OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

デクスター・ゴードンの不退転

2010-01-03 16:43:04 | Jazz

One Flight Up / Dexter Gordon (Blue Note)

最近はなかなかジャズモードに入れないサイケおやじではありますが、今日は意を決して堂々のモダンジャズを聴きました。

それはデクスター・ゴードンが滞欧中だった1964年、やはり現地に活躍の場を求めていた超一流の面々と吹き込んだ傑作セッション!

録音は既に述べたとおり、1964年6月2日、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ドナルド・バード(tp)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アート・テイラー(ds) という鉄壁の布陣です。

A-1 Tanya
 ドナルド・バードが書いたファンキーにしてモードがど真ん中の大名曲♪♪~♪
 グイノリのリズム隊を従えたデクスター・ゴードンとドナルド・バードが力強く吹奏するテーマのダークな雰囲気、そしてヘヴィなアプローチがハナからケツまで浸透していく全員の心意気がダイレクトに伝わってきますから、それだけで気分はモダンジャズにどっぷりです。
 実際、思わせぶりに満ちたテーマの前半部分が如何にもモードジャズの本流ですし、それが後半、一気にファンキーへと場面転換される痛快さは筆舌に尽くし難い最高の極致! しかもリズム隊の淡々として粘っこいグルーヴが、決して乱れないんですねぇ~♪
 そしてデクスター・ゴードンが披露するアドリブパートの最初のワンフレーズが、ほとんどマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」期のジョン・コルトレーンを強く想起させられる味わいですから、これはもう確信犯という他はありません。もちろん後はデクスター流ハードバップというか、モダンジャズのテナーサックスがあるべき真の姿を堪能させてくれるのです。
 あぁ、この力強さ!
 威風堂々の不惑の姿勢!
 こういう人に私はなりたいっ!
 それほどに充実したアドリブが提出されるのですから、続くドナルド・バードは作者の強みを活かしても尚、神妙にならざるをえないようです。ただし、そこが結果オーライというか、マイルス・デイビスっぽいアプローチと十八番のファンキーな資質が、まさに最高のスタイルに昇華した、これも名演だと思います。
 また当然ながらリズム隊の安定感とスリルの提供は申し分ありません。若手の駿英として注目のニールス・ペデルセンは幾分神経質なベースワークかもしれませんが、豪胆なアート・テイラー、相性の良いケニー・ドリューに支えられ、存分に個性を発揮していますし、なによりも演奏全体に新しい感覚を効かせるには欠かせない人選だったのでしょう。
 結論としてLP片面を占有した長尺の演奏ですが、全くダレたところの無い仕上がりは、流石にブルーノートの作品に相応しいと思いますし、我国のジャズ喫茶黄金期に店内でこれが鳴り出すと、その場の空気がピリッとした気持良さは、今も忘れられません。

B-1 Coppin' The Heven
 これもまたダークな雰囲気に満ちたモード系ハードバップの名曲にして大名演!
 まず作者のケニー・ドリューを要にしたリズム隊の熱気を内側に秘めたようなテンションが、全篇で素晴らしいと思います。
 そしてアドリブ先発のデクスター・ゴードンがハードなグイノリを聞かせれば、後に続くドナルド・バードもケニー・ドリューも薬籠中のフレーズだけを演じれば許されるのですから、その貫録は本当に凄いです。中でも絶妙の泣きを滲ませるケニー・ドリューが、個人的には高得点♪♪~♪

B-2 Darn That Dream
 そしてアルバムの締め括りが、この滋味豊かな歌物パラード演奏ですから、たまりません。もちろんデクスター・ゴードンが心をこめたメロディ解釈が冴えわたりです。
 ちなみにテナーサックスの魅惑の音色というか、ハード&ソフトなここでの鳴りをきちんと録ったのは、ブルーノート御用達のヴァン・ゲルダーではなく、Jacques Lubin とジャケットにクレジットされた、おそらくは欧州の録音技師なんでしょうが、なかなかブルーノート保守本流の音作りには好感が持てます。
 まあ、このあたりはカッティングマスターを作ったヴァン・ゲルダーの手腕でもあるんでしょうが、迷いの無い制作姿勢が良いですねぇ。

ということで、これが作られた1964年といえば、ビートルズの世界的な大ブレイクにより、大衆音楽の趨勢が一気にロックへと向かった時期でしたが、モダンジャズそのものにしてもフリーやモード、そしてジャズロックやソウルジャズが最先端とされていましたから、保守本流の4ビートは本場アメリカでは肩身が狭く……。

しかし、そんな状況であっても、そして欧州であったとしても、デクスター・ゴードンやここに参加の面々は決して怯むことのない本物のジャズ魂を持ち続けていたのです。それがクッキリと残されたのが、このアルバムの凄さなのでしょう。

まさに不退転の決意を聞かせてくれるデクスター・ゴードン!

当時は四十代になったばかりだと思いますが、自分が同じ年齢の頃に、これだけの決意表明が出来ていたとは、とても恥ずかしくて言えません。

最初に「意を決して」なんて、大仰に書いてしまいましたが、素直な気持で、ただただ、このアルバムを聴き入れば、その感動は今でも新鮮なのでした。

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2 コメント

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Unknown (TK)
2010-01-04 21:19:12
テナーらしいテナーを吹く人ですよね

映画でもいい味出す人でしたね~
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デクスターの生き方 (サイケおやじ)
2010-01-05 13:59:09
☆TK様
コメント、ありがとうございます。

仰るとおりですよね♪
デクスターはお洒落だし、一番難しい自然体で生きるという、私の理想とする人物かもしれません。
返信する

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