昨日は鳩山元首相の引退会見もあったようだ。今日の「田中龍作ジャーナル」は~行く人来る人 引退する鳩山元首相、嘉田新党の陰で~と二人を対比させながら、鳩山さんの会見の模様も伝えていた。
…「『どうせウソでしょ』と国民に言われるからマニフェストという言葉は使わない方がいい」と古巣に苦言を呈した…「もっと国民目線の民主党にしたいと考えていた。自分の主張を曲げてまで政治家をやることはない…」…家訓を勝手に書き換え、これに従わないものは出て行けと迫って親を追い出したバカ息子たち。今度の選挙で討ち死には免れない…
これから日本も変わるのだという期待感の中で行われた鳩山さんの所信表明演説、翌日文章になったものを読んだ時の高揚感は、今でも思い出す。「コンクリートから人へ」「東アジア共同体」、それにアイヌ民族を歴代首相の中で初めて先住民族と認めたことなど。「弱い立場の人々の尊重を友愛政治の原点として宣言します」という素晴らしい言葉。
あれから3年経ち、弱い立場の人々どころか、ふたたび、米国・財界・官僚につながりが深い自民党政治に逆戻りしそうな選挙を前にして、「日本の国境問題ー尖閣・竹島・北方領土」(孫崎亨著:ちくま新書)で興味深い記述があった。東アジア共同体は難しいか~という小タイトルのところから抜粋。
近現代史では第2次大戦後の独仏関係に学ぶところが多い。日中関係も憎しみ合いを超え、「複合的相互依存関係」を樹立したフランス・ドイツ間の歴史に学ぶべきである。私は「東アジア共同体構想」も同じ流れの中にあると思う。
…ところがここへ来て、流れが難しくなった。米中が経済力・軍事力で次第に拮抗しようとする中、「日米間系を重視するか、日中関係を重視するか」の選択が問われ、「日米関係を重視するなら、東アジア共同体構想の推進には慎重であるべし」という見解が勢い付いている。
…アーミーテージは「我々は長い間、外交対話を通じて、”米国は太平洋国家であり、太平洋はわれわれを分断するものではなく、つないでいる”ということを主張してきました。にもかかわらず、鳩山氏は中国の胡錦濤と並び立ってどうやら”米国を含まない共同体”について語っているようでした。」「彼が胡錦濤主席とともに”東アジア共同体”について話したとき、われわれはとてもネガティブでした。」と述べ、ナイは「もし、米国が、”外されている”と感じたならば、報復に打って出ると思います」…
…ただ、米国にもさまざまな見解が存在する。チャールズ・カプチャン(クリントン時代国家安全保障会議欧州部長、ジョージタウン大学教授]とジョン・アイケンベリー(プリンストン大学教授)…この両名が2010年1月21日付ニューヨーク・タイムズ紙で「新しい日本、新しいアジア」と題する新たな視点を展開した。
・オバマ政権は鳩山首相の新しいアプローチを拒絶するよりは歓迎すべきである。・日本は多くの点で、欧州がとって来た道を歩み始めている。冷戦の終焉とともに欧州は地域統合のペースを上げ、ワシントンから独立志向した。・米国は結果としてより独立した欧州の利点を享受した。
・日本が中国との関係を深めることによって、日中の二か国が仏独間の良好な関係の回復と同じことを繰り返せるかもしれない。・米国に屈服する日本より、自己主張をし、独立した日本のほうが東アジアにより貢献することとなる。
鳩山政権時代、カプチャンやアイケンベリーのような見解を持つ米国の知識人の日本関係者たちと手を組む機会はあった。逆に旧来の米国内の日本関係者は危機感を持ち、鳩山政権の崩壊を目指して動くこととなった。(おわり)
鳩山さんは欧州並みに日本の主張を認めようという、カプチャンやアイケンベリーといったアメリカ人の存在を知っていたのだろうか。新しい人脈を作るいいチャンスだったのにねえ。