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日めくり万葉集(16)

2008年01月29日 | 万葉集
日めくり万葉集〈16〉、選者は作家の林望(はやしのぞむ)さん。林さんは日本文学の研究者から作家になった。恋愛や女性の生き方についても多くのエッセイを書いている。

【歌】
験なき          しるしなき
恋をもするか       こひをもするか
夕されば         ゆふされば
人の手まきて       ひとのてまきて
寝らむ児故に      ねらむこゆゑ(え)に

作者未詳   巻11.2599

【選者の言葉】
この歌は人妻に恋している歌。夫がいて夫の腕枕(うでまくら)に寝ているに対してのもの。これはいくら恋しても無駄なことだが、そういうことを歌に詠むということ自体が、自由な心。

これは詠んでなにもしないでおくわけがない。何かにかこつけてこの女の下へ歌をおくる。これは女にとっては殺し文句。おれはおまえ故に何の効果もない、何の甲斐もない恋ををしている。夕方になれば、おまえは夫の手の中で寝ているというのになあ・・・と。

恋の文字は乞うという意味。恋=乞う。何かを頂戴、物を乞う、心を乞う。相手の心を自分にくださいということ。乞うためには呼ばなきゃいけない。自動的には誰もくれないので、殺し文句を相手に送って、どうぞ、おまえの心を私におくれと乞う。

日本では男がいろんな女のところへ通う。女もいろんな男のもとへ通う。そうすると恋も真剣勝負になる。法律に守られているから大丈夫という世界じゃない。日本的であるのは何かというと、こういう恋に対する自由な心。これがアジアの中で独自なところ。中国でも朝鮮半島でも儒教の影響が強いところでは、こういうことはあり得ない。(おわり)

【壇さんの語り】
〈現代文では〉甲斐もない恋をしたものさ。夕べになると他の男の手枕で寝るに違いないあの子のために。

万葉の時代の恋愛と結婚。そこには妻問婚〈つまどいこん〉という習慣があった。男が好きな女のもとに通い、結婚してもしばらくは夫婦が同居せず、妻の家を夫が訪れた。そのために恋愛も結婚も現在に比べ、はるかに自由なものだった。

〈林さんの恋に対する自由な心、の熱弁に圧倒された感じ。この歌はかなり危ない?内容なので、作者未詳というのがポイントだろうか。週刊誌の見出し風に言えば、万葉の時代はおおらかでW不倫も許された!?

それに近隣の国に比べれば日本の女性はかなり自由があったらしい。現代的な目からすれば、それが社会の成り立ちとどうつながっていたのか。自由があっていいわ~と言った先には何があるのか。そこのところをもうちょっと詳しく聞きたい気がした。)

~験(しるし)について~
・角川書店の【古語辞典】から。
・名詞・「しるす」の連用形名詞
①きざし。前兆。
②霊験。御利益。ききめ。効能。
③それだけの価値。甲斐。
















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