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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

真っ向勝負のジョン・パットン

2009-09-17 11:54:05 | Jazz

Understanding / John Patton (Blue Note)

所謂コテコテ派とされるジョン・パットンですが、私は基本的に、この人はモダンジャズにどっぷりのオルガン奏者だと思っています。

そのあたりを存分に堪能出来るのが本日ご紹介の1枚♪♪~♪

録音は1968年10月25日、メンバーはジョン・パットン(org)以下、ハロルド・アレキサンダー(ts,fl)、ヒュー・ウォーカー(ds) という実力派を従えたトリオで、あえてオルガンジャズには付き物のギター、あるいはソウルジャズには必須のエレキベースを排除した編成に、その本気度の高さがあるように思います。

A-1 Ding Dong
 ハロルド・アレキサンダーのオリジナルで、ポリリズムのラテンビートを使った愉快な曲ですが、小型エルビン・ジョーンズとも言うべきヒュー・ウォーカーのドラミング、さらにヘヴィなベースラインと分厚いコードを提供するジョン・パットンに煽られた作者のテナーサックスが、それこそアグレッシプに爆発する展開が痛快至極!
 実際、ヒステリックなフリー寸前にまで昇りつめるハロルド・アレキサンダーは、決して有名ではありませんが、その実力は流石に侮れません。
 そして同じくヒュー・ウォーカーの軽くて重い、二律背反のドラミングが、これまた心地良いんですねぇ~~♪
 ですからジョン・パットンのオルガンが何の迷いも無く、モード節を基本にしつつも、実に素直にノリまくったアドリブを披露するのは当然が必然だと思います。

A-2 Congo Chant
 タイトルどおり、当時の流行だったアフリカ色が強いジョン・パットンのオリジナル曲で、初っ端から不穏な雰囲気を滲ませるハロルド・アレキサンダーのテナーサックスが印象的! そしてもちろん、ジョン・パットンのオルガンは硬派に唸っていますよ。
 それをバックアップするヒュー・ウォーカーのドラミングが、これまたモロにエルビン・ジョーンズしているのも、既にして「お約束」でしょう。
 肝心のアドリブパートでも、そのあたりの気概は満点! と同時に、些かの煮え切らなさが尚更にモダンジャズの最前線という感じも、かえって好ましいと思います。
 つまり極言すれば楽しくない演奏なんですが、こういう真っ向勝負を捨てきれないところがジョン・パットンの資質なんでしょうかねぇ~。繰り返しますが、私は好きです。
 加えてハロルド・アレキサンダーが、またまたの暴走フリーモード! しかし決して迷い道ではないところが、流石にブルーノートの底力だと思います。

A-3 Alfie's Theme
 そして一転、アップテンポで爽快にブッ飛ばす演奏は、ご存じ、ソニー・ロリンズが畢生のヒットメロディ♪♪~♪ ウキウキするようなテーマ部分は、もう少し緩いテンポが良いと思いますが、そうすれば必然的にロリンズバージョンとの比較が避けられませんから、これで結果オーライでしょうか。
 しかし演奏そのものの熱気は素晴らしく、激烈モード節を基本に疾走するハロルド・アレキサンダーが自然とロリンズ節を出してしまうのも、憎めません。正直、ちょいと姑息な感じもするんですが、まあ、いいか♪♪~♪
 気になるジョン・パットンのオルガンは、可も無し不可も無し……、なんですが、その安定感はやはり名手の証に他なりません。

B-1 Soul Man
 これまた嬉しい選曲で、アメリカ南部を代表するスタックスR&Bのブルーノート的解釈が最高です♪♪~♪ 軽いブーガルービートを活かしたイナタイ雰囲気が、まず心地良いですねぇ~♪ ジョン・パットンのオルガンもダークなムードを演出していますが、やはり基本はモード系ハードバップという趣がニクイところです。
 ハロルド・アレキサンダーも、そのあたりを十分に飲み込んだソウルフルなプローを聞かせてくれますが、時折のエキセントリックな節回しに見事に呼応するヒュー・ウォーカーのドラムス! これがジャズ!
 演奏全体の些か弛緩したムードと厳しさの対比という、見事な緊張と緩和が実に楽しいです。

B-2 Understanding
 アルバムタイトル曲は、またまたユルユルのモードファンクというか、ダサ~い雰囲気が逆に好ましいと感じるのは、レアグルーヴなんて言い訳が出来るからでじょうか……。個人的には辛いものがあります。
 ただし妙な心地良さも確かにあって、怠惰な休日、空しいセックスの余韻、あるいは会話の途切れた恋人達の道行き……、そんな感じでしょうか。あまくでも私的な感想ではありますが、そんなこんなも日常生活には必要という演奏だと思います。

B-3 Chittlins Con Carne
 オーラスは本当に聴く前から楽しみになってしまう選曲!
 ご存じ、同じブルーノートでケニー・バレルがソウルフルに演じきった自作の素敵なメロディですからねぇ~~♪
 それをジョン・パットンは軽いボサロックに変換し、ハロルド・アレキサンダーが決して上手くはないフルートでやってしまったという、その味わい深さが、たまりません♪♪~♪
 しかし演奏が進むにつれて白熱化していくバンドのグルーヴ、ジョン・パットンのオルガンのツッコミ塩梅が絶妙です。オリジナルバージョンよりもテンポアップしているところも正解だと思います。
 そしてハロルド・アレキサンダーのフルートが、ハービー・マンやローランド・カークの得意技を拝借する茶目っ気で、思わずニンマリですよ♪♪~♪ 正直言えば、これまた姑息な手段なんですが、それも楽しいのがモダンジャズの醍醐味じゃないでしょうか。私は好きです。
 ちなみに曲タイトルは黒人風モツ煮込み料理と同義でしょう。これがアメリカにしては、なかなか美味いんですよね。ちょっと甘ったるい味なんですが、ここでの演奏は辛口か効いています。

ということで、嬉しい選曲と安定充実した演奏のバランスが良い快楽盤です。

ただし全盛期ジャズ喫茶では完全に無視されていた事実も確かにありましたし、それほど売れたという話も聞きません。実際、1970年代の中古盤屋では捨値の代表格でもありましたから、私はその頃に入手したのが真相です。確か千円、していなかったような……。

しかし内容はイノセントなジャズファンにも十分楽しめるものだと思いますし、それゆえにコテコテ派には些か肩すかしかもしれません。

まあ、そのあたりにジョン・パットンの真髄があると言えば、贔屓の引き倒しではありますが、機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。

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ルー・ドナルドソンのでかい顔

2009-08-02 09:22:32 | Jazz

Signifyin' / Lou Donaldson (Argo)

先日のアルバート・キングに続いて、「でかい顔」シリーズの第二弾が本日ご紹介のアルバムです。

主役のルー・ドナルドソンはハードバップからソウルジャズ全般で、ブルーノートにおける諸作が名盤扱いになっていますが、これはその古巣からアーゴに移籍しての最初のセッションから作られたものだと思われます。

録音は1963年7月17日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、トミー・タレンタイン(tp)、ロイ・モントリル(g)、ジョン・パットン(org)、ペン・ディクソン(ds) という中で、特にギターはブルーノートならばグラント・グリーンになるはずが、やはり別レーベルということで大スタアの参加は流石に無理……。しかし代役を務めたロイ・モントリルが素晴らしい名演を披露しています。

A-1 Signifyin'
 アルバムタイトル曲は、もうこれ以上は無いというゴスペルファンキーがど真ん中のストライク! 初っ端から弾みまくったソウルフルなグルーヴが最高に心地良く、シンプルなリフを使ったテーマからバンド全体の楽しげなムードが横溢しています。
 そして飛び出すジョン・パットンのオルガンが、まさにノリノリ♪♪~♪ 強靭な左手とフットペダルで作り出される4ビートのウォーキングも熱すぎますねっ!
 またロイ・モントリルのギターが、これまた黒い血潮の滾るが如き熱演で、ザクザクと刻むリズムギター、合いの手の調子良さ、さらにペキペキの音色で弾きまくるアドリブソロが、最高の極みつき! 黒人音楽の神髄というか、これぞっ、ソウルグルーヴとモダンジャズの美しき融合でしょうねぇ~♪ 決して頭でっかちではない、体で感じる楽しさ優先主義には身も心も踊らされてしまいます。
 ちなみにこの人は、後で知ったのですが、ニューオリンズ系R&Bの分野ではトップクラスのギタリストで、そういえば、この曲に限らず、セッション全体に微妙に色付けされているニューオリンズ風味は、この名人ギタリストの参加ゆえのことかもしれません。
 するとトミー・タレンタインが、これまたブルーノートのセッションではあまり聞かせたことのない、シンプルなフレーズを中心に組み立てたB級グルメの爽快アドリブですよっ♪♪~♪ この人もまた、マックス・ローチ(ds) のバンドレギュラーとして演じる、些か勿体ぶったスタイルよりは、こういう現場が似合っているように思います。
 そして、お待たせしましたっ!
 いよいよ登場する親分のルー・ドナルドソンが、そのスピード感とグルーヴィなノリが両立した熱帯性のアルトサックスで、美味しいフレーズの大サービス♪♪~♪ いろんな有名曲のメロディを巧み引用しつつ、間然することのないアドリブを聞かせてくれるのですから、もう、辛抱たまらん状態ですよっ!
 演奏全体から発散してくるウキウキするようなムードも最高潮ですし、リフとアドリブの応酬やオカズと主食のバランスもギリギリまで脂っこくて、これがモダンジャズの楽しみの極北じゃないでしょうか。

