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日めくり万葉集(204)

2008年11月15日 | 万葉集
日めくり万葉集は巻8・1512、織物を詠った大津皇子(おおつのみこ)の歌。選者は植物染めで古来の色を追究している染織家の吉岡幸男さん。

【歌】
経(たて)もなく
緯(ぬき)も定(さだ)めず
娘子(をとめ)らが
織(お)るもみち葉(ば)に
霜(しも)な降(ふ)りそね

   巻8・1512  作者は大津皇子(おおつのみこ)

【訳】
縦糸もなく、横糸も定めないで、色もとりどりに娘たちが織る美しい紅葉(もみじ)の葉に、霜よ降らないでおくれ。

【選者の言葉】
この歌はまず縦の糸を張って、横の糸を打ち込んでいくという織物の行程をよく観察した上で、紅葉(もみじ)の美しいときに、自然と言うのは縦糸を定めたり、横糸を打ち込まなくても、こんなに美しい情景を作ってくれたんだよ、という自然に対する賛美がある。

中国で始まった絹の糸は細くてしなやかで光沢があって、植物染料が見事に浸透していくことで美しい色が織れる。それによって染められた細い糸は機にかけられ、縦糸をピンと張り、横糸を打ち込みながら《錦》を作っていく。

《錦》というのは金という金へんを書くが、まさに金に輝くような金に等しいような《帛(はく)》つまり《布》であるということをいっている。すべての人が憧れるものであった。

物を作るというのは、すべて人間の精神が込められている。見えないようだけど、自然にそういうものは人の目に映る。織るとか染めるというのはきちっとした方法、順番、あるいは決められたことがいくつもある。

基本をきちっと守りながら、しかもそこに心を込めて物を作らないと、人々の心を打たない。万葉の時代の特徴というのは自然の産物もあり、華やかな人間の知恵が集積されたような素晴らしい衣装もある。両方を享受できた大らかないい時代であった。

【檀さんの語り】
今から1300年前に人々を魅了した錦が法隆寺に伝えられている。【法隆寺、国宝、~四騎獅子狩文錦】。吉岡さんが中心になってこの退色した錦の復元に挑戦した。

《蚕(かいこ)》からこだわって細い絹糸を作り、当時の《空引き機》も復元した。3人がかりで織っても一日9ミリ。気が遠くなるような作業を経て、鮮やかな錦が完成した。

吉岡さんはこの復元を通して、当時の染織技術がすでに最高の水準に達していたことを実感したという。

【感想】
吉岡さんが中心になって再現した古代の織物のなんと鮮やかなこと。素晴らしい赤い色が復元された。中国で生まれた画期的な絹。それがシルクロードを生み、交易の道が出来て、点だった地域を線にしてつないだ。

日本に渡ってきた絹がこんな風に現代に生まれ変わったとは。吉岡さんは手仕事の大切さをいつも語っている。大量生産大量消費という時代ではなくなってきて、もう一度作り手の誠実さが認められる時代になってきたのだと思う。












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