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~サッカーを中心に日々の雑感など~

日めくり万葉集(43)

2008年03月09日 | 万葉集
日めくり万葉集(43)は作者未詳の歌。選者は俳優で、30年前から八ヶ岳の雑木林を育ててきた柳生博さん。

【歌】
思(おも)はぬを
思(おも)ふと言(い)はば
真鳥(まとり)住(す)む
雲梯(うなて)の杜(もり)の
神(かみ)し知(し)らさむ

巻12・3100  作者未詳

【訳】
思ってもいないのに、思っていると言ったら、真鳥の住む、雲梯(うなて)の森の恐ろしい神がお知りになるでしょう。

【選者の言葉】
天狗の狗に鷲と書くと狗鷲(いぬわし)という。全国に天狗岩とか天狗岳とかあるが、そういう絶壁に巣を作る。そこからわーっと里山へ降りてきて、そこで大きな生き物を食べる。場合によっては人間の赤ん坊もさらわれることがある。そういう大いなるもの、だが決して悪者ではない。つまりわたしたちよりは大いなるもの、という意味で使われている。

もう5,6年前の話。真冬に小鳥たちがさえずっていたが、一瞬シーンと水を打ったように鳴きやんだ。しーっという感じに静かになった。なんだ?と思ったら、翼を広げると2メートルはあるかという、狗鷲がぐわーっと自分のほうへ向かってくる。

そしてわーっとまた、向こうのほうへ飛んでいく。木漏れ日がさささっと木々に陰を作る。そのときには言葉も出ないし、すごいなあーと。神のようなものを恐れる気持ちと、もう一つ、表彰状をもらったような、君たちはいいことをしているよ、えらいぞと、見ていてくれているようなな、そう思った。

そういう風にして里山の人たちは千何百年も、いや二千年近く、生きてきているのではないだろうか。

【檀さんの語り】
嘘を見通す神にかけて、自分の恋心の誠実さを訴える歌。大いなるものがじぶん達の言葉や行いをいつも見ている。“雲梯の社”とは、奈良県橿原(かしはら)市の河俣(かわまた)神社のこと。では真鳥とは?鷲を指すと考えられている。その中でも全国に分布して古くから人々に恐れられてきたのが狗鷲(いぬわし)。

狗鷲(いぬわし)は今、人里離れた山岳地帯にだけ住み、絶滅の危機に瀕(ひん)している。柳生さんは30年前から八ヶ岳の裾野(すその)で荒れた人工林を手入れし、雑木林(ぞうきばやし)を育ててきた。

【感想】
柳生さんのお話にはいつも感動する。大いなるものということと同じことかどうかわからないが、誰が見ていなくても自分に恥じないように行動するということ。それは人間の根本的な誠実さにつながることで、そういう表に見えないところでの大人の行為が社会を支えている。

そういうことが、このごろは減っているのかもしれない。逆に言うと、誰も見ていなければ、発覚さえしなければ、お金にさえなれば、何をしてもいい、ということになってしまう。

【調べもの】
○真鳥(まとり)
鷲(わし)の異称。またふくろう、みみずくのような夜鳥ともいう。また鶴をいう。












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