A-2 Time After Time
 全曲の浮かれたムードを、すぅぅぅ~とクールでジェントルな世界に一転させる、これもルー・ドナルドソンの名人芸が楽しめる好演です。
 それは、ほとんどテーマメロディしか吹いていない、わずか2分半の演奏ですが、イヤミ無くドラマチックに盛り上げていくリズム隊も、なかなかに秀逸だと思います。
 う~ん、それにしても、こういう有名スタンダードを堂々とやってくれる潔さって、やはりルー・ドナルソンならではの感性なんでしょうねぇ。一般的には、あまりにも売れセン狙いのミュージシャンに思われがちの人なんですが、そのジャズ魂は決して軽くないと感銘を受けるほどです。

A-3 Si Si Safronia
 そして、これまた楽しいボサロックのラテンジャズ♪♪~♪
 ベン・ディクソンが十八番の残響リムショット、暑苦しいジョン・パットンのオルガンが、弾みきった曲調にはジャストミートなんですねぇ~♪
 楽しいテーマメロディに続いて飛び出すルー・ドナルドソンの、ちょっと何気ないアドリブの最初のフレーズが、実は聴くほどに飽きない名演ですし、予想外に流麗なフレーズを連ねるトミー・タレンタインも好調です。
 また、ちょっとハコバン的なリズム隊の味わいも憎めませんが、ジョン・パットンの密度の濃いアドリブは、オルガンの新しい可能性すら感じさせてくれますよ。
 あぁ、真夏の海辺で冷えたビールとヤキソバが欲しくなります。

B-1 Don't Get Around Much Anymore
 これはお馴染み、デューク・エリントン楽団の有名ヒット曲を楽しく料理した、まさにルー・ドナルドソンのバンドが真骨頂! ドドンパのリズムを叩き出すドラムスの浮かれた調子に合わせるトミー・タレンタインのオトボケアドリブが、まずは憎めません。
 そして日常茶飯事的なソウルグルーヴに拘るジョン・パットン、親分の貫録を軽いタッチで披露するルー・ドナルドソンという、微妙に粋なところがブルーノートのセッションとは異なる雰囲気かもしれません。
 尤も、このあたりは移籍前の古巣最後のセッションを収めたジミー・スミスの人気盤「Rockin' The Boat」でも感じられたムードですから、当時の流行りだったのでしょうか?

B-2 I Feel In My Bones
 ワルツテンポで演奏されるゴスペルファンキーで、このバンドにしては珍しいといっては失礼かもしれませんが、ちょいと厳かな雰囲気すら漂う味わいが絶妙です。実際、マイルス・デイビスが出てきても、違和感が無いようにさえ思うんですよ。「All Blues」のファンキーソウルな解釈というか……。
 なにしろロイ・モントリルのギターがダークにグルーヴし、トミー・タレンタンイのトランペットがグッと落ち着き、さらにジョン・パットンのオルガンがモード味! そしてルー・トナルドソンのアルトサックスまでもが、珍しくミストーンまで出した前向きな意気込みなんですねぇ。
 しかし、それでもバンドが持ち味の楽しさ優先主義が崩れていないのは、参加メンバーの資質ゆえでしょうか? 個人的にはジョン・パットンとペン・ディクソンのコンビネーションに秘密が隠されているように思います。

B-3 Coppin' A Plea
 そしてオーラスは、如何にも「らしい」、ノーテンキなハードバップの決定版♪♪~♪ ファンキーでソウルフル、それでいてハードバップ本来の4ビートのウネリが、徹底的にシンプルな黒いビートで演じられていきます。
 強いアタックを最高のアクセントに活かしたテーマのヒップなフィーリング、そこへ飛び込んでくるトミー・タレンタインのトランペットには、日活ニューアクションか東宝スパイアクションのサントラ音源の如き痛快さがありますし、続くジョン・パットンのオルガンは、これまたジミー・スミスに敬意を表しつつ、なおさらに煮詰めんとする意気込みが素敵です。
 そしてルー・ドナルドソンは、幾分ダーティな音を交えたフレーズまでも聞かせる、全くの親分肌が余裕です。こういう、何気ない凄みって、今のミュージシャンには醸し出せないものじゃないでしょうか。

ということで、決してガイド本には登場しないアルバムだと思います。なにしろ演じていることがジャズの歴史云々ではありませんし、なによりも我国では、アーゴというレーベルがジャズの本流ではないという評価ですからねぇ。

しかし、黒人ジャズの本質は何もブルーノートの急進性だけで表わされるものではないでしょう。もっと生活密着型ともいうべき、大衆指向の演奏にも、むしろ強くそれが滲んでくると思います。

なによりも、そんな理屈をこねる前に、とにかく聴いてみることが肝心でしょうねぇ。

もちろん十人十色の楽しみ方、感想や批判はあるわけですが、ルー・ドナルドソンの魅力は、そんな諸々に惑わされないところでしょう。以前のように精神論でジャズを語らなくてもよい現代には、最高のミュージシャンだと思います。

でかい顔も当然のジャケットが全て!

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バードにフィリーとピアソン

2009-07-27 09:44:41 | Jazz

The Cat Walk / Donald Byrd (Blue Note)

モダンジャズではトランペットとバリトンサックスという黄金の組み合わせが、なかなかの人気を集めた歴史があります。例えば一番有名なのがチェット・ベイカー(tp) とジェリー・マリガン(bs) の名コンビですが、他にもケニー・ドーハム(tp) とチャールズ・デイビス(bs) というイブシ銀のコラボレーション、そしてドナルド・バードにペッパー・アダムスの真正ハードバップ組には心底、心が踊ります♪♪~♪

まあ、このあたりはモダンジャズでの超一流バリトンサックス奏者の少なさが残念なほどですが、それゆえに今日まで残されたアルバムは、何れもジャズ者には必須の「お宝」だと思いますし、特に本日ご紹介の1枚は長年の個人的な愛聴盤のひとつです。

録音は1961年5月2日というハードバップが完熟した黄金時代! メンバーはドナルド・バード(tp)、ペッパー・アダムス(bs)、デューク・ピアソン(p)、レイモン・ジャクソン(b) という当時のレギュラーバンドにフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) が参加したという素敵なバンドですが、ちなみに、それまでのレギュラードラマーだったレックス・ハンフリーズは何らかの事情で外れ、ドナルド・バードは次なるレギュラーとしてビリー・ヒギンズ(ds) とハービー・ハンコック(p) を雇い入れる直前という過渡期の記録としても、なかなか興味深いと思いますし、結果はもちろん、最高!

A-1 Say You're Mine
 デューク・ピアソンという隠れ名曲を数多く書いているコンポーザーの代表的なメロディと味わいが堪能出来るだけで、幸せな気分になれるのは私だけでしょうか。ちょっとばかり「屋根の上のバイオリン弾き」を連想させられるムードには思わずニヤリですし、全体は仄かに暗いソフトファンキーな「節」がいっぱい♪♪~♪
 ですからドナルド・バードのミュートトランペットも、何時も以上の歌心優先主義が完全に成功した味わい深いものですし、ペッパー・アダムスも持ち前の豪放な音色とバリトンサックスの魅力たる「鳴り」を活かしきった素敵なアドリブを聞かせてくれますよ。
 そして特筆すべきは、やはりフィリー・ジョーのビシッとしたドラミングで、ミディアムテンポのグルーヴを時には倍テンポで煽り、さらにクッションの効いた独特のリックで4ビートの魅力を堪能させてくれるのですから、たまりません。
 また気になる作者のデューク・ピアソンは、流石にツボを押さえた堅実な助演ぶりというか、決して派手なプレイは聞かせてくれませんが、トミー・フラナガンにも通じるようなジェントルな味わいと原曲メロディの膨らませ方には、グッと惹きつけられます。このあたりは演奏全体のふくよかな展開にも、大いに貢献していることが、聴くほどに明らかになるのですが、この人のような名参謀の存在こそが、モダンジャズでは経営維持が難しいとされるレギュラーバンド成功の秘訣だったのかもしれません。
 ちなみにこの曲はデューク・ピアソン自身にとってもお気に入りだったようで、数少ないリーダー盤の中でも数回の録音が残されていますから、例えば同年に作られた代表盤の「エンジェル・アイズ (Polydor)」に収録されたトリオパージョンと聴き比べるのも、楽しいかと思います。

A-2 Duke's Mixture
 これもデューク・ピアソンのオリジナルで、前曲とは一転してのファンキーゴスペル大会が素晴らしい限り♪♪~♪ フィリー・ジョーの楽しげなバックピートやレイモン・ジャクソンの足踏みしているようなベースワークにはノッケからウキウキさせられますよ。イントロだかテーマだか区別も付かないデューク・ピアソンのピアノも流石です。
 そしていよいよ合奏されるテーマメロディのファンキーな気分が実にほどよいマンネリムードで、たまりませんねぇ~♪ これぞっ、本当に「全て分かっている楽しみ」っていうものでしょう。
 ですからドナルド・バードもペッパー・アダムスも、こちらが思っているとおりのアドリブフレーズをテンコ盛りの大サービス! いきなり思い出し笑いみたいな十八番を聞かせるドナルド・バードは、やっぱり素敵ですし、合いの手だけで組み立てたようなペッパー・アダムスのバリトンサックスを煽るフィリー・ジョーという構図も、最高に美しいです。
 しかし正直言えば、こういう曲調になればこそ、デューク・ピアソンのソフトなフィーリングがファンキーへと拘るほどに、違和感があるのも確かでしょう。個人的にはウイントン・ケリーを強く希望してしまうのですが、それを補うのがトランペットとバリトンサックスのメリハリが効いたバックリフなんですから、これも計算された予定調和のスリルなのかもしれません。

