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日めくり万葉集(214)

2008年11月30日 | 万葉集
日めくり万葉集(214)は巻3・416、大津皇子(おおつのみこ)の歌。選者は作家の浅田次郎さん。

【訳】
磐余(いわれ)の池に鳴いている鴨(かも)を今日を限りに見て、私は雲に隠れ去って死んでゆくのか。

【選者の言葉】
万葉集を通して読む機会があり、これは僕らが考えていた歌集ではなく、歴史を背景にした壮大な叙事詩であるということに気が付いた。その中で大津皇子はスーパーヒーロー。いい男で身体も立派、文章も良くできて、武道にも巧(たく)みである。

この歌は無念さとはちょっと違うような気がする。無念という《念》を残していない。死を命ぜられたのだから、これは死ぬ他はないという《いさぎよさ》を感じる。この《いさぎよさ》がいかにも大津皇子のスーパーヒーロー像と重なる。この瞬間に大津皇子のキャラクターというのがパッと出来上がる。

小説を書いているとそういう瞬間を模索しながら書いている。どんな美辞麗句を並べても主人公の性格をピッタリ出来ない。でもある1行、あるセリフの一つで主人公のキャラクターがピッタリ確定する。そのときに小説家としてやった!と思うが、そういう感じの1首だろうと思う。

最後のところの《雲隠りなむ》という客観的ないい方が、本人が詠った歌としては適当な表現ではないのではないかとよく言われる。誰かの代作で大津皇子の立場に立って後世に大作されたのではないかとも言われる。万葉集の文学作品の性格を考えるとどちらでもいい。

壮大な叙事詩の中の1首というように考えれば、それはどうでもいいことで、むしろ、この1首によって大津皇子という人の人格が綺麗に表現されたということの方に大きな意味がある。

【檀さんの語り】
この歌の作者、大津皇子(おおつのみこ)は天武天皇の3番目の皇子(おうじ)。人望が厚く、次の天皇にと期待する声も多かったという。しかし天武天皇が亡くなるとまもなく、大津は謀反の疑いで逮捕、処刑された。この歌はその直前に読まれた歌。

【感想】
大津皇子が処刑される前に詠んだ辞世の歌。天武天皇の妻と大津皇子の母親とは姉妹の関係。姉が大津皇子とその姉の大伯皇女(おおくのひめみこ)の母親だが子どもを残して亡くなった。つまり天武天皇という夫を挟んで姉妹が妻だったというのだから、この時代はややこしい。

さらに天武天皇の死後、次ぎの天皇を誰にするかという問題が出て来ると、天武天皇の后で後の持統天皇は自分の息子、草壁皇子をどうしても次ぎの天皇にしたいということで、いかにも人望もあり、能力もある姉の子ども、大津皇子を謀反の罪で殺してしまうというのだから。まるでシェイクスピアの劇のようだ。

そうした権力争いの政争の渦の中に巻き込まれて泡のように消えていった人物。そういう人間もいたことをなんとか形として残したいという、編纂する側の意志が壮大な叙事詩という形になったのだろうと思う。











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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
意識付けが進む (henry)
2008-12-03 12:03:29
コメントありがとうございます。
先週の朝日新聞のスポーツ欄に《岡田Jの得点力改革》という記事が載っていました。

岡田監督は就任当初から「シュートが下手ならチャンスの回数を増やし、ゴールにより近づいて打てばいい」という発想を口にしてきたそうです。それが試合を重ねるごとに、少しづつ形になってきたということのようです。

・・・「共通するのは多くの選手が絡み、速いパス回しでDFを崩している点だ。コーチの一人は『選手の意識付けが進んできた。まだ少ないが、狙いとする形は増えてきている』と明かす。」・・・

なるほど~と岡田監督になってからはじめてと言っていいほど、代表戦に興味が湧いてきましたよ。

スピード系の小柄なFWが多く召集されるようになったと言うのは、ちゃんとした理由があったということですね。
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