんな気分で取り出した本日の1枚が、ビル・エバンス(p) とジム・ホール(g) の再会盤というか、実はふたりの共演はレコードだけでも相当に残されているわけですから、あえて「再会」というのは相応しくないのですが、やっぱり超絶の名盤「アンダーカレント(United Artists)」でやってしまった奇蹟のデュオ演奏があるかぎり、その夢よ、もう一度はファンの願いでもありました。

そして美しき二番煎じを狙って作られたのが、このアルバムの目論見なのは、誰もが強く感じ、期待するところでしょう。ちなみに録音は前述の「アンダーカレント」から4年ぶりの1966年4&5日というのも絶妙のタイミングだと思います。

A-1 I've Got You Under My Skin
 コール・ポーターが書いたお馴染みのスタンダード曲ですが、おそらくはビル・エバンスにとっては初めてレコーディングした演目かもしれません。
 その所為でしょうか、まずはジム・ホールのギターが自然体でアドリブを始めるのが演奏のスタート!?! その歌心に満ちたフレーズの連続とビートを外さないリズム感は流石の一言ですし、続くビル・エバンスが、これまた十八番のアドリブフレーズから原曲メロディを忘れさせないラストテーマへの持って行き方は、至芸の極みだと思います。
 もちろんお互いのソロ&伴奏のコントラストとバランスは秀逸で、ふたりが頑固に自らのハーモニー感覚を譲らないコードワークにも耳を奪われるのでした。

A-2 My Man's  Gone Now
 これもご存じ、ガーシュインの黒人オペラ「ポギー&ベス」からの有名曲ですから、ビル・エバンスも薬籠中のハーモニーを用いた、実に優しいパラード解釈を聞かせてくれます。
 あぁ、この安心感は絶対ですよねぇ~~♪
 寄り添うジム・ホールも完全に分かっている姿勢が好ましく、ゆったりした流れの中に適度な緊張感を演出し、またアドリブではハートウォームな音色とフレーズの魔法を披露しています。

A-3 Turn Out The Stars
 晩年までビル・エバンスの定番演目になっていたオリジナルで、確か他界した父親に捧げた曲だったとか、インタビュー記事で読んだ記憶がありますから、尚更に心に染みいるエバンス節だけの展開が素晴らしいと思います。
 それはピアノによる独白からジム・ホールの卓越した伴奏を得て、グッと内向きな情感がジワジワと表に滲み出ていく過程が実に美しく、ジャズ的なスリルに満ちているのです。
 ちょっと聴きには地味かもしれませんが、出色の演奏じゃないでしょうか。
 当然ながらジム・ホールも好演♪♪~♪

B-1 Angel Face
 B面に入っては、アッと驚くジョー・ザビヌル作のスローバラード!?!
 当時の作者はキャノンボール・アダレイのバンドに在籍中でしたから、おそらくオリジナルバージョンはその諸作に入っているんでしょうが、勉強不足で私は知りません。
 ただ、ここでの演奏を聴いていると、丸っきりビル・エバンスの為に書かれたかのような印象が強く、ジェントルで幻想的な曲メロがジム・ホールとの共謀関係によって、尚更に膨らみのあるものへと昇華されたと感じます。
 ちなみにビル・エバンスは後のソロピアノアルバム「アローン(Verve)」でもジョー・ザビヌルの名曲「Midnight Mood」を演じていましたが、案外と気の合う仲間だったのかもしれませんね。

B-2 Jazz Samba
 作編曲家のクラウス・オガーマンのオリジナルですが、ビル・エバンスは前年に作った共演アルバム「ウイズ・シンフォニー・オームストラ」で既に弾いていました。ですから、ここでのアップテンポの演奏においても、怯むことのないメロディフェイクやノリの良いアドリブフレーズの連続技が冴え過ぎて、あまり「らしくない」結果になってしまったような……。
 しかしジム・ホールのコードカッティングは、前述した「アンダーカレント」の中の大名演「My Funny Valentine」を強く思い出させるものとして、ファンには嬉しいプレゼント♪♪~♪ アドリブソロは無くとも、大満足だと思います。

B-3 All Across The City
 オーラスはジム・ホールのオリジナルで、そこはかとない雰囲気が横溢していますから、如何にもこのふたりにはジャストミート!
 そして実際、気分はロンリーな美しいコード感覚を大切にしたビル・エバンス、自作の強みを活かしきったジム・ホールの素晴らしいコラボーレーションが決して強すぎる緊張感にならず、和みの世界を構築していくのです。
 ただし、それゆえに前述した「アンダーカレント」よりも名盤度数が落ちるという結果論がつきまとうのですが……。

ということで、私にしても「アンダーカレント」よりも一段落ちるという感想は否定出来ません。決定的に異なっているのは、クールな緊張感の足りなさかもしれないのです。

しかしビル・エバンスにしても、ジム・ホールにしても、そうそう何時もガチンコの「アンダーカレント」は作れないことが分かっていたのかもしれません。そしてこのアルバムセッションでは、別な方向性を目指していたんじゃないでしょうか?

個人的には、そう思いたいです。

何故ならば、このアルバムだって余人が到達出来る境地ではありませんし、もしも「アンダーカレント」が無かったら、傑作扱いになっていたはずなのです。

だから私は、時折に聴く時、意識過剰になるのかもしれません。

あぁ、不幸すぎる名盤!?!

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個人的モードジャズの洗礼

2010-04-02 17:35:33 | Jazz

Hino = Kikuchi Quintet (Takt)

昭和40年代の我国大衆音楽はエレキからGSブームへと続く、つまりはロックの時代へと入っていったわけですが、まだまだモダンジャズもイカシた流行でした。

例えばトランペッターの日野晧正は、そのスタイリッシュな雰囲気とシャープな演奏が実にカッコイイ代表選手でした。そして自らのバンドを率いてのテレビ出演も多く、そこで短くはありましたが演奏されるジャズロックやミステリアスなモダンジャズは、単にジャズファンばかりか、多くの女性をも虜にしていたようです。

もちろん音楽的な先進性は言わずもがなで、本日のご紹介はちょうどその頃に組んでいたピアニストの菊池雅章との双頭バンドによるアルバムです。

録音は昭和43(1968)年8月22&30日、メンバーは日野晧正(tp)、村岡建(ts)、菊池雅章(p)、稲葉国光(b)、日野元彦(ds) という精鋭クインテットなんですが、実はセッション当時には菊池雅章の渡米により、バンドは解散した後だったと言われています。

そしてこれは私の推察に過ぎませんが、おそらくはレコーディングの契約もあったのでしょうし、このバンドが世界最先端のモダンジャズをやっていた記録として、残される価値が十分にあったということだと思います。

で、それはスバリ、黄金のクインテットと称されていた同時期のマイルス・デイビスのレギュラーグループに端を発する、所謂新主流派!

率直に言えば菊池雅章はハービー・ハンコック、村岡建はウェイン・ショーター、稲葉国光はロン・カーター、日野元彦はトニー・ウィリアムス~ジョー・チェンバース、そして日野晧正はフレディ・ハバードという置換が実現されているのです。

しかも収録曲は全てが菊池雅章のオリジナルですが、今となってはマイルス・デイビスやハービー・ハンコックのリーダー盤で聞かれる味わいが、パクリを超えた愛情コピーとして、思わずニヤリの瞬間が!?!

A-1 Tender Passion
 これは丸っきりブルーノートの新主流派がモロ出し!
 何の曲かは申しませんが、今となっては耳に馴染んだモードの構成が心地良いと思います。それがパクリだとしても……。
 しかし、そういうことを言ってしまったら、モダンジャズの演奏家は全てがチャーリー・パーカーのパクリから逃れられないわけですし、その中で如何に素晴らしいアドリブや演奏をやるかが、瞬間芸のジャズでは個人技の披露の場でしょう。
 ここではクールな菊池雅章や村岡建、躍動的な日野元彦、頑固な稲葉国光、そして陰影豊かな日野晧正の各々が熱演で、その研究熱心さは感動的かもしれません。

A-2 Ideal Portrait
 これもアッと唸ってしまう、マイルス・デイビスのあの曲のパクリなんですが、そのスローでミステリアスなムードをここまで再現してしまうバンドの実力派は侮れません。というか、当時の世界的なレベルからすれば、我国のミュージシャンがここまでやっていたという事実に、今は驚くばかりです。
 そこでは日野晧正も村岡建も、素直に神妙ですが、リズム隊の三者が相当に自由度の高い中での纏まりが実に秀逸だと思います。

B-1 Long Trip
 これまたマイスル・デイビスのクインテットでウェイン・ショーターが自作自演した良い部分だけを抽出したというか、思わず苦笑いというのが正直な気持なんですが、ここでの演奏の本気度の高さは凄いものがあると感じます。
 特に日野兄弟のハッスルぶりは特筆ものでしょうねぇ~♪