A-3 Each Time I Think Of You
 という前曲にあった些かにの煮え切らなさをブッ飛ばすのが、これまたデューク・ビアソンのオリジナルという傑作ハードバップ曲です。独特の「節」を持ったメロディラインの妙は、歌物と呼んでさしつかえないほどでしょう。
 アップテンポで終始、快適なクッションを送り出すフィリー・ジョーの強い存在感も冴えわたりですし、こういう曲と演奏があるからこそ、ハードバップ中毒がますます進行するのだと思います。
 そしてアドリブ先発のペッパー・アダムスが奔流のような歌心フレーズの勢いを聞かせれば、さらにハートウォームで力強いドナルド・バードのトランペットは、音色そのものも大きな魅力になっています。またデューク・ピアソンのピアノが一段と「トミフラ節」に接近しているのも、なかなかニヤリの名場面じゃないでしょうか。

B-1 The Cat Walk
 B面に入ってはアルバムタイトル曲の演奏が、まずは秀逸の極みです。
 如何にもドナルド・バードが書いたに相応しく、ファンキーでゴスペルなムードとストップタイムを巧みに使った構成の見事さは、過剰に飛躍すること無く、それでいて新時代のモダンジャズを強く想起させるものだと思います。
 ですからドナルド・バードのトランペットは、ここぞとばかりに好フレーズを連発する潔さですし、仄かにマイナーな雰囲気も良い感じ♪♪~♪ そしてペッパー・アダムスのダークな歌心も絶好調ですよ♪♪~♪
 するとデューク・ビアソンが、次は俺に任せろ! その素晴らしすぎるピアノの味わいは、全く短いのが悔やまれるほどの名演だと思いますが、そこへ襲いかかってくるが如きファンキーなホーンリフとのコントラストにも、思わず腰が浮くほどの快感を覚えます。

B-2 Cute
 これはお馴染みというか、二―ル・へフティが書いた楽しいリフ曲なんですが、カウント・ベイシー楽団が歴代レギュラードラマーの見せ場として演奏するという趣向が、ここでは特別参加のフィリー・ジョーゆえに、最高のハードバップに結実しています。
 とにかく初っ端から炸裂するフィリー・ジョーだけのドラミング、それに続く猛烈なスピードのアドリブパートでは、ドナルド・バードの全力疾走が全盛期を証明していますが、当然ながらペッパー・アダムスも豪快なツッコミで大健闘! 煽るはずのフィリー・ジョーが押される場面さえあるのですから、強烈至極ですよっ!
 そしていよいよ始まるドラムソロの痛快天国は、ハードバップが最良の瞬間でしょう。ここに聞かれるような名演をライブ現場でも、当時は普通に楽しめたわけですから、タイムマシンが欲しくなるのは必定です。
 
B-3 Hello Bright Sunfolwer
 オーラスは、まるっきりスタンダード曲のような可憐なメロディが素敵なデューク・ピアソンのオリジナル♪♪~♪ ドナルド・バードの小粋なミュートとフィリー・ジョーのブラシの名人芸が演奏を楽しくリードしていく前半部分だけで、ジャズを聴く楽しみを満喫してしまうこと、請け合いです。
 しかし演奏は後半部分に至り、フィリー・ジョーがスティックに持ち替えたところからグイグイと熱くなり、何時しか存在感を強くしているデューク・ピアソンのピアノも流石ならば、鋭角的なフレーズも交えたペッパー・アダムスが本来の持ち味を損なうことなく、なおさらに重厚な歌心を披露するという、まさにハードバップがど真ん中の名演になっているのでした。

ということで、これもモダンジャズ全盛期の中で誕生した名作アルバムだと思うのですが、それゆえに見過ごされがちいうか、聴くチャンスが以外に少ない隠れ名盤かもしれません。実際、ドナルド・バードに限っても、この前後にはブルーノートを中心に人気盤が何枚も存在しているのが、なんか悔しくなるほどに、このアルバムは充実しているのです。

それは主役のトランペットにバリトンサックスという、既に述べた魅力に加え、この時代のスタアドラマーだったフィリー・ジョーの参加が最高の魅力となっているんですねぇ~♪ ドラムスのソロチェンジやロングソロはもちろんのこと、独特のクッションが冴える4ビートの躍動感とハッとさせられるほどに輝くオカズの妙技には、何時聴いてもワクワクさせられます。

また地味ながらデューク・ピアソンの存在感も侮れず、特に4曲も提供したオリジナルの冴えとツボを押さえた助演を聴くほどに、実はプロデューサーのアルフレッド・ライオンは、デューク・ピアソンのリーダー盤を想定していたのではないか!? とさえ思わせる部分を感じるのですが、いかがなものでしょう。

この時代ならではの素敵な車とイカシたファッションでキメるドナルド・バードが写るジャケットデザインも秀逸ですね。

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クールで熱いバド・シャンク

2009-07-23 10:52:21 | Jazz

The Bud Shank Quartet (Pacific Jazz)

バド・シャンクはウエストコースト系モダンジャズの白人アルトサックス奏者で、1950年代からの大スタアですが、ちょうど同じ頃、しかも同じ地域で活躍していたアート・ペッパーという天才プレイヤーが存在していた所為でしょうか、正直、やはり人気も実力もイマイチ及ばないのは否めないと思います。

しかし私はバド・シャンクも同等に大好きで、特に西海岸ジャズの本領とも言うべきバンドアンサンブルから飛び出す短いアドリブソロやブレイクでの閃きのあるお洒落系フレーズ、歌伴セッションにおける上手いフェイクでの絡み、そしてアルトサックスの他に得意だったフルートでの演奏も魅力がいっはい♪♪~♪

ですから当然ながら作られていたリーダー盤にも素晴らしい作品がどっさりあって、中でも本日ご紹介のアルバムは如何にも二枚目の流し目イラストがクールで高得点! まず、これが中身のクールで熱い演奏をズバリと表しているのですから、たまりません。
(p)、ドン・プレル(b)、チャック・フローレンス(ds) という、所謂ワンホーンのカルテットです。

A-1 Bag Of Blues
 ブルースという題名とは裏腹に爽やかで浮遊感に満ちたグルーヴが、如何にも西海岸派の面目躍如でしょうか。しかもテーマが終わって飛び出すバド・シャンクの最初のアドリブフレーズが、もう黄金の瞬間です♪♪~♪
 あぁ、これが私の好きなバド・シャンクの真骨頂で、この歌心とノリの良いリズム感はアート・ペッパーに勝るとも劣らないものと確信するほどです。もちろん続くアドリブパートもフワフワと空中バレエを演じるが如き軽妙さと全てが「歌」というフレーズがいっぱいですし、溌剌としたリズム隊のコンビネーションも最高! 仄かな翳りとツッコミ鋭いフレーズの対比も超一流の証だと思います。
 またリズム隊のハッスルぶりも好ましく、パド・パウエルの白人的解釈からハンプトン・ホーズっぽいハードドライヴな表現までも演じてしまうクロード・ウィリアムソン、エネルギッシュなドン・プレルのペースワーク、そして味な「ケレン」も叩くチャック・フローレンスが憎めませんねっ♪♪~♪

A-2 Nature Boy
 お馴染みのスタンダードメロディを思わせぶりにフルートで演じるバド・シャンク、それに寄り添いながらミステリアスな雰囲気を醸し出すドン・プレルのペースという最初のパートから、それを絶妙に膨らませていくカルテットの妙技が流石の名演です。
 もちろんバド・シャンクのフルートは原曲メロディをフェイクしつつも、相当に思い切った表現も聞かせてくれますし、一瞬ですが、エリック・ドルフィー!? と思わせられる場面さえあるのです。
 そしてクロード・ウィリアムソンが味わい深い伴奏から、幻想的な雰囲気を貫きとおすアドリブパートまで、絶妙のサポートが、これまた光っているのでした。

A-3 All This And Heaven Too
 あまり有名ではないスタンダード曲ですが、個人的には、これが大好きなメロディと演奏で、スローバラードにおけるバド・シャンクの素晴らしさが完全に満喫出来ると思います。
 それは素直な心情吐露と思わせぶりなメロディフェイクの妙技であり、そのバランスの良さは極めて秀逸♪♪~♪ このあたりは決してアート・ペッパーに劣るものではありませんし、それとは別の、まさにバド・シャンクだけの境地じゃないでしょうか。
 そして私は、この曲と演奏ゆえに、A面ばかりを聴いていた時期が確かにありました。
 鋭いツッコミと唯一無二の浮遊感は、何時、如何なるところで聴いても、最高だと思います。如何にも白人らしいアルトサックスのソフトな音色も魅力ですよ♪♪~♪

A-4 Jubilation
 一転してノッケから流麗なアドリブフレーズで演奏に入っていくバド・シャンク! このスピード感とシャープなフィーリングが、アップテンポのバンドアンサンブルとアドリブハードの充実に繋がるのですから、たまりません♪♪~♪
 リズム隊のテンションも高く、ドラマーのチャック・フローレンスは十八番のバスドラを使いまくりますが、このあたりは局地的にイモ扱いもあったりして賛否両論が昔っからありましたですねぇ。う~ん、どうなんでしょうか……? 個人的にもちょいと判断が難しい気分です。しかしこれはVSOP期のトニー・ウィリアムスにも云えたことですし、ねぇ……。
 閑話休題。
 それにしてもバド・シャンクのスピードに乗ったアドリブは爽快ですよっ♪♪~♪ チャーリー・パーカーのフレーズを白人的に解釈したようでもあり、とすれば、クロード・ウィリアムソンが直線的なパド・パウエルを演じたあげく、ハンプトン・ホースっぽい黒っぽさに転じるのも、また納得です。
 それとドン・ブレルのペースのアドリブも、なかなかに高得点!
 LP片面を締め括るには絶好の名演だと思います。

