それはある地蔵様のある峠を、通った時のことでございます。
売店はまだ閉鎖中で駐車場に車はありません。一人階段を上がって行くと、川原石を敷き詰めた、千羽鶴も鮮やかな地蔵様が祀られておりました。
鐘楼を背にして、居並ぶ千体地蔵を撮っていた時で御座います。うしろから「がお~~ん」と鐘が鳴ったのでございます。びっっくりして振り向くと、誰も居ないはずの鐘楼で鐘が鳴り、ひもが揺れていました。
思わず「びっくりしたー!」と声を出しました。でもあたりに人影は見えません。誰かがいたずらして、隠れたのだろうと思いました。
耳を澄ますと「カリカリ」と機械的な音がかすかに聞こえてきます。鐘の前まで近づいた時、またも「がお~~ん」とやられました。音量が大きく、またも不意打ちを食らってしまいました。
何のことはない、オートマチック鐘楼だったのです。ちょうど12時でしたので、その時間に鳴り響いているのでしょう。
すっかり魂を抜かれた旅人は、小銭入れを取り出し、あらためて地蔵様を拝んで帰りましたとさ。
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