B-2 H. G. And Pretty
 ハービー・ハンコック~ウェイン・ショーター路線のモード系ブルース大会!
 ということは、必然的にクールで熱いムードが横溢すると思わせながら、ちょいと手さぐりの状況が何とも深いんでしょうか……。
 まあ、それもこれも、今となってはモダンジャズの真の名盤をどっさりと聴いてしまった後の感想で、実は告白すると、このアルバムは当時、我が家に下宿していた叔父さんが所有していたので、その頃は中学生だったサイケおやじも一応のリアルタイムで聴いていました。つまりマイルス・デイビスや子分達が出していた傑作群を聴くより以前に、この日野晧正&菊池雅章クインテットの洗礼を受けてしまったというわけです。
 そしてテレビで日野晧正を見ていた所為もあって、モダンジャズって、分からないけど凄くカッコイイ! なんて、独りで納得していたのです。
 ちなみに叔父さんは、このクインテットの当時のライプを体験していたらしく、そこではレコードよりも熱くて荒っぽい演奏が凄かった! と話してくれました。

ご存じのように日野晧正はこのアルバムが世に出た頃には自らの新しいバンドを率い、さらに電化したジャズロックをやっていました。それは人気盤「ハイノロジー」の発売、ロックミュージャンも顔負けのファッションに身を包み、所謂ヒノテルブームの大ブレイクだったのです。

一方、菊池雅章はアメリカ留学を経て後、自己のグループで活動していくのですが、これまでにも2人の競演盤が幾つか残されているとおり、切っても切れないジャズ的な繋がりがあるのでしょう。

ところで、私が今、聴いているのは、既に10年ほど前に出た紙ジャケット仕様のCDなんですが、これをゲットしたのはボーナストラックで1曲だけ、ライプ音源が入ってるからです。

※CDボーナストラック
 H. G. And Pretty
(live)
 録音は昭和43(1968)年6月27日ですから、このアルバムセッションが行われる前のリアルな活動時期でした。メンバーは前述の5人に実力派の鈴木弘(tb) が加わった、なんと15分を超える爆裂演奏!
 音質もステレオミックスされた良好なものですから、当時のクインテットが如何に熱気に満ちたていたかを追体験出来ますよ。

ということで、1970年代になると、このあたりの日本のジャズは「真似っこ」と決めつけられ、不必要に貶されていたものです。しかしサイケおやじにとっては少年時代に最先端のジャズに触れた数少ない機会のひとつとして、このアルバムが忘れられないのでした。

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チェット・ベイカーとスタン・ゲッツ、何時もやつ!

2010-02-09 15:43:51 | Jazz

Chet Baker & Stan Getz Live In Stockholm 1983 (Oh!vation = DVD)

久々のジャズネタは先日ゲットしてきたDVDのご紹介です。

主役は白人ジャズの頂点を極めたスタン・ゲッツとチェット・ベイカーという、永遠の人気者が共演ライプですから、ワクワクさせられるのはジャズ者の宿命でしょう。

しかし最初に告白しておきますが、サイケおやじは1970年代末頃からのチェット・ベイカーはNGなのが本音です……。いや、もっと言えば、あの輝かしい1950年代中頃までを聴いているだけでも満足してしまうという、偏向したファン故に、このソフトにも相当な悪い予感を抱いていました。

それが実際に鑑賞してみると、吃驚するほどモダンジャズの魅力がいっぱい♪♪~♪

実はこのソース、以前から有名なもののひとつとして、音源だけはLPやCDで幾つも出回っていましたが、映像がこれだけきっちり纏められたのは最初かもしれません。

そして、それだからこそ良かったというか、ご存じのとおり、この時期のチェット・ベイカーは往年の美青年の面影なぞ全く無い、見るからに不健康な佇まいと尚更に中性的になったボーカルのアンバランスが怖さを誘うというのが、サイケおやじの先入観でしたから、結果的にこの映像作品に記録された自然体のジャズ魂が不思議な感動を呼び覚ますのでした。

収録は1983年2月18日、ストックホルムでのライプセッションで、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、ジム・マクニーリィー(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ビクター・ルイス(ds) という強力なカルテットにチェット・ベイカー(tp,vo) が特別参加した魅惑のグループ♪♪~♪

01 We'll Be Together Again (Stan Getz Ouarter)
02 I'll Remember April (Stan Getz Ouarter)
 この2曲はスタン・ゲッツがメインの演奏ですが、流石は実力派のリズム隊とあって、スタン・ゲッツも安定感のある堂々の吹奏を聞かせてくれます。それはスローな「We'll Be Together Again」でのジェントルな表現、アップテンポの「I'll Remember April」では躍動感溢れる十八番の展開を堪能させてくれるという、まさに王道の二本立て♪♪~♪
 しかし個人的には、それ以上にシビレたのがジム・マクニーリィーの真摯なピアノで、特に「We'll Be Together Again」では完全にバンドをリードする存在感! 自身のソロパートから演奏を終了に導く手際の素晴らしさは秀逸ですよ。ちなみにスタイル的にはエバンス派でしょうが、当然ながらチック・コリアやハービー・ハンコックの影響も取り込みつつ、地味な個性を確立されているのが好印象です。
 また軽く叩いているのにビートの芯が強いビクター・ルイスのドラミング、自己満足と協調のバランス感覚が好ましいジョージ・ムラーツも、侮れませんねぇ。

03 Just Friends (Quitet)
 ここからはスタン・ゲッツのMCに導かれ、いよいよチェット・ベイカーが登場しますが、マイクにぴったり張り付いて寝言のようなボーカルを聞かせてくれる姿は、やはり先が思いやれるのが本音でしょう。しかもスキャットに入っても、意図的かもしれませんが、時折の調子っぱずれとか……。
 しかし段々と調子を上げていく感じがスリルに結びつくと言えば、それは贔屓の引き倒しでしょうか。流石のリズム隊の素晴らしいサポートがありますから、それはそれでジャズを楽しむポイントのひとつだと思います。
 う~ん、ジム・マクニーリィーが良いぞっ♪♪~♪
 ですからチェット・ベイカーのトランペットがアドリブを始めてからのスタン・ゲッツの心配顔が少しずつニンマリしていく様子も、映像作品ならではのお楽しみでしょう。実際、このパートは悪くありませんし、もちろんスタン・ゲッツのアドリブソロに絡んでいくチェット・ベイカーのトランペットも存在感がありますよ。
 いゃ~、ジャズって、やっぱり良いですねぇ~~♪ 

04 My Funny Valentine (Quitet)
 そして始まるのが、これまたチェット・ベイカーでは十八番の中の人気演目!
 それゆえに、常に名演が期待されるわけですが、ポケットに手をつっこんだ姿で地味に歌う本人の佇まいは、良くも悪くもジャズプレイヤーとしての生き様を貫いたチェット・ベイカーそのものだと感銘を受けるほどです。
 もちろん歌と演奏は、先入観が覆されるほどに味わい深いです!
 そして素晴らしいトランペットのアドリブを聞かせてくれた終盤、おそらくは予定外だったのでしょうか、スタン・ゲッツがチェット・ベイカーの耳元に何か囁いた後、これまた素晴らしいテナーサックスを聞かせてくれるんですよっ!
 これを鑑賞出来ただけで、私はこの復刻に感謝しています。

05 Sippin' At Bells (Quitet)
 こうして完全に良い雰囲気になった会場に鳴り響くのが、マイルス・デイビスが書いたことになっているビバップの定番曲ですから、ここはウエストコースト流儀のハードバップが復活の狼煙!
 息の合ったテーマ合奏から流れるようなスタン・ゲッツのアドリブプレイは、やはり華やかにしてモダンジャズの王道を行くものですし、流石のリズム隊も引っ張られるようにスイングしていく様が痛快です。
 そして続くチェット・ベイカーが意想外の安定感ならば、ジム・マクニーリイーはモード節も交えた直球勝負! またジョージ・ムラーツのスジの通ったベースも好ましく、アドリブでの相当にアグレッシプな展開もビクター・ルイスの小技のシンバルワークを駆使したドラムソロに繋がるのですから、結果オーライでしょう。
 たまらず入っていくスタン・ゲッツも貫録ですよ。

06 Blood Count (Stan Getz Ouarter)
 これは嬉しい、スタン・ゲッツが静謐なパラードフレイで会心の歌心を披露した名演です。そして映像では、じっと聞き入るチェット・ベイカーの表情がアップになったりして、なかなか意味深な構成が、ジャズ者の気分を妙に高揚させるでしょう。
 リズム隊の的確なサポートは言わずもがな、丁寧に感情移入するスタン・ゲッツのこの時期の好調さが確認出来ると思います。もちろん客席からの拍手は鳴りやみません。