B-1 Do Nothin' Till You Hear From Me
 ご存じ、デューク・エリントン楽団のヒットメロディですから、如何にも白人らしい軽妙な演奏となっても、そのジャズの本質は隠しようもありませんし、それを百も承知のバド・シャンクも見事なアルトサックスを聞かせてくれます。随所にハッとするアドリブフレーズの閃きと歌心が、大いに魅力なんですねぇ♪♪~♪
 しかし、それゆえに手慣れた雰囲気も強く、そのあたりがアルバムを通して聴いた時にマンネリと感じるか否かは、十人十色かもしれません。
 個人的にはファンキーなクロード・ウィリアムソンが流石だと思います。

B-2 Nocturne For Flute
 そのピアニストが書いた秀作オリジナルで、もちろんタイトルどおりにバド・シャンクのフルートを想定したバラード曲♪♪~♪ ゆったりしたテンポで幻想的なムードが全篇を支配していますが、バド・シャンク本人の力強いジャズ魂は不変であり、同時にジェントルなメロディ優先主義は決して崩れません。
 短い演奏ですが、アルバムの流れの中では強い印象を残しています。

B-3 Walkin'
 さて、これがアルバムB面のハイライト! 場合によってはバド・シャンクが生涯の名演とされることもあるほどです。もちろん曲はマイルス・デイビスのハードバップ宣言となった歴史的なモダンジャズのブルースなんですが、ここでのバド・シャンクとバンドの演奏も、実に強烈です。
 まずドン・プレルのペースが強靭にして、最高にしなやか! リズム隊をリードしつつ、完全にバンドのグループを掌握している感じです。
 そしてバド・シャンクのアルトサックスは、これまた緩急自在に鋭いフレーズを積み重ね、あくまでも自分なりのハードバップを追求していくのですが、これは当時としても相当にアグレッシブだったと思いますねぇ~~。スリル満点に浮遊しながら、粘っこい黒人ブルースの雰囲気も並立し、さらにグリグリに突っ込んでいくモダンジャズ最先端のフィーリングが、なかなかに進歩的じゃないでしょうか。
 またクロード・ウィリアムソンにしても、自分の主張を大切にしつつ、自然にそうしたムードに感化されたようなファンキーさを強く打ち出していく展開が、ズバリ、良いです!
 まあ、正直言えば、ここはハンプトン・ホーズに弾いてもらいたかったというのが本音ではありますが、それは言わないのが美しい「しきたり」ってやつでしょうねぇ。その部分をカバーしてあまりあるのがドン・プレルのペースワークでもありますし、終盤のソロチェンジの緊張感とか全体のハードなグルーヴの盛り上がりは、白人ジャズが最も黒人ジャズっぽくというよりも、時代の先端に行ってしまった瞬間かもしれません。
 白人ジャズは和み優先とばかりは、決して言えないのが、この演奏の姿なのでしょうか?

B-4 Carioca
 そしてオーラスは、これもバド・シャンクが十八番としていたラテン風味のモダンジャズ演奏で、曲は早いテンポでエキゾチックなメロディが冴えていますから、バンドの楽しさ優先主義がジャストミート!
 チャック・フローレンスのドラミングも痛快ですし、なによりもバド・シャンクのスピード違反疑惑まであるアルトサックスが痛快至極♪♪~♪ 部分的にアート・ペッパーに近くなっている感じ微笑ましく、しかし渾身のアドリブが憎めません。
 するとクロード・ウィリアムソンが思いっきりスイングしまくって、これまた凄いと思うのですが、これはリズム隊が一丸の勝利でしょうねぇ。ドン・プレルのペースもノリノリですよ。

ということで、ここでのバド・シャンクはアドリブひとつに命をかけたというのは大袈裟かもしれませんが、何時ものセッションよりは自分が中心の世界を見事に築きあげてくれました。それゆえにファンとしても絶対の1枚なんですが、それをやればやるほどに、アート・ペッパーと比較され、あとは……。

このあたりは本当に痛いパラドックスですよねぇ。

ちなみにバド・シャンクには同時期に、もうひとつの「The Bud Shank Quartet」というアルバムがあって、そちらは幾分ソフトなフィーリングと歌心が尚更に優先された仕上がりだと思うんですが、どちらが好きかは、これも十人十色でしょう。

正解は両方とも、好き!

こう言い切るのがジャズ者の本分なんでしょうけどね♪♪~♪

ジャズ喫茶的には、こちらが本命かもしれません。

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マクリーンは甘い物好き!?

2009-07-11 12:19:42 | Jazz

Fat Jazz / Jackie McLean (Jubille)

どんな有名なジャズメンの作品の中にも、聴かず嫌いになっているアルバムがあります。例えばマイルス・デイビスならば「オン・ザ・コーナー」、ジョン・コルトレーンならば「オム」、そしてソニー・ロリンズならば「アワ・マン・イン・ジャズ」というあたりでしょうか。如何にも怖くて前衛フリーのムードが濃厚に感じられるのは、ジャケットのイメージや参加メンバーゆえのこともあるでしょう。まあ、現実的に悪夢のような部分は確かにあるわけですが、虜になったら抜けられない、実に危ない魅力も潜んでいるのです。

さて、本日の主役たるジャッキー・マクリーンの場合で言えば、おそらくはオーネット・コールマンと共演した「ニュー・アンド・オールド・ゴスペル」あたりが筆頭かもしれませんが、どっこい、実はご紹介のアルバムもそのひとつでしょう。

しかし結論から言えば、内容は青春の情熱と哀愁のメロディがテンコ盛りの隠れ人気盤だと思います。

ただイメージ的に敬遠されているのは、チューバでジャズを演じるというレイ・ドレイパーの参加ゆえでしょう。なにしろ、チューバというのは重低音の管楽器ですから、どうしても動きの鈍い、モゴモゴしたフレーズしか出ないと思ってしまうのが当然ですし、そういう先入観念が……。

また参加メンバーの地味~なところも、マイナスイメージかもしれません。

それでも繰り返しますが、内容は極上のハードバップ!

録音は1957年12月27日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、ウェブスター・ヤング(cor)、レイ・ドレイパー(tuba)、ギル・コギンス(b)、ジョージ・タッカー(b)、ラリー・リッチー(ds) というシブイ面々ですが、これは当時のジャッキー・マクリーンが率いていたレギュラーバンドだったと言われています。

A-1 Filide
 レイ・ドレイパーとジャッキー・マクリーンが共作したオリジナルですが、これがケニー・ドーハムの「Blue Bossa」やハンク・モブレーでお馴染みの「Recado Bossa Nova」あたりを痛切に想起させられてしまう哀愁の名曲ハードバップ♪♪~♪ もちろん当時はボサロックという観点はなかったと思われますが、ラテンリズムとマイナーの胸キュンメロディ、せつなくキャッチーなキメのフックがたまりません。
 そのテーマをリードするのは、当然ながらジャッキー・マクリーンとウェブスター・ヤングであり、レイ・ドレイパーのチューバはアンサンブルの彩というのも分かっているアレンジですし、仄かにハスキーなウェブスター・ヤングのコルネットが良い感じ♪♪~♪ ちなみにこの人はトランペットだと、さらにハスキーな度合が強く、「マイルスもどき」も演じてしまう味な名手なんですが、このセッションではコルネットに徹しているのが結果オーライかもしれませんね。
 肝心のジャッキー・マクリーンは当然ながらギスギスした音色で泣きじゃくるという十八番を存分に披露してくれますよ♪♪~♪ テーマメロディのミソを活かしきったフレーズの味わい深さも最高で、いゃ~、やっぱり1950年代のジャッキー・マクリーンは格別です。
 また既に述べたようにウェブスター・ヤングのプレイが翳りを秘めた歌心優先主義で、私は好きです。
 そして気になるレイ・ドレイパーは、あ~ぁ、やっぱり……、というモゴモゴしたアドリブしか演じていませんが、ハードエッジなリズム隊とのコントラストが面白い味を出していますし、管楽器ではなく、ベースソロでも聞いていると思えば結果オーライでしょうか……。
 ただし、この曲でもわかるように、この人の作曲能力は素晴らしく、ジャッキー・マクリーンはそのあたりを評価していたのかもしれません。

A-2 Millie's Pad
 ウェブスター・ヤングが書いたグルーヴィなファンキーハードバップの隠れ名曲♪♪~♪
 と、くれば、アドリブ先発のジャッキー・マクリーンはタメとツッコミの泣き節をメインにしながら、モダンジャズのブルースフィーリングを全開させた快演を聞かせてくれます。ギル・コギンスの硬質な伴奏も、そのムードを増幅させていきますから、たまりません。
 そしてウェブスター・ヤングが十八番の「マイルスもどき」を演じれば、鋭く呼応するベースとドラムスが良い感じ♪♪~♪ 特に強靭なペースワークが魅力のジョージ・タッカーが強い印象を残します。
 さらにレイ・ドレイパーが、こうしたミディアムテンポでは違和感の無いところでしょう。シンプルなフレーズを積み重ねるアドリブが苦笑いを誘うと言えば失礼は重々承知、それでも正直、和んでしまいます。なにしろ、次に続くのがジョージ・タッカーの剛腕ペースソロですからねぇ~。

B-1 Two Sons
 これまた素敵なハードバップの隠れ名曲といって過言では決してない、実にテンションの高い演奏を見事に導くテーマが最高です。
 そしてアドリブ先発が作者のレイ・ドレイパーという仕掛けもジャストミート! アップテンポで必死の全力疾走には好感が持てます。
 さらに続くジャッキー・マクリーンのアグレッシプな勢いは、まさにハードバップがど真ん中の情熱が高得点! また、ここでもハードにドライヴしまくるリズム隊が魅力満点で、特にドラマーのラリー・リッチーは無名ですが、アート・テイラーやルイス・ヘイズのようなハードバップのパワーに満ちたドラミングが好ましいかぎりです。