07 Milestones (Quitet)
 これもマイルス・デイビスのオリジナル曲ですが、有名なモードの方ではなく、それ以前に書かれたビバップバターンですが、それを穏やかな白人ジャズに翻案していくバンドのグルーヴが、実に快適です。
 特にテーマ合奏が終る寸前のスタン・ゲッツのアクションに呼応してアドリブをスタートさせるチェット・ベイカーのハートウォームなムードが最高っ! ですから、幾分のモタツキが散見されたとしても、リラックスしたモダンジャズの魅力が横溢するのです。
 そうしたところはリズム隊の適度に弛緩したノリにも伝染し、そのユルフン感が曲者♪♪~♪ あぁ、ジム・マクニーリィー、集めようかなぁ~♪
 と覚悟を決めそうになった次の瞬間、スタン・ゲッツが唯我独尊の個性的な歌心で待ったをかけるのですから、いゃ~、本当にたまらんですねぇ~~♪

08 Airgin (Quitet)
 これまた有名過ぎるソニー・ロリンズが書いた迫力のビバップ定番曲ということで、激しいリズム隊の煽りを受けたフロントの2人が初っ端から大ハッスル!
 しかも、まずはリズム隊に花を持たせるお膳立てがニクイばかりで、実際、演奏がグイグイと白熱したところで、ハッと我に返ったようにソロパートをスタートさせるチェット・ベイカーが、映像作品ならではの緊張感で高得点! アドリブそのものも、必死の追走という熱気が良い感じですよ。
 またスタン・ゲッツのハードにドライヴしまくったテナーサックスも鳴りが良く、もちろんアドリブフレーズも黄金の手癖を大サービス♪♪~♪ 残念ながら往年の浮遊感はあまり感じられませんが、真っ向勝負の姿勢は潔いんじゃないでしょうか。
 演奏はこの後、ビクター・ルイスのカッコ良いドラムソロから、トランペッとテナーサックスの絡み、そしてテーマ合奏というスリルが提供されて、これが一応の大団円になっています。

09 Dear Old Stockholm (Quitet)
 一端、ステージを退いたバンドが再び登場して演奏するのは、この会場で、これが出なければ収まりがつかない人気演目♪♪~♪ もちろんスタン・ゲッツの吹奏はハートウォーム優先主義ながら、随所に往年のクール節を滲ませるというベテランの上手さ♪♪~♪
 またチェット・ベイカーは、なんとマイルス・デイビス風の味わいをやってしまう禁じ手を披露するのですから、憎たらしいですよ♪♪~♪
 というか、ある時期に限ってはマイスル・デイビスよりも、チェット・ベイカーが好きな私ですからねぇ~♪ こんなところで、それが堪能出来ようとは、長生きはするもんです。最高っ!

10 Line For Lyons (Chet Baker & Stan Getz)
 オーラスは再度のアンコールに応えたという企画でしょうか、チェット・ベイカーとスタン・ゲッツのデュオで演じられる和みの一時♪♪~♪ あぁ、この安らぎとクールな余韻がたまりませんねぇ~♪

ということで、チェット・ベイカーの予想外の好調さによって、なかなか楽しめる復刻作品でした。

しかし欲を言えば、この時代の映像にしてはリマスターが甘く、またベースやドラムスに音の迫力が足りません。しかも音量を上げるとヒスノイズが目立ってくるのは減点です。

それでも個人的には「チェット・ベイカーのジャズ」という、刹那の極致に接することが出来ましたから、けっこう何度も鑑賞してしまいました。

ご存じのとおり、この人気スタアは悪いクスリに溺れ、それはこのライプの時点でも同じだったわけですから、それを購うための仕事だったのは疑う余地がありません。しかし、それでも良い演奏をやってくれればファンは満足だし、そんな私生活を云々するよりは、現実の姿を受け入れることもファンの悲喜こもごものひとつかと思います、

そのあたりも飲み込んで、虚心坦懐に楽しめば、このDVDは末長く楽しめる作品になるんじゃないでしょうか。

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オリバー・ネルソンの痛快ライブ!

2010-01-07 12:00:48 | Jazz

Live From Los Angeles / Oliver Nelson's Big Band (Impulse!)

1960年代に台頭したジャズ系のアレンジャーの中で、オリバー・ネルソンは一際カッコ良い作編曲で人気を集めました。とにかく分かり易くて痛快、グルーヴィでシャープなフィーリング、そして何よりもモダンジャズの保守本流を大切する姿勢がジャズ者の心を掴んだわけですが、もちろん広く大衆的な部分も兼ね備えていたのですから、ジミー・スミスやウェス・モンゴメリー等々、超一流プレイヤーのリーダー盤や多くの有名歌手へのアレンジ提供とヒット作作りへの貢献は言うまでもありませんでした。

そしてもちろん、自身のリーダー作品にしても、あの超絶の名盤「ブルースの真実(Impulse!)」を筆頭に、粒揃いのアルバムが幾つもあって、中でも本日ご紹介の1枚はジャズ喫茶の人気盤にして、学生バンドの聖典ともなった傑作です。

録音は1967年6月2~4日のロスンジェルス、「マーティズ・オン・ザ・ヒル」という店でのライプセッションで、メンバーはバディ・チルダーズ(tp)、コンテ・カンドリ(tp)、ボビー・ブライアント(tp)、フレディ・ヒル(tp)、ビリー・マイヤーズ(tb)、ピート・メイヤーズ(tb)、フランク・ストロジャー(as,ts)、トム・スコット(as,ts)、ビル・パーキンス(ts,bs)、ジャック・ニミッツ(bs)、フランク・ストラッゾーリ(p)、モンティ・バドウィッグ(b)、エド・シグペン(ds) 等々の実力派を擁したビッグバンドに、プロデューサーのボブ・シールが当時発見してきた黒人ギタリストのメル・ブラウンも加わっていますが、なによりもオリバー・ネルソンの作編曲と指揮が冴えまくりです。

A-1 Miss Fine
 ノッケからグルーヴィなムードが横溢した快演で、ちょいとカウント・ベイシー楽団を意識しまくったメロディリフやリズムアレンジがニクイところです。しかもトランペットでアドリブを演じるフレディ・ヒルが、これまた意識過剰ですから、たまりせん。
 肩慣らしとしては、あまりにも贅沢な名演じゃないでしょうか。とにかく聴いているうちに腰が浮くというか、ウキウキしてくるジャズ本来の魅力にどっぷりと惹きこまれてしまいます。

A-2 Milestones
 そして始まるのがマイルス・デイビスのオリジナルにして、モードジャズ聖典曲の痛快天国! 例の気持良すぎる音列が圧倒的なスピード感とシャープなアンサンブルで提示された後は、フランク・ストロジャーとトム・スコットが丁々発止のサックス合戦!
 ちなみにトム・スコットは後年、ミスター・ワンテイクと尊敬されるスタジオセッションの大名人となるのはご存じのとおりですが、この当時は本当に駆け出し時代ながら、既にオリバー・ネルソンに見い出されてインパルスと契約する寸前の頃とあって、そのプレイは荒っぽい中にも、なかなかモダンジャズのツボを掴みきった熱い吹奏には好感が持てます。
 もちろんそれをバックアップするリズム隊の安定感、バンドアンサンブルのスリルと興奮度の高さは言わずもがな、ついついアンプのボリュームを上げてしまうのでした。

A-3 I Remember Bird
 チャーリー・パーカーに捧げられた、これまたグルーヴィなジャズオリジナル曲ですから、メインで吹きまくるフランク・ストロジャーのアルトサックスが大ハッスル! オリバー・ネルソンのアレンジも原曲のムードを大切にした彩りが秀逸です。
 ちなみにこの曲はフィル・ウッズも十八番にしていますから、その聴き比べも興味深いところだと思います。

B-1 Night Train
 ここでいよいよ期待の新星ギタリストだったメル・ブラウンが登場! しかも演じられるのが、以前にオリバー・ネルソンがアレンジを担当したウェス・モンゴメリーとジミー・スミスの競演盤「ジミーとウェス(Verve)」で名演が残された人気曲ですから、同じアレンジが使われているのは言わずもがな、いろんな意味でたまらないものがあります。
 グイノリのリズムアレンジと豪快なフルバンドの魅力が見事に一体化した演奏の中でアドリブソロに没頭するのは、メル・ブラウンが唯一人! それはグラント・グリーンをさらに俗っぽくしたような、実にR&Bとモダンジャズの折衷スタイルということで、ちょっとぱかり気恥ずかしくなるのがジャズ者の本音かもしません。
 ですからジャズ喫茶の人気盤でありながら、中にはB面のリクエストが「お断り」になっていた店もありましたですね。
 しかその場の観客のウケも良いですし、バンドの面々も含めて、メル・ブラウンの一生懸命な姿勢には、かなりの好感を覚えてしかるべきものがあると思います。

B-2 Guitar Blues
 それがさらに凝縮されたのが、このオリバー・ネルソンのロックジャズなオリジナル♪♪~♪ もう完全にメル・ブラウンのスタイルを活かすべく書かれたソウルフルな曲調が、極めて強いロックビートで演じられるあたりは、これまた面映ゆい感じです。
 ただし、そのものズバリの曲タイトルにも象徴されるその姿勢は潔く、なかなか楽しい岐キメのリフはオリバー・ネルソンの真骨頂ですし、メル・ブラウンのギターには自らが楽しんでいるような歓喜があって、賛否両論の中にも、ついついノセられてしまいます。

B-3 Down By The Riverside
 これまた前述した「ジミーとウェス(Verve)」で演じられていた人気曲の再演として、もちろん同じアレンジが使われていますが、ここではバンドの4人のトランペッターが火の出るようなアドリブ合戦を繰り広げ、完全なるクライマックスを演出しています。
 あぁ、こういう素直に興奮を煽るような演奏って、1967年の最先端モダンジャズの現場では珍しかったような気が、これまでに残されている所謂「歴史的な名盤」ばかりを聴いていては、そう思うばかりです。
 しかし現実のライプステージとか、お客さんを前にした現場では、当たり前だったんでしょうねぇ~。悩んで聴く、なんていうのは我国のジャズ喫茶だけが率先して、そのムードに浸りながら喜んでいた現象なのかもしれません。例えそれが、昭和のジャズ喫茶全盛期の様相だとしても、こういうストレートに熱い演奏の前では、なんとなく虚しいものに思えてしまいます。

B-4 Ja-Da
 これはオーラスのバンドテーマというか、ジャケットに記載された解説によれば、セッションが録音された店の「マーティズ・オン・ザ・ヒル」では、出演者が必須の曲だったそうです。ちなみに誰もが一度は聞いたであろう、あの和みのメロディが、ここでは尚更のゆとりで演奏されていますよ。

ということで、実に痛快にしてモダンジャズがど真ん中のフルバン作品♪♪~♪

なによりも分かり易い演奏ばっかりなんですが、飽きてしまうなんて事は無く、何時聴いても素直にジャズの世界に惹かれてしまうこと請け合いです。

時代は既にビッグバンドには厳しくなっていたはずですが、それでもオリバー・ネルソンは散発的ながら、実際に自分の楽団を率いて巡業もやっていたそうですし、同時にスタジオでの仕事もジャズばかりではなく、コマーシャルの制作や映画音楽、テレビの劇伴、さらに若手の育成にも積極的に取り組んでいた勢いは、忘れられません。

ただし、それゆえに音源の散逸もあるようで、集大成的なボックスセットや復刻・発掘の積極的な展開が待たれますねぇ。

最後になりましたが、特に参加が注目されたギタリストのメル・ブラウンは幾枚かのリーダー盤を残しています。しかし結局、大きなブレイクも無く、我国では完全無視状態……。まあ、そのスタイルからして、当時のジャズ者からは軽視される雰囲気が濃厚だったんですが、個人的にもイマイチというか、もう少し強烈な個性とかアクがあればなぁ……、と不遜なことを思ったりします。

ただし後年にブームとなった所謂レアグルーヴとか、そのあたりの視点からすれば、なかなか面白い存在かもしれません。

ビックバンドのアルバムとしては最高級の痛快さと楽しさは保証付きです。

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デクスター・ゴードンの不退転

2010-01-03 16:43:04 | Jazz

One Flight Up / Dexter Gordon (Blue Note)

最近はなかなかジャズモードに入れないサイケおやじではありますが、今日は意を決して堂々のモダンジャズを聴きました。

それはデクスター・ゴードンが滞欧中だった1964年、やはり現地に活躍の場を求めていた超一流の面々と吹き込んだ傑作セッション!

録音は既に述べたとおり、1964年6月2日、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ドナルド・バード(tp)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アート・テイラー(ds) という鉄壁の布陣です。

A-1 Tanya
 ドナルド・バードが書いたファンキーにしてモードがど真ん中の大名曲♪♪~♪
 グイノリのリズム隊を従えたデクスター・ゴードンとドナルド・バードが力強く吹奏するテーマのダークな雰囲気、そしてヘヴィなアプローチがハナからケツまで浸透していく全員の心意気がダイレクトに伝わってきますから、それだけで気分はモダンジャズにどっぷりです。
 実際、思わせぶりに満ちたテーマの前半部分が如何にもモードジャズの本流ですし、それが後半、一気にファンキーへと場面転換される痛快さは筆舌に尽くし難い最高の極致! しかもリズム隊の淡々として粘っこいグルーヴが、決して乱れないんですねぇ~♪
 そしてデクスター・ゴードンが披露するアドリブパートの最初のワンフレーズが、ほとんどマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」期のジョン・コルトレーンを強く想起させられる味わいですから、これはもう確信犯という他はありません。もちろん後はデクスター流ハードバップというか、モダンジャズのテナーサックスがあるべき真の姿を堪能させてくれるのです。
 あぁ、この力強さ!
 威風堂々の不惑の姿勢!
 こういう人に私はなりたいっ!
 それほどに充実したアドリブが提出されるのですから、続くドナルド・バードは作者の強みを活かしても尚、神妙にならざるをえないようです。ただし、そこが結果オーライというか、マイルス・デイビスっぽいアプローチと十八番のファンキーな資質が、まさに最高のスタイルに昇華した、これも名演だと思います。
 また当然ながらリズム隊の安定感とスリルの提供は申し分ありません。若手の駿英として注目のニールス・ペデルセンは幾分神経質なベースワークかもしれませんが、豪胆なアート・テイラー、相性の良いケニー・ドリューに支えられ、存分に個性を発揮していますし、なによりも演奏全体に新しい感覚を効かせるには欠かせない人選だったのでしょう。
 結論としてLP片面を占有した長尺の演奏ですが、全くダレたところの無い仕上がりは、流石にブルーノートの作品に相応しいと思いますし、我国のジャズ喫茶黄金期に店内でこれが鳴り出すと、その場の空気がピリッとした気持良さは、今も忘れられません。

B-1 Coppin' The Heven
 これもまたダークな雰囲気に満ちたモード系ハードバップの名曲にして大名演!
 まず作者のケニー・ドリューを要にしたリズム隊の熱気を内側に秘めたようなテンションが、全篇で素晴らしいと思います。
 そしてアドリブ先発のデクスター・ゴードンがハードなグイノリを聞かせれば、後に続くドナルド・バードもケニー・ドリューも薬籠中のフレーズだけを演じれば許されるのですから、その貫録は本当に凄いです。中でも絶妙の泣きを滲ませるケニー・ドリューが、個人的には高得点♪♪~♪

B-2 Darn That Dream
 そしてアルバムの締め括りが、この滋味豊かな歌物パラード演奏ですから、たまりません。もちろんデクスター・ゴードンが心をこめたメロディ解釈が冴えわたりです。
 ちなみにテナーサックスの魅惑の音色というか、ハード&ソフトなここでの鳴りをきちんと録ったのは、ブルーノート御用達のヴァン・ゲルダーではなく、Jacques Lubin とジャケットにクレジットされた、おそらくは欧州の録音技師なんでしょうが、なかなかブルーノート保守本流の音作りには好感が持てます。
 まあ、このあたりはカッティングマスターを作ったヴァン・ゲルダーの手腕でもあるんでしょうが、迷いの無い制作姿勢が良いですねぇ。

ということで、これが作られた1964年といえば、ビートルズの世界的な大ブレイクにより、大衆音楽の趨勢が一気にロックへと向かった時期でしたが、モダンジャズそのものにしてもフリーやモード、そしてジャズロックやソウルジャズが最先端とされていましたから、保守本流の4ビートは本場アメリカでは肩身が狭く……。

しかし、そんな状況であっても、そして欧州であったとしても、デクスター・ゴードンやここに参加の面々は決して怯むことのない本物のジャズ魂を持ち続けていたのです。それがクッキリと残されたのが、このアルバムの凄さなのでしょう。

まさに不退転の決意を聞かせてくれるデクスター・ゴードン!

当時は四十代になったばかりだと思いますが、自分が同じ年齢の頃に、これだけの決意表明が出来ていたとは、とても恥ずかしくて言えません。

最初に「意を決して」なんて、大仰に書いてしまいましたが、素直な気持で、ただただ、このアルバムを聴き入れば、その感動は今でも新鮮なのでした。

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デスモンド、ブルーベック、そしてマリガンの復刻映像

2009-12-07 12:22:22 | Jazz

Live In Berlin 1972
    / Gerry Mulligan, Paul Desmond & The Dave Brubeck Trio (Standing Oh!vation = DVD)

本日も最近出ました発掘DVDのご紹介ですが、これはパッケージを見ただけでグッと惹きつけられましたですねぇ~~♪ なにしろデイブ・ブルーベックを中心にポール・デスモンドとジェリー・マリガンですよっ!