B-2 What Good Am I Without You
 あまり有名ではないスタンダード曲ですが、スローテンポで演じられる哀切のメロディをリードするのが、この手の演奏が十八番というウェブスター・ヤングですから、名演は「お約束」です。そこに寄り添うジャッキー・マクリーン、ハーモニーを厚くするレイ・ドレイパーというアレンジも気が効いていますねぇ~♪
 そしてアドリブパートではジャッキー・マクリーンが、こちらの思っているとおりのブルーな心情吐露! ハードボイルドな忍び泣きのはずが、思わず不覚の涙が滲んでしまったという佇まいが、実にニクイです。
 さらに、そんな場面に言葉を失うレイ・ドレイパーをサポートするリズム隊のシブイ働きも、モダンジャズの楽しみでしょうねぇ~♪

B-3 Tune Up
 マイルス・デイビスが書いたことになっているハードバップの定番曲ですが、あのお馴染みのテーマが始まる前に、何故かバンドのチューニングのようなパートが入っています。しかし、これは演奏を最後まで聴くと、謎が解けるという仕掛けがサプライズな「お楽しみ」でしょう。
 そして実際に演奏がスタートすれば、そこはアップテンポの灼熱地獄! ジャッキー・マクリーンが直線的なフレーズを連発してブッ飛ばせば、レイ・ドレイパーは完全に乗り遅れの鈍行列車ですが、溌剌としたリズム隊が一瞬も現場の緊張感をダレさせませんから、続くウェブスター・ヤングも油断が出来ません。
 あぁ、それにしても、このリズム隊は実にハードバップしていますね。ピアニストのギル・コギンスにしても、マイルス・デイビスのセッションにちょっと顔を出したくらいの知名度しかありませんが、そのハードなビバップ魂は本物でしょうねぇ~♪ 短いながらもセッションを通しての各演奏では、キラリと光るアドリブを聞かせてくれますし、この曲にしてもツボを抑えてツッコミ鋭い伴奏が流石だと思います。

ということで、これは聴かず嫌いが損をするという典型的な1枚じゃないでしょうか?

粉砂糖をたっぷりと塗したドーナツと山盛りのアイスクリーム、そして毒々しい葡萄が静物画の如きジャケットは、アルバムタイトルどおりに肥満とメタボな体質への保証書という、実に悪い冗談のようでもあり、しかし演奏内容には確かに甘い感傷のようなものがあります。そして特徴的なチューバの響きが太り過ぎで動きの悪くなったところを象徴しているとしたら、これはこれで大正解!

甘くても虫歯になる心配も無いし、人間って自ら毒を好いてしまう性質があっての名盤だと思います。

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モンクを訪ねてグリフィンを聴く

2009-07-07 08:47:33 | Jazz

Thelonious In Action / Thelonious Monk (Riverside)

サイケおやじの変態性の証として、私はジャズに関心を抱きはじめた頃から、難解とか親しめないという言われるセロニアス・モンクに対し、何の違和感もなかったという話があります。

実際、あの不協和音優先主義で訥弁スタイルのピアノ、幾何学的でユダヤ人モードではないオリジナル曲のメロディが逆に刺激的だったというか、本格的にジャズの細道に入ってからも、その最初の快感が忘れられないのです。

さて、本日のご紹介も、そうした中の1枚で、セロニアス・モンクをお目当てにしながら、実はジョニー・クリフィンを最初に聴いて仰天させられた思い出のアルバム♪♪~♪

多分、セロニアス・モンクのアルバムとしても、マイルス・デイビスの演奏とカップリングになっていたニューポートでの1963年のライブ盤に次いで聴いたものと記憶しているとおり、私がジャズ中毒を患った初期症状の頃ですから、そのインパクトは尚更に大きかったですねぇ~。

録音は1958年8月7日、ニューヨークの名門クラブ「ファイブスポット」でのライブセッションから、メンバーはジョニー・グリフィン(ts)、セロニアス・モンク(p)、アーメッド・アブダル・マリク(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、当時のレギュラーバンドによる熱演が繰り広げられています。

A-1 Light Blue
 おそらくはこのセッションで初めて録音されたセロニアス・モンクの新作オリジナル曲でしょう。そして気だるい独特の雰囲気がモダンジャズの真相を明かしてくれるような、実に味わい深い演奏になっています。
 まずはジョニー・グリフィンが、モタレ気味のグルーヴを逆手に活かした密度の濃いアドリブで、その音符をぎっしり使いまくったフレーズの乱れ打ちには本当に熱くさせられますし、ダークでエキセントリックなテナーサックスの音色にもシビレますねぇ~♪
 しかしセロニアス・モンクは流石に唯我独尊! テーマメロディを幾何学的にフェイクし、さらに混迷の極みへと発展させていく手法は、それでいてビートの芯を失わず、訥弁フレーズの「音」のひとつひとつに異様な説得力があるように感じます。
 う~ん、それにしても、こんなユルユルな演奏なのに、全くダレない纏まりは凄いバンドの証でしょうねぇ。

A-2 Coming On The Hudson
 これも当時は新曲だったと思われますが、前曲と似たようなテンポと曲調ながら、もう少し過激なムードを含んでいる感じです。そしてアドリブ先発のジョニー・グリフィンが大ハッスルすれば、セロニアス・モンクの伴奏も容赦がありません。と言うか、ほとんどジコチュウな意地のぶつかりあいがスリル満点! ジョニー・グリフィンも相当に頑固です。
 正直、かなり重苦しい演奏だと思います。しかし鬱陶しいほどのテナーサックスが引っ込み、ピアノがすぅぅ~、と出てくる瞬間の心地良さは意外なほどに♪♪~♪ そこが狙いだったんでしょうかねぇ……?

A-3 Rhythm-A-Ning
 これはお馴染みの演目として、セロニアス・モンクのバンドでは必須の課題ですから、アップテンポで過激に炸裂する「モンク節」のピアノとフルスピードでブッ飛ばすジョニー・グリフィンのテナーサックス、さらにどっしり構えたベースと思いっきり突っ込んでいくドラムスという四竦みが熱血の名演になっています。
 う~ん、それにしても、ジョニー・グリフィンが物凄いですよっ! 全く迷いが感じられないハードバップな姿勢には、流石のセロニアス・モンクも手を焼いたのかもしれませんね。そんなふうに思う他は無いほどの熱演ですから、サイケおやじにしても、最初に聴いた瞬間から「グリフィン中毒」にどっぷり♪♪~♪
 セロニアス・モンクの難解さも、幾分は分かり易くなっている気がしますし、ヤケッパチなロイ・ヘインズには嬉しくも苦笑させられますよ。 

A-4 Epistrophy (theme)
 恒例、セロニアス・モンクのバンドテーマとして、短い演奏ですが、こういうアルバム編集も現場主義の忠実な実践として好ましいと思います。
 そしてバンドの集中力が鋭いです。

B-1 Blue Monk
 セロニアス・モンクのオリジナルとしては、幾分のオトボケが親しみやすい人気曲♪♪~♪ そのあたりを充分に納得したジョニー・グリフィンのテナーサックスが素晴らしく、これはセロニアス・モンクのバンドレギュラーを務めた歴代テナー奏者の中でも、この曲と演奏に関しては、ジョニー・グリフィンが最高にジャストミートしている証明じゃないでしょうか?
 セロニアス・モンクも親分肌の伴奏とアドリブで余裕を漂わせていますし、ロイ・ヘインズの遊び風のオカズやドラムソロ、どこか裏街道っぽいアーメッド・アブダル・マリクのペースワークも自己主張が実に強いです。
 あぁ、やっぱり凄いバンド!

B-2 Evedence
 これはもう説明不要、過激に突進するためにあるようなセロニアス・モンクの古典ですから、バンドが徹頭徹尾、ハードに迫っていくのは必定! しかしここでは、ちょっと重心の低いグルーヴやユーモアも大切にされ、それはもちろんジョニー・グリフィンの個性でしょう。実際、泣き笑いのオトポケフレーズや熱血の早吹きを巧みにミックスさせた即興のスリルは、モダンジャズの醍醐味に溢れています。ナチュラルな熱気を増幅させるが如き息継ぎでの叫びというか、唸り声も結果オーライでしょう。
 すると当然ながらドラムスはビシバシ、ベースはビンビンビン! しかしセロニアス・モンクのピアノが沈黙を守るという、このバンドならではの「掟」が痛快ですねぇ~♪ しかし、その親分にしても、アドリブパートでは激ヤバのタイム感覚や意味不明の和音、ベースのアドリブをはぐらかすようなツッコミフレーズを出しまくりなんですから、たまりません。またロイ・ヘインズのブチキレた速射砲ドラムソロが、大団円の「お約束」として立派過ぎます。

B-3 Epistrophy (theme)
 これまたLP片面を纏める意味で置かれたバンドテーマ♪♪~♪
 実に楽しめる構成がニクイですねぇ~♪

ということで、まずはジョニー・グリフィンが強烈に最高! ここでの熱演にシビレさせられた私は直ぐに「グリフィン巡礼」の旅に出たほどで、例えば兄弟アルバムの「Misterioso」やジャズメッセンジャーズとセロニアス・モンクの共演作、さらに本人のリーダー盤を聴き漁った日々が確かにありました。

もちろん、と同時にセロニアス・モンクの諸作も聴いて行ったんですが、後年のチャーリー・ラウズと、ここでのジョニー・グリフィンとのコンビネーションでは、明らかに異なるムードがあるように感じます。それは演奏自体の自由度というか、ジョニー・グリフィンではバンド全体のノリが些か窮屈というか……。

これはあくまでも素人考えではありますが、実際、テナーサックスのバックで怖い伴奏をやってしまうのがセロニアス・モンクの魅力のひとつであるならば、ジョニー・グリフィンはそれを無視した態度が憎たらしいほどです。

そして実際、ジョニー・グリフィンはこの直後にバンドを去り、チャーリー・ラウズが新参加するのですが、それから以降のセロニアス・モンクは安定期とはいえ、自身の演奏に関してはますます自由な過激道を邁進したと思います。

その意味で、ここでの緊張感に満ちた名演は、まさに一期一会の宝物!