ご存じのように、ブルーベック&デスモンドと言えば、1950年代中頃から1967年頃まで、世界最高の人気を集めたモダンジャズのトップバンドをやっていましたし、その2人が別れて後はジェリー・マリガンを準レギュラーとしたデイブ・ブルーベックの活動が、やはり同じ味わいを維持しつつ、さらに時代の要求に呼応した新しい展開を繰り広げていた時期が1970年代初頭までの流れでした。

もちろんその過程では、デスモンド&マリガンによるレコーディングも名作セッションとして残されていたのですから、実は1972年秋の欧州巡業から作られた再会セッションのライプアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」が人気盤となったのも当然が必然!

そしてこのDVDは、その拡大映像版という演奏が、たっぷりと楽しめます♪♪~♪

収録は1972年11月4日のベルリン、メンバーはポール・デスモンド(as)、ジェリー・マリガン(bs)、デイブ・ブルーベック(p)、ジャック・シックス(b)、アラン・ドウソン(ds) という豪華な面々が、真摯で熱いプレイを繰り広げています。

しかも画質はAランクのカラー映像ですし、モノラルの音声もなかなかバランスが良好ですから、トータル約93分という長尺もアッという間の夢見心地でしょう。

01 Blues For Newport
 ブルースとはいえ、デイブ・ブルーベックの作曲ですから、そのテーマメロディは硬質に構築され、それゆえに各人のアドリブも油断がなりません。
 まず先発のジェリー・マリガンが椅子に腰かけながらも、あの独得のタイム感覚とドライブしまくったフレーズの中に歌心が満載のバリトンサックスを披露すれば、続くポール・デスモンドは何時に変わらぬ浮遊感たっぶりのクール節を颯爽と吹いてくれます♪♪~♪
 あぁ、この展開だけで幸せになりますねぇ~♪
 ちなみにステージの照明もカメラワークも、またメンバー各々の衣装も、全てが如何にも1970年代初頭のムードなんですが、ポール・デスモンドだけがネクタイ姿というのも頑固な姿勢というか、全く観てのお楽しみとはいえ、ちょっとキメのフレーズを吹く時に体を斜に構えるあたりが最高にカッコイイですよ。
 そしてデイブ・ブルーベックが、これまた頑固というか、最初はグルーヴィなノリを聞かせていながら、中盤からは唯我独尊の怖い変態ビートのアドリブを展開し、最終盤に再び絶妙の4ビートへ戻っていくところは流石です。また、それに呼応してリズムとビートのパターンを変えていくドラムスとベースも名手の証でしょうねぇ~♪
 演奏はこの後、ジャック・シックスのベースソロを経てアラン・ドウソウのドラムスと対決するフロント陣という見せ場に入りますが、決して無暗に熱くならず、適度にリラックスしたアラン・ドウソウの余裕も見事だと思います。

02 All The Things You Are
 モダンジャズでは定番演目のスタンダードですから、良く知られた曲メロが名人達によってどのような歌心に変換させられるか、その点だけでも嬉しくなるはずです。
 実際、テーマアンサンブルのパートからポール・デスモンドはジェントルにスイングし、ジェリー・マリガンは歌心優先主義を貫いていますから、これはアドリブパートに入っても継続されるのが当然の流れということで、全てが「歌」の大名演♪♪~♪
 しかもバックのリズム隊が、特にアラン・ドウソンのライトタッチのドラミングに顕著なように、様々なパターンを細かく演じることによって醸し出される新しい感覚なんですねぇ~♪ そのあたりを百も承知で伴奏していくデイブ・ブルーベックのニンマリ顔も印象的ですし、疑似対位法を用いたような得意技を出しまくるピアノの固いタッチも良い感じなのでした。

03 For All We Know
 十八番を演じるポール・デスモンドの独演会♪♪~♪
 当然ながら、あのクールなアルトサックの音色で演じられる浮遊感満点の曲メロ変奏からアドリブの桃源郷へと、本当に酔わされてしまいますよ♪♪~♪
 繊細なリズム隊の伴奏も実に上手いと思います。

04 Line For Lyons
 ジェリー・マリガンの代表曲ともいうべき、メロデイの魔法とウキウキの気分に満ちたテーマが私は昔っから大好きなんですが、それがここではポール・デスモンドを主役に据えて披露されるんですから、たまりません。流麗なアドリブフレーズに絡んでいくジェリー・マリガンの控えめな至芸も最高ですし、続く自身のアドリブにしても、全くツボを掴みきった名演になっています。
 それと地味ながら芯の強いビートを送り出しているリズム隊も侮れません。
 さらに終盤の疑似対位法的なアンサンブルは、デイブ・ブルーベックのバンドの証として、嬉しくなってしまいますね♪♪~♪

05 Blessed Are The Poor
06 Mexican Jumping Bean

 この2曲はポール・デスモンドが抜け、ジェリー・マリガンとデイブ・ブルーベックが中心となった新しい感覚の演奏で、そこにはモードや民族音楽の味わいに加え、微妙なロックフィーリングさえ導入されているようです。
 実際、重々しくて暗い「Blessed Are The Poor」は如何にも当時の感性として、似て非なるものが我国のジャズ喫茶でも人気を集めたレコードが数多ありました。そして今となってはデイブ・ブルーベックの深淵な企みが理解出来たというか、全く「らしくない」ディープなところは貴重かと思います。
 一方、「Mexican Jumping Bean」はタイトルどおりに明るめな躍動曲なんですが、そのキモはモードですから、ジェリー・マリガンもついに椅子から立ち上がっての熱演を聞かせてくれます。これが、なかなか良いんですねぇ~♪ アラン・ドウソンが控えめながら、ついつい熱くなっていくドラミングが正直です。

07 Song Off
 そして再びポール・デスモンドが戻っての演奏は、如何にも白人らしいブルースのモダンジャズ的解釈! その典型が楽しめます。もちろん即興による、その場だけのインスピレーションが大切されているのは言わずもがな、ブルースという様式美を追及すると言うよりも、お約束のフレーズばっかり演じてくれるメンバーのサービス精神は、気恥ずかしくも嬉しいプレゼント♪♪~♪
 なんとなく白人ブルースロックにも似た快感なんですが、中でもデイブ・ブルーベックが腰を浮かせての大熱演には、思わずイェ~~~♪ なんて拍手喝采ですよ♪♪~♪
 また意図的にブリブリやってしまうジェリー・マリガンに対し、落ち着いた思わせぶりを演じるポール・デスモンドのクールな貫録が、実にカッコイイです。

08 Someday My Princ Will Come
 演目表記を見た瞬間から、これは楽しみにしていたトラックで、もちろんポール・デスモンドが在籍中のデイブ・ブルーベックのカルテットでも至高の名演が残されている人気曲♪♪~♪
 そして定石どおり、ピアノによるシンプルなテーマの提示から浮き立つようなポール・デスモンドのソフト&クールなアルトサックスがアドリブに入って行けば、そこは完全なるモダンジャズの桃源郷♪♪~♪ 手堅いジャック・シックスのベースワークとアラン・ドウソンの地味~なブラシが、逆に強い存在感になっているのも不思議ですが、妙に納得してしまいます。
 ちなみにジェリー・マリガンが当然の顔で休んでいるのは、ちょっと勿体無いような気もしますが、リユニオンであれば、正解かもしれませんね。
 その分だけデイブ・ブルーベックのピアノも冴えまくりなのでした。

09 These Foolish Things
 ジャック・シックスのペースを主役としたピアノトリオ演奏で、正直、個人的にはあまりグッとくるものはありませんが、まあ、いいか……。

10 Take Five
 そしてお待たせしました!
 もう、このメンツで、これが出なければ納まらないというモダンジャズでは畢生の大名曲が、極めて当時最前線のジャズフィーリングで演じられていますから、イントロのピアノが出た瞬間、客席からは盛大な拍手が沸き起こります。
 あぁ、それにしても、この素敵なメロディとビートは不滅だと思いますねぇ。もうテーマ部分だけで満足させられてしまうんですが、それゆえに幾つか残されている同曲のテイク&バージョンを聞いてみても、アドリブがテーマメロディを越えられないという宿命が、ここでも表出しています。
 しかしリズム隊ゆえでしょうか、幾分の新しい感覚の中では、歌心の可否が不明なポール・デスモンドの浮遊感表現が、それなりに気持良く、またジェリー・マリガンの些かネクラ気味のアプローチも、実に新鮮だと感じます。
 さらにデイブ・ブルーベックのピアノが、これまた曲者! 意図的に伴奏をしないパートがあったり、アドリブにおいては、これも恣意的な表現が新主流派っぽいベースとドラムスを伴っていることもあるのでしょうか、なかなか熱い興奮を呼び覚まします。
 現実的に言えば、こういう展開は賛否両論でしょうし、実は前述したアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」にも、この演奏が少しばかり編集されて入っているのですが、やはり映像で接すると味わいか違うなぁ~、なんて思います。
 また、その意味でアラン・ドウソンのドラミングは、どうしてもデイヴ・ブルーベックのバンドではレギュラーだった天才のジョー・モレロと比較される運命にあるんですが、ここでのドラムソロは、アラン・ドウソンの面目躍如たる素晴らしさ! これだったら、演奏全体で、もっと叩きまくって欲しかった場面が多々あることを思えば、ニクイ限りですよっ!