これもまたモダンジャズの黄金時代を満喫出来る名盤でしょうね。

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地味に楽しむウェスの名盤

2009-07-06 08:28:34 | Jazz

The Wes Montgomrey Trio (Riverside)


ウェス・モンゴメリーがリバーサイドと正式契約して最初のリーダー盤ですが、後の名盤群の中では比較的目立たない1枚かもしれません。しかし、これが聴く度に味わいが深まっていくという、なかなか滋味豊かな作品だと思います。

録音は1959年10月5&6日、メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、メル・ライン(org)、ポール・パーカー(ds) という所謂オルガントリオですが、もちろんウェス・モンゴメリーの凄いギターがメインに据えられています。

ちなみにウェス・モンゴメリーはキャノンボール・アダレイによってインディアナポリスで「発見」され、ニューヨークに出て来てのレコーディングだったのですが、何故かギターとアンプはケニー・バレルからの借り物だったのは有名な逸話! う~ん、それにしても、なんでだろう……。

A-1 'Round Midnight
 セロニアス・モンクが書いた、誰もが知っている有名なメロディをジンワリと弾いていくウェス・モンゴメリーのジャズ魂は恐るべし! そのストレートにして微妙なR&B感覚が滲み出るフェイクの上手さ、そしてスローテンポでも凄いビートを失わないギターの運指とピッキングの上手さ!
 ちなみにここで「ピッキング」と書いてしまいましたが、ご存じようにウェス・モンゴメリーは親指だけで弦を弾くというナチュラルなサムピック奏法ですから、独特の柔らかな響きとエレキギターならではのエグ味が化学変化的に融合し、抜群の個性を際立たせているようです。
 それはアドリブ構成においても、単音弾きからオクターヴ奏法、そしてブリブリに迫ってくるコード弾きに至るという、全く憎らしいほどのモダンジャズがど真ん中! フレーズのひとつひとつが有機的な繋がりを保ちつつ、それぞれにハッとさせられてしまうのは、言わずもがなの素晴らしさだと思います。

A-2 Yesterdays
 幾分のダークな雰囲気が魅力のスタンダード曲ですから、ここでのグルーヴィな4ビート演奏にしても、ソフトな黒っぽさ優先主義が実に好ましいと思います。
 それはラウンジ系の演奏を装ったハードバップ狙いがストライクゾーンにビシッと決まった瞬間かもしれません。リラックスしたウェス・モンゴメリーの一人舞台というか、軽めに弾くつもりが、ついつい力んだフレーズを演じてしまう、オチャメなところは流石だと思います。

A-3 The End Of A Love Affair
 これまたモダンジャズでは定番のスタンダード曲をアップテンポでグイグイに弾きまくるという、ついに本性を現したウェス・モンゴメリーが楽しめる演奏です。
 オルガンのメル・ラインも、ようやく自分の出番をもらってハッスルしていますが、正直に言えばB級感は否めません。しかしそれを救っているといっては失礼ながら、ウェス・モンゴメリーのパッキングが最高に素晴らしいですねぇ~。
 
A-4 Whisper Not
 そして、これが実にニクイ選曲!
 ご存じ、ベニー・ゴルソンが書いた決定的な人気メロディですから、その哀愁がウェス・モンゴメリーならではの歌心で解釈されていくという、まさにモダンジャズの至福が楽しめますよ。まずチープなオルガンの響きに彩られた豊かな音量のギターが良い感じ♪♪~♪ 魅惑の原曲メロディを活かしきったフェイクも素晴らしいですねぇ~♪
 そしてアドリブパートのバランスの良い構成も秀逸ですし、メル・ラインの些か亡羊としたオルガンアドリブのバックで光るギター伴奏が、これまた本当にたまりません。
 全く短いのが、残念至極ですよ。

A-5 Ecorah
 ファンキー派の名作曲家としては決して忘れられないホレス・シルバーが書いた隠れ名曲ですから、これも味わい深い選曲だと思います。そしてアップテンポの軽快なグルーヴでノリノリのギター、硬質なビート感が心地良いドラムス、さらにグビグビに鳴り響くオルガンという、完全なるクラブデイトなムードが最高です。
 ただし、この演奏も時間が短く、しかもテープ編集疑惑までもが感じられるのは……。

B-1 Satin Doll
 デューク・エリントンが書いた説明不要の大名曲というだけで嬉しくなりますが、冒頭から幾分生硬にテーマを弾いていくウェス・モンゴメリーとハードなドラムスが、意外にもミスマッチの妙で良い感じ♪♪~♪
 ただし、そのあたりがアドリブパートではイマイチ活かされていないような……。全体的に纏まりが良くないと思うのですが……。メンバー各々は、それぞれに熱演なんですけどねぇ……。

B-2 Missile Blues
 そのあたりの欲求不満が解消される名演が、ウェス・モンゴメリーの書いた、このオリジナルのブルースです。些かガサツなドラムスとB級テイストのオルガンが、豊潤なギターをさらに盛り上げていくという、全くの美しき構図がたまりませんよ。当然ながら前半のオルガンアドリブのパートは熱気が本物です。
 そしていよいよ登場するウェス・モンゴメリーが、絶妙のタメとノリが見事過ぎるジャズギターの真髄を披露♪♪~♪ 豪放なオクターヴ奏法のスラーとかコード弾きに移行していく時の自然体とか、とにかく唯一無二の天才性が、これほどナチュラルに表現出来るとは恐ろしいばかりです。

B-3 Too Late Now
 さらに、これがまた泣けてくるメロディフェイクの天才性を、じっくりと味わえる大名演♪♪~♪ 原曲の良さはもちろんのこと、ここでのウェス・モンゴメリーの存在感は、後年のイージーリスニング系の演奏が決して企画優先ではなかったことの証明だと思います。
 ラウンジムードのアレンジとジャズフィーリングの融合感度も素晴らしく、なによりもトリオが歌心優先主義を貫いているのは高得点!
 何度聴いても、和んでしまいます。

B-4 Jingles
 オーラスは、これもウェス・モンゴメリーがステージでは定番演目にしていたハードバップ風味満点のオリジナル!
 メル・ラインのオルガンが露払いを務めた後に飛び出すウェス・モンゴメリーのギターは、最初は抑え気味ながら、ポール・パーカーのハードなドラミングに煽られて熱くなっていくところが、まずは痛快です。ヤケッパチ気味のコード弾きにはニンマリさせられますよ。
 そしてクライマックスでは、これもヤケッパチなドラムスとのソロチェンジが、本当に熱気ムンムン! というか、この部分になると意図的とも思えるほどにドラムスのミックスバランスが強くなっているんですねぇ~。これぞ、リバーサイドならではの裏ワザ!?

ということで、メンバーは地味なんですが、選曲の味わい深さとリバーサイド特有のエッジの効いた硬質な録音が楽しめるアルバムです。ただし録音的な問題かもしれませんが、低音域が時折強すぎて、濁った感じとモヤモヤした雰囲気に感じられるのは私だけでしょうか……。

このあたりは最近のCDを聴いたことがないので一概には言えませんが、アメリカプレスのモノラル盤だと、それなりにハードバップな音がするので、私は好きです。ちなみに1970年代にプレスされた日本盤アナログLPはステレオ仕様だったこともあり、???が正直な気持ち……。私が何故に前述のモノラル盤を入手したか、ご理解願えると思うのですが……。

肝心のウェス・モンゴメリーは借り物ギターだったとしても、そんなことは関係ねぇ~! というばかりの安定性とダイナミックなジャズ魂、さらに最高の歌心を完全披露しています。ただし既に述べたように、後にどっさりと吹き込まれる名盤群に比べれば、こじんまりした感は否めません。

ですからジャズ喫茶で聴くと冴えない雰囲気になるんですが、しかし自宅鑑賞だと、これがちょうど良いんですねぇ~。実際、アメリカにはジャズ喫茶という素晴らしき文化は無いわけですから、制作側も考慮していないのが当然なんですが、小さなモノラルの電蓄プレイヤーで聴いても充分に楽しめるレコードかもしれません。

とすれば、選曲にも納得!

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キャノンボールが笑顔の名盤

2009-06-24 12:36:56 | Jazz

The Things Are Getting Better / Cannonball Adderley (Riverside)

キャノンボール・アダレイの代表的な人気盤のひとつですが、やはり「全ては順調~♪」というアルバムタイトルに偽り無しの演奏、そしてジャケットに写る本人の笑顔が実に印象的ですよね。

連日のハードワークに些か疲れ気味のサイケおやじの願望が、ここにあるのは言わずもがなでしょうか……。

録音は1958年10月28日、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ミルト・ジャクソン(vib)、ウイントン・ケリー(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) という、当時のジャズ界ではトップを競っていたマイルス・デイビスのセクステット、MJQ、そしてジャズメッセンジャーズが揃い踏みという絢爛豪華な大セッション♪♪~♪ もちろん内容も素晴らしいの一言に尽きます。

A-1 Blues Oriental
 タイトルどおり、ちょっとアジア風エスニックなテーマメロディには悪い予感もするのですが、そこは作者がミルト・ジャクソンとあって、アドリブパートはブルース味がひたすらに濃厚! 真っ黒な余韻がたまらないヴァイブラフォンの響きが、まず最高です。
 そしてキャノンボール・アダレイの大袈裟とも言えるアルトサックスの泣き叫びにしても、実はプッ太い音色とファンキーフレーズのビバップ的な展開を大切にしています。
 となれば、ウイントン・ケリーの粘っこい飛び跳ね節も「お約束」ですし、アート・ブレイキーの強靭なバックピート、さらに土台を固めるパーシー・ヒースの堅実な演奏も流石の味わいで、まさに人気アルバムの露払いとしては、これ以上はありえないと思います。

A-2 Things Are Getting Better
 そして続くのがゴスペルファンキーが極みのアルバムタイトル曲♪♪~♪ 最高のリズム隊によって作られるミディアムテンポの強力なグルーヴには、おもわず手拍子、足拍子、ですよっ! ミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが抑え気味なテーマの提示、それを熱く煮詰めていくキャノンボール・アダレイのアルトサックスも良い感じ♪♪~♪
 ですからアドリブパートの楽しさ、熱狂は保証付きの痛快さがゴキゲンです。
 あぁ、それにしても、ここでのアルトサックスの鳴りっぷりは凄すぎますねぇ~♪
 またミルト・ジャクソンのハードバップな躍動感は水を得た魚ですし、続くウイントン・ケリーのファンキーな味わい、そしてパーシー・ヒースの職人芸が好ましいペースソロ!
 全く間然することのない名演だと思います。

A-3 Serves Me Right
 一転して陰鬱な「泣き」のメロディが最高というスロ~バラードの世界ですが、これもまた参加メンバーにとっては薬籠中の名演が胸に迫ってきます。まずヘヴィなイントロのキメから天才的な歌心を披露するミルト・ジャクソンが実に良いですねぇ~♪
 そして繊細な節回しでテーマを吹奏するキャノンボール・アダレイの神妙なプレイも、侮れません。サビをキメるミルト・ジャクソンの上手さが、これまた絶品♪♪~♪
 ですからアドリブパートもこの2人がメインになるのですが、力強いリズム隊の働きも流石だと思いますし、全篇に横溢する気分はロンリーな味わいにシビレますよ。

A-4 Groovin' High
 ビバップの聖典曲に挑戦するバンドメンバーでは、やはりチャーリー・パーカーを意識せざるをえないキャノンボール・アダレイが大ハッスル! しかも自らの個性を失うどころから、逆に豪快なウネリと破天荒なファンキー節が炸裂した名演を聞かせてくれます。
 ただし、それゆえに些かの「軽さ」も否めません。
 このあたりはアルバム全体の中でも異質という感じなんですが……。
 それを普遍的なハードバップの王道にしているのが、ミルト・ジャクソンやウイントン・ケリーのマンネリ寸前というアドリブと言えば、贔屓の引き倒しでしょうねぇ。
 しかし、これが実に心地良いんですっ!
 ドラムスとベースのストライクゾーンど真ん中の4ビートも、この時代ならではの魅力だと思います。

B-1 The Sidewalks Of New York
 どうやらスタンダード曲のようですが、クレジットではアレンジがキャノンボール・アダレイということで、微妙なゴスペルムードを湛えたテーマのアンサンブルが素敵です。
 そしてアドリブパートでは、それを増幅していくミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンがニクイばかりですし、キャノンボール・アダレイのアルトサックスが泣き叫ぶブレイクから突進していく勢いは絶品! グッと馬力を強くするリズム隊も恐ろしいばかりですよ♪♪~♪
 まさにこれがハードバップ! イェェェェェェ~~~!
 ハッと気がつくと、ジャズモードへどっぷり自分に怖くなるほどです。

B-2 Sounds For Sid
 キャノンボール・アダレイが書いたオリジナルのブルースですから、初っ端からの大袈裟なアルトサックスの泣き叫びも、決してクサイ芝居と言ってはなりません。
 続いて重厚なグルーヴを演出するパーシー・ヒースのペースワーク、さらに十八番の展開に歓喜のブルースフィーリングを発散させていくミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが、もう最高♪♪~♪ それに絡みつつ絶妙な伴奏を聞かせてくれるウイントン・ケリーにも嬉しくなります。
 そして当然、キャノンボール・アダレイがダーティなファンキーフレーズを駆使して綴るブルースな表現は、大袈裟との一言では片付けられないと思いますし、抑え気味のバックピートが逆に凄いというアート・ブレイキーのドラミングも秀逸でしょう。もちろん、ここぞっ、では怖いリックを敲いていますよ。

B-3 Just One Of Those Things
 さて、オーラスは有名スタンダードのハードバップ的解釈♪♪~♪ その典型が実に見事な快演になっています。まずはアップテンポながらヘヴィなグルーヴを提供するリズム隊が、やはり素晴らしいですねぇ~♪ アート・ブレイキーのシャープなキメとメリハリが特に強烈です。
 そしてアドリブ先発のミルト・ジャクソンが、まさに驚異的なノリでキャノンボール・アダレイへとバトンを渡せば、待ってましたの爆裂アルトサックスが豪放なフレーズを連発してくれますから、本当にたまりません。ウネリと鳴りっぷりも凄いですねぇ~♪
 さらにウイントン・ケリーが、これまたこちらの思っているとおりのスイングしまくったピアノを聞かせてくれますから、まさにハードバップの桃源郷ですよ。
 ラストテーマへと纏めていくバンドの一体感も最高だと思います。

ということで、駄演や捨て曲がひとつもない、名盤アルバムだと思いますし、これが日常的に行われていた当時の凄さは、ちょっと筆舌に尽くし難い感じですね。

歴史的にはキャノンボール・アダレイにしても傑作盤「イン・シカゴ」からマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」を経て、ナット・アダレーとの兄弟バンド再結成へ向かう上昇期ですし、ハードバップというか、モダンジャズそれ自体が最高にヒップだった時代の記録として、至極当然の結果なのかもしれません。

それゆえに「聴かずに死ねるか!」の1枚だと思いますが、直接的にスピーカーに対峙しなくとも、自然にグッと惹きつけられる魅力満載の名盤が、これっ!

あぁ、本日も断言してしまったです……。

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フラー、クラーク&ヒューストン

2009-06-23 11:44:19 | Jazz

Bore & Bari / Curtis Fuller (Blue Note)

昨日、ちょっと書きましたカーティス・フラーのアルバムが本日ご紹介です。

そのタイトルどおり、トロンボーンとバリトンサックスによる低音の魅力が横溢したフロント陣、それを支えるリズム隊の繊細にしてハードエッジなグルーヴがたまらない、実に隠れた人気盤♪♪~♪

録音は1957年8月4日、メンバーはカーティス・フラー(tb)、テイト・ヒューストン(bs)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という、ハードバップど真ん中の人選が嬉しいところです。

A-1 Algonquin
 アップテンポの合奏からして、実にグルーヴィ! これぞブルーノートのサウンドが痛快すぎるマイナーブルースです。
 そしてアドリブ先発は作者のカーティス・フラーですから、魅惑のハスキートーンで調子の良いフレーズを吹きまくるのは「お約束」ですし、続くテイト・ヒューストンのバリトンサックスにしても、ツボを外さないギスギスした表現が流石です。
 さらにソニー・クラークが十八番の「ソニクラ節」しか出さないんですねぇ~~♪ もう、このあたりはハードバップ愛好者には、わかっちゃいるけど、やめられない世界でしょう。パッキングはもちろんのこと、アドリブソロでも冴えを聞かせるポール・チェンバース、ガッツ溢れるシンバルワークのアート・テイラーという役者の揃い踏みは、まさに当時の勢いだと思います。

A-2 Nita's Waltz
 これもカーティス・フラーのオリジナル曲で、タイトルどおりにワルツテンポの愛らしいメロディなんですが、やはり低音楽器のユニゾンで演じられては、些かのガサツな雰囲気が勿体無い……。
 しかしそれを見事に本来の味わいへと引き戻してくれるのが、ソニー・クラークのピアノです。とにかく泣き節のオンパレード♪♪~♪ せつないファンキーフレーズと小粋で真っ黒なピアノタッチにはゾクゾクして感涙させられますよ。
 そしてミディアムグルーヴの4ビートを最高にリードしていくドラムスとベースのコンビネーションも抜群ですから、カーティス・フラーのハートウォームなアドリブも冴えまくり♪♪~♪ 終盤を締めくくるポール・チェンバースのペースソロも意欲的です。

A-3 Bone & Bari
 アルバムタイトル曲は偽り無しというアップテンポの豪快なハードバップですが、ここでもソニー・クラークがテーマのサビ、そして先発のアドリブと大活躍! 実際、見事な「ソニクラ節」が徹頭徹尾、楽しめますよ♪♪~♪
 また、それを追撃して登場するテイト・ヒューストンのバリトンサックスが痛快至極! おそらくこの人はR&B系のプレイヤーだと思うのですが、アタックの強さよりもフレーズの流れや構成に拘った特徴が、場合によっては中途半端に聞こえてしまうように感じます。しかしそれがここでは結果オーライ! ハードバップしか念頭に無いという強靭なリズム隊との相性もバッチリです。
 となれば、リーダーのカーティス・フラーも大ハッスル! ホノボノとした春風の吹き流しのようでもあり、黒人街の埃っぽい土煙りのようでもある、その流麗にしてハスキーなフレーズの連なりは、まさにファンキ~~~♪

B-1 Hear & Soul
 原曲はホギー・カーマイケルが書いたホンワカメロディの人気曲ですから、まさにカーティス・フラーにはジャストミート♪♪~♪ しかもここではワンホーン演奏ですから、尚更にたまりません。
 快適なハードバップのスイング感も満点にテーマを楽しくフェイクしていくカーティス・フラーのトロンボーンは、これぞっ、真骨頂! 伸びやかな歌心が存分に味わえます。
 またソニー・クラークがイントロから絶妙の伴奏、さらにアドリブのファンキーな味わいが本当に絶品の名演です。しかもそれが重心の低いアート・テイラーのドラミング、そして躍動的なポール・チェンバースのペースワークと共謀関係にあるんですから、心底、モダンジャズの気分は最高♪♪~♪ 特にアート・テイラーのシンバルは、何時聴いても素晴らしい限りです。