11 Take The“A”Train
 オーラスはバンドテーマとも言うべき、大サービス演奏で、メンバー達が自ら楽しんでいる様子も微笑ましさに嬉しくなります。特にデイブ・ブルーベックのニンマリ顔は印象的♪♪~♪
 これがモダンジャズの楽しさだっ!
 という主張が見事なのでした。

ということで、とにかく画質は最高クラスに鮮やかですし、音声はモノラルながら、ドロップアウトも少ない良好な復刻です。

なによりも、こういうセッションが映像で楽しめるだけで、嬉しくなる皆様が大勢いらっしゃると推察しております。

演奏面ではアラン・ドウソンという比較的過小評価のドラマーが動いてる、それも貴重でしょう。大方の印象は新主流派っぽいハードバップのドラマーというところでしょうから、ここでの些か控えめなドラミングは物足りないかもしれませんが、それもここでは正解の仕事じゃないでしょうか。実際、この名手の小技の冴えが映像で確認出来るのは、もうひとつの楽しみだと思います。

もちろんポール・デスモンドという大スタアに接することが出来るのも高得点♪♪~♪

機会があれば、ぜひともお楽しみいただきとうございます。

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クール派ギタリスト三人衆の復刻映像

2009-12-06 12:00:06 | Jazz

Guitar Masters Live In Germany 1973 & 1980
                          / Jim Hall, Jimmy Raney & Attila Zoller (Jazz Vip = DVD)


これも先日、発見して即ゲットしてきたDVD♪♪~♪

タイトルどおり、白人ジャズギタリストの名手3人が存分に披露した至芸を収録していますが、結論から言うと、和みのある演奏ではありません。

しかしテレビ放送用に収録されたと思われる画質は最高のカラー映像ですし、もちろん音質も一部で微細なドロップアウトもありますが、総じてバランスが良い優良なブツでした。

そして中身は後述するふたつのパートに分かれています。

1980年10月10日、フランクフルトで収録
 01 Scherz
 02 A Common Nightmare

 まず最初のパートはジミー・レイニーとアッティラ・ゾラのデュオ演奏で、左にアッティラ・ゾラ、右にジミー・レイニーが定位したステレオ音声で約20分ほど、2曲が披露されますが、そこに明確な曲メロテーマはありません。つまり同じクール派ギタリスト同士の魂の交感ともいうべき即興的な展開になっているのです。
 極言すれば各々が好き勝手にコードやフレーズを弾いていながら、何時しかどちらかのギタリストが相手に合わせるような瞬間が出現し、またそれが自己満足的な演奏に戻っていく流れなんですねぇ。
 ですから曲名がつけられいますが、それは便宜的なものでしかありません。
 しかし、そこには何時か、どこかで聞いたことのあるスタンダードなメロディの断片が浮かんでは消えていくという至福がありますし、その過程で生み出されていく緊張感満点の意地の張り合いやフレーズとコードの応酬は、鳥肌と恐怖心さえ呼び覚ますほどです。
 う~ん、実は会場にはお客さんが入れ込まれているんですが、演奏が終わっても、呆気にとられた拍手しか……。
 またDVDで鑑賞しているこちらにしても、全然和めないですねぇ……。
 ただしギターを弾く様子というか、2人のクール派ギタリストが織りなす巧みの技の競演は、その指使いや音の選び方、和音構成の魔法、さらにピッキングの秘密等々が、鮮明な映像でじっくりと観察研究出来ますから、その奥の深さと凄みには、またまた鳥肌がっ!
 ちなみにジミー・レイニーは説明不要のクール派として、その流麗なギターワークは定評がありますが、アッティラ・ゾラも欧州をメインに活動している同系のギタリストとして、しぶとい人気がある名人ということで、その似て非なる個性を存分に楽しめるわけですが、時代的には2人とも既に老境でありながら、こんなに凄い老人がいる!?! というだけでも圧倒されると思います。

1973年9月14日、ハノーバーで収録
 03 My Romance (Hall - Zoller Duet)
 04 Eztension (Quartet)
 05 All Across The City (Jim Hall Solo)
 06 Ballad (Hall - Mitchell Duet)
 07 Free Mood (Trio)
 08 Blues In The Closet (Quartet)
 こちらのパートはジム・ホール(g)、アッティラ・ゾラ(g)、レッド・ミッチェル(b)、ダニエル・ユメール(ds) という、今では夢の顔合わせ♪♪~♪ ただし演目の後につけた注釈どおり、全てがカルテットの演奏ではないのが賛否両論でしょう。
 しかし中味の濃さは本当に凄く、まず有名スタンダードを素材に2人のギタリストが自己研鑽を披露する「My Romance」からして、震えがきます。特にジム・ホールは、一般的なイメージである「優しい歌心」なんて置き忘れたような鋭さで、クールなフレーズと熱いジャズ魂を徹頭徹尾、追及していると感じます。
 もちろんそれは相方のアッティラ・ゾラの音楽性に合わせた結果かもしれませんが、完全ソロギターによる「All Across The City」にしても、自作曲という以上の何か、憑かれたような情念がジワジワと漂ってきます。また、レッド・ミッチェルとの二人芝居的な「Ballad」に至っては、幽玄のメロディが空間を浮遊しながら、不思議な増殖を繰り返すような、ちょっと私の稚拙な筆では表現不可能な世界! これは皆様にも、ぜひとも接していただきたいところで、個人的には、このセットの中で、一番にジム・ホール的なイメージの強い、聴き易い演奏だと思います。
 しかしカルテットによる「Eztension」は、本当に激ヤバというか、1973年という時代を考慮しても、相当に進んでいた演奏で、今日ではパット・メセニーあたりがやったとしても、ここまでの密度は、ちょっと難しいかもしれません。しかもメンバー各々が、全くの自然体というところが、映像作品ならではの確認ポイント♪♪~♪ なんか、ここらあたりにも圧倒されるものが確かにありますよ。
 その意味ではオーラスの「Blues In The Closet」は題材がビバップの古典ですから、グイノリの楽しさを期待してしまうのですが、それを意図的にはぐらかしていく展開がニクイばかり! う~ん……。
 それとおそらくはジミー・レイニーとのセットでもそうでしたが、この映像集ではホスト役と思われるアッティラ・ゾラが、やはり時代的にも先鋭的な感覚を完全披露! 自分中心のトリオ演奏となった「Free Mood」では、ジプシーモードのクール派的な展開に絶妙のロックジャズ感覚も交えながら感度良好♪♪~♪
 ちなみに音声はモノラルですが、こちらも各楽器のバランスは問題ありません。

ということで、繰り返しますが、和みを期待して鑑賞するとハズレます。

しかしギタリストいう現代の魔法使いが、その奥義を出し惜しみせずに披露した素晴らしい時間が、全篇約81分間堪能出来るだけでも、私には至福でした。

惜しむらくは3人の合同演奏が無かった点で、これはタイトルからして誤解を招くところではありますが、正規発売としては初DVD化ということで、高得点の復刻だと思います。

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前向きマクリーン!

2009-11-10 11:11:16 | Jazz

One Step Beyond / Jackie McLean (Blue Note)

仕事地獄に落ちこんで東西南北、とにかく引っ張り回されている日々なんで、こういう時こそ、スカッとして、ちょいと過激な、ストレス発散のジャズを聴きたくなります。

で、本日ご紹介の1枚はご存じ、青春の情熱の代表格とも言うべきジャッキー・マクリーンが、従来のハートパップから更に突出して新しい道へと向かい始めた記念碑的な名盤♪♪~♪

録音は1963年4月30日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as) 以下、グラチャン・モンカー三世(tb)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、エディ・カーン(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、これ以降のモダンジャズをリードしていった凄い面々ですが、この時点では無名の新進気鋭揃い! 特にトニー・ウィリアムスは弱冠17歳だっんですねぇ!?!

A-1 Saturday And Sunday
 ジャッキー・マクリーンのオリジナルで、幾分、陰険な曲調のテーマメロディが不穏な空気を醸し出しますが、アドリブパートは痛快なアップテンポのモード系ハードバップ! その原動力は、もちろん当時の常識から逸脱したドラミングを披露するトニー・ウィリアムス、さらにどっしり構えてエグイばかりのウォーキングで突っ込んでくるエディ・カーンというリズム隊です。
 そしてジャッキー・マクリーンのギスギスして荒っぽいアルトサックスが、それこそ好き勝手に激ヤバのフレーズばっかりを吹きまくれば、呼応して暴れるトニー・ウィリアムスのドラムスに耳を奪われてしまうのです。
 また続くグラチャン・モンカーのアドリブパートでも、その傾向が尚更に強くなり、ピアノレス編成ということでコードの束縛から離れている所為でしょうか、相当にフリー色も濃くなりますが、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブラフォンが要所で助け舟的なハーモニーを入れてくるのがシブイところ♪♪~♪
 ですからアドリブパートに移っても、全く独自の感覚とスピード感が冴えわたり、過激なベースとドラムスを逆にリードしていくかのような斬新さが、たまりません。
 しかし、こうなるとトニー・ウィリアムスも若気の至りとは決して言えない、本当に物凄いドラムソロ! 銃後の守りというか、背後で要所を締めるエディ・カーンのペースも、全く良い感じです。
 あぁ、これぞ新しいモダンジャズだったんでしょうねぇ~♪
 全盛時代のジャズ喫茶でも、このアルバムが鳴り始めると店内の空気が、一瞬にして「ジャズを聴いている」という充実した気分に満たされていったものです。

A-2 Frankenstein
 グラチャン・モンカーが書いたマイナーメロディの不思議な曲調が、変則的なワルツビートで演じられていますから、これは怪しい!
 と言うよりも、一抹の分からなさと激しいビートに煽られた各人のアドリブが、そんな混濁から懸命に逃れんとする「あがき」として、実に最高なんですねぇ~♪
 例えばジャッキー・マクリーンはエキセントリックでハイキーな「音」をキメに使っていますし、グラチャン・モンカーのトロンボーンは十八番の爆裂フレーズを積み重ね、ボビー・ハッチャーソンも短いのが勿体無いかぎりの最高峰アドリブを聞かせてくれます。
 そしてもちろん、トニー・ウィリアムスが全篇でビシバシにキメまくりのドラミング! その全く新しい4ビートとリズム感は、とても17歳とは思えないほどですが、いえいえ、これが若さゆえの特権だと思います。実に凄い!

B-1 Blues Rondo
 アップテンポのブルースがロンド形式で演じられるテーマは曲タイトルどおりという、このアルバムの中では一番に聴き易い、従来型のハードバップなんですが、このメンツですからタダでは済みません。
 特にジャッキー・マクリーンのハッスルぶりは気恥ずかしくなるほどです。十八番のマイナーフレーズとアグレッシプな音使いは、この時期ならではの魅力でしょうねぇ~♪ これには終始、アップテンポのビートを送り出しているトニー・ウィリアムスも油断は禁物という感じです。

B-2 Ghost Town
 オーラスは再びグラチャン・モンカーのオリジナルで、如何にもという幻想的なムードの中で、過激なモダンジャズ最前線が演じられていきます。とにかく緩いビートの中で自在に浮遊し、それでいて暗黙の了解を守ったメンバー各人の名演が堪能出来ますよ。
 まずテーマアンサンブルの構成からして秀逸の極み!
 そしてアドリブパートでは、先発のジャッキー・マクリーンが熱いエモーションを丸出しにした過激節を存分に披露すれば、続くグラチャン・モンカーが作者の強みを活かした伸縮自在の大名演♪♪~♪ 上手くテンポを変化させていくところは、同時期のマイルス・デイビスのバンドでも試みられ始めた手法ですが、そのキーマンが、どちらもトニー・ウィリアムスだったというのが意味深です。
 ご存じのように、この若き天才ドラマーは、このセッション直後に、そのマイルス・デイビスに引き抜かれていくわけですが、ここで既にスタイルは固まりつつあったということなんでしょうか? この曲だけでなく、アルバム全体の成功の要因は、トニー・ウィリアムスの参加にあったといって過言では無いと思うほどです。
 それはボビー・ハッチャーソンのアドリブパートでも同様に素晴らしく、相当に饒舌なフレーズ構成がイヤミになっていないのも流石です。エディ・カーンの意地悪なペースワークも必要十分な凄みが、これまた最高!

ということで、これもガイド本では載ることの多い傑作盤なんですが、実はジャッキー・マクリーンという人気者のアルバムですから、それほどは売れていないかもしれません。何故ならば、これは大きな音量で聴くのが望ましく、それゆえジャズ喫茶の人気盤に成り得たのが真実ではないでしょうか。

和みなんて、無用の長物なんですよ、このセッションでは!?!

それは参加メンバーが当時のジャッキー・マクリーンのバンドレギュラーとして、実際にライプの現場で活動していたからに他なりません。そういうヤル気や意気込みが、アルバム全体からムンムンするほど立ち昇ってきます。

そして、こういう作品を聴けるようになったサイケおやじは、もしかしたら、ジャズモードへと回帰する兆しがあるのかもしれません。

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トニー・ウィリアムスのサイケデリックジャズ

2009-11-05 12:02:36 | Jazz

Spring / Anthony Williams (Blue Note)

あぁ~、今の国会は亡国合戦というか、今週は特に酷いですねぇ。野党のセコイ質問に答えの出ない答弁を演じる与党、それに拍手で野次を消すという、丸っきりヒットラーユーゲントの如き有象無象の新人議員! さらに昨日は口喧嘩……。

全く情けない親分衆の総長賭博って感じですが、こういう時こそ子分達が意気地を見せないと、ねっ!

ということで、本日はそんな気分の過激なジャズを聴いてしまったです。

主役のアンソニー・ウィリアムスとは、もちろんマイルス・デイビスのバンドで一躍名を上げた天才ドラマーのトニー・ウィリアムス(ds) ですから、参加メンバーもウェイン・ショーター(ts)、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ゲイリー・ピーコック(b) という所縁の過激派が揃っています。

そして録音が1965年8月12日ということは、トニー・ウィリアムスが弱冠二十歳そこそこの若造ながら、演目は全てが自身のオリジナル! ここで聴かれる勢いと音楽性の深さには絶句して、驚嘆するばかりです。

A-1 Extras
 いきなりスピード感満点に弾けるトニー・ウィリアムスのブラシが強烈! そして自在に飛翔しては暴れるゲイリー・ピーコックのペースも、基本は堅実な4ビートですから、不穏なテーマを経て、まずはウェイン・ショーターの唯我独尊というテナーサックスが怖い存在感を示します。
 う~ん、このあたりは同時期のマイルス・デイビスのバンドよりも自由度が高く、それはゲイリー・ピーコックの好き勝手なベースワークの所為もありますが、もちろんトニー・ウィリアムスのリーダーシップを理解している、あるいは度量の大きい参加メンバー達の心意気でしょうねぇ~♪
 そして問題児的なゲイリー・ピーコックのベースソロが、トニー・ウィリアムス十八番のスティックワークに煽られて過激に展開され、そこに自然体で絡んでいくサム・リバースの不気味なテナーサックス、再びブラシに戻っているトニー・ウィリアムスの自在なリズムの解釈が、もはやフリージャズを超越した自由性感度が絶大!
 ただし、それでも普通に聴けてしまうモダンジャズの醍醐味は失せていませんよ。
 全く凄いです。

A-2 Echo
 これぞっ、トニー・ウィリアムスならではのドラムスが主役となった名演の決定版!
 つまりは5分弱のドラムソロなんですが、繊細でシャープなシンバルワーク、テンションの高いタムやスネアのコンビネーション、そしてバスドラのアクセントも絶妙にして迫力満点という、流石の展開は飽きることがありません。

A-3 From Before
 そして始まるのが、混濁して陰鬱な隠れ名演(?)なんですが、ここまであまり出番の無かったハービー・ハンコックが全体をリードしていく展開が素晴らしいかぎりです。
 それは自然にピアノトリオ形式へ発展し、その美しくも緊張感に溢れたアドリブパートの構成力は、あくまでも個人の自由裁量を優先させながら、最高の纏まりとしてクライマックスから大団円へと流れていくのです。特にウェイン・ショーターとサム・リバースが入り込んでくる終盤のスリルは圧巻!
 全体としては抑制されたギリギリのところで勝負しているのでしょうか? もう少しの爆発力も期待してしまうのですが、最後の最後で限りない美学をシンプルに披露するハービー・ハンコックのピアノが万事OK♪♪~♪

B-1 Love Song
 B面に入っては、いきなりサム・リバースのテナーサックスが、不思議なフォークタッチのメロディを吹きまくる、この名曲♪♪~♪ 実際、妙な哀愁と中毒性を兼ね備えた演奏は、トニー・ウィリアムスの張りきったスティックワークが楽しめますし、聴き易い中庸アップテンポながら、決してマイルス・デイビスなんか出る幕が無いというムードが濃厚にあるんですねぇ~。
 サム・リバースも要所では十八番のダーティなトーンで彩られた混濁フレーズを聞かせてくれますし、ハービー・ハンコックは薬籠中の「節」を大サービスして、まさに新主流派の醍醐味がいっぱいです。
 ちなみにウェイン・ショーターは休憩中なのでした。