B-2 Again
 これもスタンダード曲ですが、こちらはテイト・ヒューストンのバリトンサックスをメインにしたワンホーン演奏!? う~ん、このあたりはセッションが双頭リーダー作として企画されたということでしょうか。
 まあ、それはそれとして、ここでのテイト・ヒューストンは、じっくりとしたテンポで息の長いフレーズ、そして幾分モゴモゴした節回しが絶妙の味わいを醸し出すという、実に憎めないことをやってくれます。しかも意想外な歌心の発露というか、原曲メロディを巧みに活かしたアドリブフレーズが日々の演奏の中から生まれたとしたら、それこそがモダンジャズ全盛期の証かもしれません。
 もちろんソニー・クラークのピアノもしぶとく、ポール・チェンバースに至っては十八番のベースワークがツボをしっかりと刺激してくれますから、テイト・ヒューストンのラストテーマの吹奏が、ジンワリとした余韻となって残ります。

B-3 Pick Up
 さてオーラスは、いきなり激烈なテーマリフの合奏からテイト・ヒューストンのゴリ押しブローが飛び出します。さらにバックのリズム隊が過激に後押しすれば、要所で絡んでくるカーティス・フラーのトロンボーンがギトギトに脂っ濃い、ナイスな演出!
 ですからアドリブパートでのツッコミも激ヤバで、こんなアップテンポで演じられるところにハードバップの真髄が堪能出来ますよ。
 あぁ、ついついボリュームを上げてしまいますねぇ~~♪
 久しくジャズモードに入れなかったサイケおやじにしても、思わずイェェェェ~!
 キメのアタックも強いリズム隊は極めて自然体でありながら、しかしバンドが一丸となって突進していく意志の疎通も最高だと思います。

ということで、決してガイド本に掲載されるような歴史的な名盤ではありませんが、ハードバップとしては一級品! ちょっと聴きには、ありきたりという雰囲気も感じられるのですが、それはあまりにも贅沢な我儘です。実際、ここでの安定した出来栄えは、簡単には再現不可能でしょう。

ソニー・クラークも最高ですし、流石はブルーノートを痛感させる人気盤に偽り無し!

本日は、そう断言させていただきます。

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動くフィリー・ジョーに感涙

2009-06-11 10:40:06 | Jazz

Bill Evans Trio 1978 & Quartet 1972 (Jazz Shots = DVD)

近年、ビル・エバンスの映像物はいろいろと出回って嬉しい状況ですが、またまた凄い発掘が、本日ご紹介のDVD♪♪~♪ ジャケットに記載されたメンツを見ただけで、サイケおやじは、うっ、と呻いてしまったですよ。

☆1978年7月19日、イタリアのウンブリア・ジャズ祭 (約28分)
 01 The Peacocks
 02 Theme From Mash
 03 Midnight Mood
 04 Nardis / Announcement By Bill Evans

 まず、このライブ、メンツに仰天!
 ビル・エバンス(p)、マーク・ジョンソン(b)、そしてフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) ですよっ!
 う~ん、動くフィリー・ジョーの映像って、極めて貴重じゃないでしょうか!?
 サイケおやじは、この偉人ドラマーの実演はもちろんのこと、ライブ映像にしても見たことがありませんでしたからねぇ~。内容はどうあれ、その事実だけで迷わずゲット! そして歓喜悶絶♪♪~♪
 と、ノッケから何時も以上に大袈裟な書き出しになりましたが、実際、画質も演奏もAランクの「お宝」でした。そして当然、カラー映像♪♪~♪ 
 まず冒頭の「The Peacocks」は、このライブ直前に完成させていた究極耽美の名盤「You Must Believe In Spring (Warner Brs.)」でも一際印象的に演じられていましたが、ここでは聴衆を前にした緊張感がアグレッシブなピアノタッチに結実したというか、よりナチュラルなジャズっぽさが実に良いです。気になるフィリー・ジョーはブラシ主体で幾分地味ですが、流石にツボを抑えた名人芸だと思いますし、マーク・ジョンソンの控え目なペースワークも良い感じ♪♪~♪
 そして続く「Theme From Mash」もまた、「You Must Believe In Spring」で演じられたメロディ優先主義のエバンス風耽美主義が、尚更に熱く再構築されていきます。フィリー・ジョーのドラミングも一転してスティックでビシバシ、やってくれますよ。
 ちなみにビル・エバンスとフィリー・ジョーのコンビネーションは、1962年頃までは鉄壁の相性で名演・名盤を残しているのは皆様ご存じのとおりですが、それが時代の流れとビル・エバンスの音楽性の深化によって、例えば1967年のライブを収めた「California Here I Come (Verve)」あたりを聴くと、如何にもミスマッチになっていました。それゆえに、ここでのコンビ復活は正直、ちょっと悪い予感もあったんですが、結論は問題無し!
 ちょうど晩年のビル・エバンスは、何かに急き立てられるような強いピアノタッチとハードなドライヴ感を前面に出すようになっていましたし、前述の名盤「You Must Believe In Spring」を制作した直後には長年のパートナーだったエディ・ゴメス(b) とも別れ、新たなメンバーでのトリオ演奏を試していたのでしょうか? 晩年のレギュラーとなるマーク・ジョンソンにしても、おそらくはビル・エバンスと共演して間もない時期の記録だと思います。
 そのあたりの勢いが如実に出たのが「Midnight Mood」で、なかなか前向きなピアノトリオ演奏として、各人の技も冴えまくり! ひたすらな自己表現に没頭するビル・エバンス、躍動的なペースワークでピアノに絡み、さらにアドリブソロでは相当にツッコミ鋭いマーク・ジョンソンは、やはりタダ者ではありません。そしてフィリー・ジョーの余裕のドラミング! 今まで写真でしか見ることの叶わなかった、あのポーズで動いている、それだけでシビレますよっ♪♪~♪
 そのクライマックスが、ビル・エバンスのライブには必須の「Nardis」ですから、たまりません。いきなり一人舞台の独演で攻撃的なピアノソロを披露するビル・エバンスには怖いものさえ感じますが、さらにドラムスとベースを呼び込んでからのテーマ演奏の荒っぽさは、如何にもジャズのライブ! そこからマーク・ジョンソンが渾身のアドリブを演じる場面のカメラワークが、完全に「1970年代」しているのも、嬉しい限りです。
 こうして、いよいよ最大の見せ場というか、お待たせしましたっ! フィリー・ジョーのドラムソロには、一瞬も目が離せません! あぁ、あのリックは、こうして敲いていたのかっ! 2連のバスタムや追加されたトップシンバルを駆使しながら、独特のアクションと如何にも黒人らしいファッション♪♪~♪
 本当に、長生きはするもんですっ!

 05 Solar (incomplete)
 このトラックは、上記と同日の演奏で、ビル・エバンスのトリオにリー・コニッツ(as) が加わっていますが、残念ながら途中で終了……。しかもビル・エバンスのピアノソロが切られているような感じですし、マーク・ジョンソンのアドリブに入ってから、すぐにフェードアウトは勿体無い!
 リー・コニッツの何時もながらの十八番という、何を吹いているか分からないのに気持ちが良いアドリブが冴えているだけに、完全版の復刻に期待を残します。

☆1972年2月12日、ドイツでのスタジオリハーサル (約26分)
 06 Waltz For Dissention
 07 Stockenhagen
 08 What Is Thing Called Love ?
 09 Sao Paulo
 10 Northem Taril

 これがまた、驚愕の映像で、メンバーはビル・エバンス(p)、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds) という当時のレギュラートリオに、その頃は欧州で活動していたハーブ・ゲラー(as,fl) が加わった凄いバンド! どうやら翌々日に予定されていた特別コンサートのリハーサルらしいです。
 その所為でしょうか、緊張感とリラックスしたムードが有名ジャズメンの日常をも包括した興味深さで、咥え煙草のエディ・ゴメスとか、譜面ばっかり見ているマーティ・モレルとか、ジョークかマジか意味不明の打ち合わせとか!?!
 しかしハーブ・ゲラーの本気度は高く、久々にアメリカの超一流と共演出来る喜びだけとは言えないものを感じます。特に「What Is Thing Called Love ?」のアルトサックスは良いですねぇ~♪ フルートを聞かせる「Stockenhagen」は、ちょっと大野雄二のサントラ音源みたいで、これも素敵ですよ。
 ただし演奏は、その性質上、全てが完奏されているわけではありません。しかしメンバー各々の見せ場というか、アドリブはしっかりと披露されていますし、なによりもスタジオリハーサルという、一般のファンには普段見られないところが、カラー映像で楽しめるのは高得点でしょう。画質はフィルムの劣化により「-A」程度ですが、特に問題は無いと思います。

ということで、けっこう個人的には、たまらないブツでした。

演奏場面はもちろんのこと、例えば前半のパートではビル・エバンスがマーク・ジョンソンに落ちている譜面を拾ってあげたり、ちょっと悪いクスリの影響すら感じさせる演奏中の表情、さらに当時のステージならではの照明と映像の兼ね合いが日活ニューアクションしていたり!?! また後半のスタジオリハーサルでは、ハーブ・ゲラーの生真面目なところが、ファジーなビル・エバンスのトリオと絶妙に連携していく過程が、興味深々でした。

収録時間はトータル約54分ですが、なかなか密度の高い作品だと思います。

そして動くフィリー・ジョー♪♪~♪

サイケおやじは、それだけで満足しています。

コメント (2)
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