B-2 Tee
 一転して過激な濁流が襲いかかってくる強烈な演奏!
 それをリードしているのは、明らかにウェイン・ショーターの奇怪なテナーサックスとはいえ、トニー・ウィリアムスが得意技の完全披露する激烈な4ビートで全篇のジャズグルーヴを確保していますから、タダでは済みません。
 このアルバムに収録された中では、一番にマイルス・デイビスっぽいムードと言えばそれまでなんですが、ここに果たして御大が入ってこられるかは、不確定の要素が強く存在すると思います。もちろん、それを逆手に活かしたメンバー各人の力演は激しいですよ♪♪~♪
 ウェイン・ショーターが意地悪く浮遊すれば、必死に追い縋るトニー・ウィリアムス! それを笑って許してのハービー・ハンコックとゲイリー・ピーコックという構図には、4ビートジャズが行く所まで、確かに行ってしまった感じさえします。
 ところが凄まじいゲイリー・ピーコックのペースのアドリブの途中で、いきなり演奏がカットされ、終了するんですねぇ~~!?! これについては当時から、後に続くと思われるサム・リバースのアドリブパートがヘタレだった!?! とか、あるいは意図的に思わせぶりをやった目論見だとか!?! 賛否両論があったようです。
 まあ、サイケおやじ的には答えの出せない疑問ではありますが、この唐突な終了が、なかなか良い感じ♪♪~♪

ということで、ある意味では究極の4ビートジャズだと思うんですが、実は最初に聴いた時のサイケおやじは、妙にサイケデリックロックの雰囲気を感じていました。

後で知ったところでは、当時のトニー・ウィリアムスはモダンジャズのトップドラマーでありながら、気持はロックへ傾いていたそうですし、このリーダー盤以降では、ついにジョン・マクラフリン&ラリー・ヤングと組んだフリーロックという言うべき傑作「ライフタイム」を作ってしまったのも、納得出来ます。

それと、ここまで散々書いたマイルス・デイビス云々に関しては、親分が決して古いとかいう問題ではなく、その基本姿勢がジャズかロックか、そういう部分の拘りにあったとすれば、個人的には氷解するのですが……。このセッション後に録音された、例の「プラグド・ニッケル」でのライプ盤あたりを聴くと、こちらの尖がり方がモダンジャズの保守本流を危うくしていた気がするほどです。

永田町のカッコマン議員の先生方には、こういうものが必要だと痛感する次第です。

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モンク対フィリー・ジョー

2009-10-19 10:06:18 | Jazz

Thelonious Monk At Raris, 1969 (Jazz Vip = DVD)

セロニアス・モンクの映像は相当に残されていて、その復刻も着々と進んでいる今日、またまた嬉しい発掘が本日ご紹介のDVDです。

なんとフィリー・ジョー・ジョーンズとの共演!?!

しかも1969年!

もう、この一事だけで、即ゲットさせられました。

ただし結論から言うと、お目当ての共演は2曲だけなんですが、親分のセロニアス・モンク以下、バンドメンバーのテンションもなかなか高く、全篇約81分がきっちりと楽しめます♪♪~♪

☆Thelonious Monk Quartet At Paris, 1969
 収録は1969年12月15日、パリはサル・プレイエルでのライプから、メンバーはセロニアス・モンク(p)、チャーリー・ラウズ(ts)、Nate Hygelund(b)、パリス・ライト(ds)、そして既に述べたように、2曲だけですが、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) が交代参加しています。
 01 I Mean You
 02 Ruby, My Dear
 03 Straight, No Chaser

 まずは楽屋裏の風景から映し出されるそこには、既にフィリー・ジョーや多分、ケニー・クラークと思われる旧知の面々が居並び、セロニアス・モンクもグラスを片手に上機嫌♪♪~♪ それがこの日の演奏の好調さに繋がったのかもしれません。
 ちなみに画質は「-A」程度のモノクロですが、時代を考慮すれば何の問題も無くご覧になれるでしょう。そしてバックには観客の拍手やチューニングの音声が重ねられ、いよいよステージに登場するセロニアス・モンクが弾き始めるのは十八番の「I Mean You」なんですが、このあたりの編集とカメラワークの良さも秀逸だと思います。もちろんセロニアス・モンクの手と指の動きもバッチリ映し出されていますから、あの神秘的で怖いコードワークの一端がっ!
 肝心の演奏そのものは、チャーリー・ラウズが余裕と貫録の存在感! 正直言えば、何時も同じようなフレーズばっかり吹いている気も致しますが、このライプではベースとドラムスが新顔の所為でしょうか、イヤミにならない程度の緊張感が結果オーライだと思います。
 気になる、その新顔では、ベースの Nate Hygelund が白人ながら、豪快にして繊細なベースワークが素晴らしく、またパリス・ライトのドラミングは如何にも黒人らしいビート感が最高! 小型アート・テイラーというところかもしれません。
 04 Nutty
 05 Blue Monk

 ここでいよいよフィリー・ジョーが登場♪♪~♪ もちろん観客からは拍手喝采です。
 しかも始まるのが人気曲の「Nutty」ですからねぇ~♪ その楽しいリズムに彩られた親しみ易いテーマメロディが出た瞬間から、フィリー・ジョーのスティックが躍動します。
 チャーリー・ラウズも何時も以上に唯我独尊のアドリブを聞かせてくれますし、フィリー・ジョーが親分モンクの様子を確かめならが敲いているのも、映像作品ならではの発見というか、なかなか興味深々でした。もちろん演奏の充実度は最高で、特にピアノトリオとなってからのパートは、Nate Hygelund の頑張りもあって、素晴らしい限り!
 そしてついに炸裂するフィリー・ジョーのドラムソロは、あの絶妙のクッションと弾けるビートが一体化した強烈な瞬間の連続で、全く目が離せません! セロニアス・モンクもドラムセットの近くまで寄って、じっくりと見ていますが、フィリー・ジョーは例よって半眼状態で自分を貫き、十八番のリックを敲きまくりですよ。
 確証は無いのですが、この2人の共演セッションは極めて珍しいのではないでしょうか。それを映像で楽しめるのですから、長生きはするもんです。
 またフィリー・ジョーの動く姿にしても、最近発掘されたビル・エバンスとの1978年のライプがあるぐらいですからねぇ。その約9年前というところにも、嬉しいものがあります。当然、その場の観客からも大拍手!
 しかし続く「Blue Monk」は本当に短い演奏で、もしかしたら編集してあるのかもしれませんが、バンドテーマみたいな扱いが残念……。
 06 Bright Mississippi
 07 Light Blue
 08 Epistrophy
 09 Don't Blame Me
 10 3 O'clock In The Morning
 11 Interview With Thelonious Monk
 12 Crepuscule With Nellie

 ここからは後半というか、再びレギュラーカルテットに戻っての熱演が楽しめます。特にドラマーのパリス・ライトはフィリー・ジョーへの対抗意識が良い方向へ働いたのでしょう。その溌剌として新鮮なドラミンクは感度良好!
 セロニアス・モンクにしても、この頃にはライプ活動が散発的となっていた時期とはいえ、既に述べたように、毎度お馴染みの演目をやっても、そのテンションの高さはモダンジャズ至高の輝きです。つまりマンネリのようでいて、緊張感とスリルに溢れたセロニアス・モンクの音楽だけが表現しうる世界は不滅!
 チャーリー・ラウズもセロニアス・モンクとの共演は、ほとんど末期の頃ですから、何時もながらのパターンとはいえ、それは決して「おざなり」のプレイではないと思います。なんというか、セロニアス・モンクの世界の中では、ひとつの完成形を演じているんじゃないでしょうか。それがこの時期でさえも、変りなかったのは、凄いと思います。

☆Thelonious Monk Solo Pian, 1969
 こちらはボーナストラックというか、同時期の欧州巡業から11月6日、ベルリンでのソロピアノ演奏を収録しています。ちなみに映像はカラーで、画質は「A」クラスだと思いますが、如何にもこの時代ならではという「光と影」の照明とカメラワークが個人的には気に入っています。
 13 Sophisticated Lady
 14 Caravan
 15 Solitude

 上記演目はデューク・エリントンが書いた名曲集という趣ですから、セロニアス・モンクにとっても気合いが入ったのでしょうか、こちらもなかなかにテンションの高い演奏となっています。まさに孤高の世界!
 しかし同時に不思議な和みも一緒に感じられるのが、この時期のセロニアス・モンクならではのソロピアノ♪♪~♪ そこには決して「円熟」なんていう言葉だけでは表現しきれない、「何か」が確かにあると思います。このDVDでは他にも前パートにおける「3 O'clock In The Morning」や「Crepuscule With Nellie」での絶妙の味わいとか、なかなか素敵ですよ。

ということで、セロニアス・モンクの発掘物というと、何時も同じような演目ばかりという事実は否定出来ませんが、その何れもが、実は常に平均点以上のモダンジャズになっているという真実はひとつです。それは実質的に晩年になっていた、このパリでのライプでも明らかだと思います。

そして、もうひとつのウリであるフィリー・ジョーとの共演が映像で楽しめるのは、最高に嬉しいプレゼントでした。

音質は当然、モノラルですが、全く問題無いレベルですし、個人的にはちょっとセロニアス・モンクを再発見したような気分になっています。

コメント (2)
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